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AI (人工知能) が自律型ファクトリ (工場) を全面管理している情景を SF 映画でご覧になったことがあるかもしれません。現在、そのようなファクトリは現実に存在しています。

自律型ファクトリは、モーション・コントローラやロボットのような個別の機器間のリアルタイム通信に依存しています。また、この通信は文字どおりリアルタイムで実行する必要があります。たとえば、PLC (プログラマブル・ロジック・コントローラ) から 100 フィート (30.4m) 離れた制御先ロボットへ送信しようとする 1 個のモーション・コマンドが遅延した場合、欠陥のある最終製品につながる可能性があります。

イーサネットをベースとしたリアルタイム通信プロトコルの進化によって、この問題は解決されてきました。これらのプロトコルを採用すると、ファクトリ内にある大規模なデバイス・ネットワークでデバイスが互いにリアルタイム通信を行えると同時に、診断データや制御データをクラウドへ送信するための十分な帯域幅を実現できます。

しかし、多くのリアルタイム・イーサネット・プロトコルでこのような通信を実現できますが、これらのプロトコルは相互運用性がありません。その結果、どれか 1 つのリアルタイム・イーサネット・プロトコルを使用するように設定した機器が、他のプロトコルを使用している機器から情報を受け入れることは容易ではありません。どちらもハードウェア・レベルでイーサネット接続を使用しているにもかかわらず、です。そこで、2 つの疑問が生じます。使用する機器でどのプロトコルをサポートすべきか、そしてマルチプロトコルを有効にすることは可能か、です。

マルチ・プロトコルのデモ動画

 Sitara評価モジュールを3つの一般的な産業用ネットワークに接続する方法については、デモ動画(英語)をご覧ください。

マルチプロトコルをサポートするための課題

これら 3 種類のどれかを選ぶのが一般的に言って安全な選択肢です。ただし、表 1 に示すように、従来型の ASIC セットアップでシングル・プロトコルとマルチプロトコルのどちらをサポートする場合でも、長所と短所があります。

シングル・プロトコル マルチプロトコル
利点 すべての機器がこのプロトコルを使用することを前提とした 1 種類のハードウェア設計 複数のプロトコルを使用することで、より多くの市場セグメントに対応
複数のASIC を使用することに伴う課題 アクセスできるのは、市場のただ 1 つのセグメントのみ
  • プロトコルごとに、個別の高額な ASIC (特定用途向け集積回路) が必須
  • プロトコルごとに個別のボード設計
  • 在庫管理が複雑化

表 1:複数のASIC を採用する場合のシングルプロトコルとマルチプロトコルを対比した検討事項

各種 SitaraTm プロセッサの採用でハードウェア投資を削減

商業的な観点では複数のプロトコルをサポートするのが正解であることは明らかですが、エンジニアリングから調達までの各部門にとっては、マルチプロトコル・ソリューションの実装はコストが高く、問題が伴う可能性があります。図 1 に、企業で複数の ASIC を使用してマルチプロトコルをサポートする場合のフローを示します。イーサネット・ソリューションごとに通信モジュールを製作するために、複数のデバイスが必須であることがわかります。その結果、SKU (stock-keeping unit:在庫管理単位) を規定する際の作業が複雑化します。

 図 1:マルチプロトコルをサポートするための従来のフロー

このフローが原因で、多くのファクトリ向け機器メーカーは、自社製品で複数のプロトコルを有効にすることをためらう可能性があります。ただし、現在は Sitara プロセッサのような マルチプロトコル対応デバイスを使用して、複数のプロトコルをサポートすることも可能です。『AMIC110』のような Sitara プロセッサを採用すると、単一設計で複数のプロトコルを実現し、マルチプロトコル環境の設計に伴う潜在的な課題を克服することができます。各種 Sitara プロセッサは、様々な産業用イーサネット・プロトコルをサポートするファクトリ向け機器を設計するための代替手段を提供します。各種 Sitara デバイスの利点を活用すると、図 2 に示すように、さまざまな SKU を規定するフローを簡素化できます。

 図 2:1 個の Sitara プロセッサを使用するマルチプロトコルのフロー

各プロセッサに産業用通信サブシステムを内蔵しているので、設計者は単一のハードウェア設計を製作するだけで、複数の SKU に対応させることができます。実行する必要があるのは、共通のプロセッサにいずれかの新しいイメージをロードし、そのボードを新しいネットワークに接続することだけです。この戦略的なアプローチを採用すると、システム設計コストの削減に加え、以下の利点を実現することもできます。

  • 需要が突然に変化した場合でも、あるプロトコルから他のプロトコルに数分で切り替え、在庫の再割り当てが可能
  • ハードウェア調達の労力を削減し、単一のベンダに集約
  • 倉庫管理の複雑さを大幅に軽減 
  • 単一のハードウェア設計で、複数の市場のニーズに対応

次のビデオ (英語) は、単一のSitara 『AMIC110』 産業用通信エンジンを使用して、Profinet、EtherNet/IP、EtherCAT いずれかのネットワークに接続する方法を示す一連のデモです。

こちらのソフトウェアをダウンロードすれば、TI の評価基板を使用してこれらのデモを実行することができます。

まとめ

Sitara 『AMIC110』 プロセッサはエントリ・レベルのデバイスですが、高度な統合を実現し、1 個あたりわずか 4 米ドルの低コストで開発と在庫管理のフローを簡素化するのに役立ちます。各種 Sitara プロセッサを採用すると、Profinet IRT (Isochronous Real Time)、Profinet RT、EtherNet/IP、EtherCAT の各プロトコルの適合試験に合格した単一の産業用グレード・ソリューションを使用して、これらの各プロトコルをサポートすることができます。

参考情報(英語):
+ホワイト・ペーパー:
Profinet on TI’s Sitara Processors
EtherNet/IP on TI’s Sitara Processors
EtherCAT on Sitara Processors
+アプリケーション・レポート:
Industrial Communication Protocols Supported on Sitara Processors

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年8月24日)より翻訳転載されました。
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