センサレス BLDC モーターは、一般的に広く採用されつつあります。 一方で、多くのシステム設計者がすでに直面してきたように、迅速で信頼性の高い方法でモーターを起動させるのは依然課題になっています。 最も難易度の高い設計上の課題は、速度 0 からの起動です。ほとんどのセンサレス・ソリューションは、位置推定を実行するうえで、逆起電力(BEMF、Back Electromotive Force)検出に依存しているからです。 ただし、BEMF はモーターの速度に比例するので、起動前は 0 にとどまっています。 その結果、初期位置検出(IPD、Initial Position Detection)を実施するために、誘導性センスや相互インダクタンスなど、他の方式を採用する必要があります。または、単純に「ブラインド」(状態検出なし)形式でモーターをスピンアップする(整列と起動)方法もあります。 どちらの方式にも利点と欠点があり、それぞれ特定のアプリケーションで役立ちます。 これらの利点と欠点を考慮してトレードオフに関する決定を下し、実際のアプリケーションに適した最善のソリューションと最善のパラメータを見つける必要があります。 多様なアプリケーションに対応するための理想は、起動方式と起動パラメータを選択する際に、モーター・ドライバがフレキシビリティと構成変更能力を備えていることです。

この 3 部形式のブログ・シリーズでは、最初に各種のモーター起動方式を説明します。 2 番目のブログでは、起動を最適化するための重要なパラメータを取り上げます。 3 番目の投稿では、IPD の原理、特に誘導性センシングを取り扱い、起動計画の一部としてどのように実装するかを説明します。

方式 1: 「ブラインド」起動

最近の洗練された BLDC 制御アルゴリズムの多くは、位置観測、位置推定、フィールド・オリエンテッド・コントロール(FOC)を強調していますが、単純に既知の整流シーケンスを使用し、「ブラインド」形式でモーターを強制的にスピンアップする方法が頼りになることは理解されており、現在も多く使用されています。 

ステッパ・モーター制御について考えてみましょう。 ステッパ・モーターの位置に関して、フィードバック・センサを使用せずに、モーターを移動する命令、または数百個あるステップのいずれかでモーターを停止させる命令を実行できます。 適切なアプリケーションではこの方法で正常に動作します。ただし、負荷が大きすぎてモーターのステップミスが発生しはじめ、最終的にモーターが動作しなくなる、といった場合を除きます。 フィードバック・センサを使用していないので、仮にステップミスや停止の状況が発生しても、コントローラはそのことを認識しません。 したがって、「ブラインド」制御、または開ループ制御と呼びます。

ブラシ付き DC モーター制御について考えてみましょう。 ブラシ付き DC モーターは、位置フィードバックなし、さらにコントローラなしで、DC 電力を供給されて動作するように設計されています。 負荷が大きくなると、モーターの回転速度は低下します。 モーターの回転速度を検出する特殊な技法を使用していない限り、ブラシ付き DC モーターは「ブラインド」制御で動作します。

このコンセプトを流用して、三相 BLDC モーターを実装してみましょう。 U 相経由で V 相に DC 電流を流し、モーターが安定するまで待ちます(実際に実行できるのは、ある程度長い時間にわたって待つことだけです。「ブラインド」制御を実行しているので、モーターが停止したかどうかを把握することはできません)。 次に、W 相経由で V 相に DC 電流を流し、待ちます。 以下のシーケンスで、この操作を繰り返します。WU->VU->VW->UW->UV->WV->WU。 ある程度の振動を伴ってモーターが回転しはじめます。

各ステップで「振動」を最小化するために、前述の 2 つの隣接するステップ・ペアそれぞれの間にもう 1 つステップを追加する方法で、単純にステップ・サイズを小さくし、回転をよりなめらかにすることができます。 たとえば、UV と WV の間に(UW)V ステップを追加します。これは、U 相経由と W 相経由を並列にして、V 相に電流を流すことを意味します。

なめらかさをさらに改善しようとする場合は、既存のステップの間にさらにステップを追加することができます。 たとえば、UV と(UW)V の間で、U 相の電流の振幅を小さくして W 相の電流の振幅を大きくします。この操作を複数のステップに分割します。 ステップ数がある程度大きい値に達した時点で、制御はステップレスの挙動を示し、なめらかなプロファイル(波形)が得られます。 このようなプロファイルは、正弦波プロファイルに変調することができます。 (DRV10983 は電気的サイクルごとに 256 個のステップを割り当て、正弦波の電流プロファイルを提供します。)

正弦波の「ブラインド」起動を使用する場合は、三相の正弦波電流を適切な振幅で供給します。 最初の周波数は 0(または非常に低い値)で始まり、モーターの実際の位置にかかわりなく(「開ループ動作」と呼びます)、適切な加速度で正弦波電流の周波数を高くしてゆきます。 開ループ動作でモーターを駆動すると、モーターが十分な BEMF を生成して、制御ロジックが閉ループでモーターを高精度制御できるようになります(閉ループ制御とは、モーターの位置に基づいて制御を行うことを意味します)。

「ブラインド」起動は、負荷条件が予測可能なアプリケーションでは特に、モーターをスピンアップするうえで非常に実用的な方式です。 ただし、より広い範囲のモーターとアプリケーションに対応するには、起動性能を最適化するために複数のパラメータを正しく選択する必要があります。 この点について、パート II で詳細に検討します。

詳細:

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/motordrivecontrol/archive/2014/11/20/start-your-brushless-dc-journey-with-motor-startup-part-i


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