正しい産業用Ethernet標準規格の選び方シリーズでは、産業用Ethernetをシステム内で活用しようと決めた設計者向けの記事です。このシリーズでは、アプリケーションへの正しい標準規格の選択に役立てるために、数種類の主要な産業用通信プロトコルを扱います。本ブログでは、ファクトリ・オートメーション向けで主流な産業用Ethernet標準規格の一つであるPROFINET(プロセス・フィールド・ネットワーク)について説明します。PROFINETには異なるバージョンがありますが、ここではPROFINET I/Oについて解説します。

PROFINETネットワーク・テクノロジはファクトリ・オートメーション、プロセス・オートメーション、ビルディング・オートメーション、自動車の製造ライン、発電所やロボティクスなどに使われています。

PROFIB US DP Siemensが開発した、RS-485トランシーバ経由の12Mbのシリアル・フィールドバスであり、その後継となるのがPROFINETです。PROFINETは全二重、100MbpsEthernet上で動作します。

ドイツに本拠を置くPROFBUS Nutzerorganisation (PNO) と、英国に本拠を置くPROFINET International (PI)が、PROFINET 標準規格を維持しています。これら二つの組織は、合計で1,400件を超える会員各社と70を超えるワーキング・グループを擁し、これらのグループはそれぞれ、産業用のフィールドバスと Ethernetの様々な面を規定しています。PROFINET規格は2003年にIECInternational Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)の標準規格の一部となり、IEC 61158IEC 61784に含まれるようになりました。

1に示すように、PROFINETはマスタ-スレーブ・ネットワーク・アーキテクチャで構成されています。ネットワーク上ではPROFINET I/Oコントローラがマスタの役割を、I/Oデバイスがスレーブの役割を担います。PROFINETはネットワーク・トポロジの面では非常に柔軟であり、ライン、リング、スターのほか、ハブやスイッチを使って、これらを組み合わせて使うことも可能です。

1: オートメーション・システムでのPROFINET ネットワーク
(図はPROFI BUS Internationalによる)

PROFINET標準規格は、市場の要件を背景に、長年に渡って発展してきました。PROFINETのコンフォーマンス・クラスは、単純にABCと呼ばれます。より上のコンフォーマンス・クラスは、より多くの性能機能を備えています。この手法によってPROFINETは前世代のPROFINETデバイスに対する後方互換性を保っています。

各性能クラスの重要な機能を次に示します。

  • コンフォーマンス・クラスA (CC-A):
  • リアルタイムのEthernet通信
  • 周期I/O
  • パラメータ設定
  • アラーム

CC-APROFINET IOの最初のバージョンであり、サイクルタイムは10msの範囲です。大多数の使用例では、このクラスは標準的なEthernet MAC(メディア・アクセス・コントローラ)上に実装されます。このデバイスは、必ずしも2個のEthernetポートを持つ必要はなく、1個のMACで十分です。

  • コンフォーマンス・クラスB (CC-B)。CC-Aの機能に、次が追加されました。
  • ネットワーク診断
  • トポロジ検出
  • システムの冗長性

CC-BPROFINET IOのサイクルタイムは1msの範囲です。必須ではありませんが、専用の2ポート産業用 Ethernet MACはフレーム・ジッタの減少やサイクルタイムの精度を向上するため、あらゆる産業用アプリケーションに有効です。

  • コンフォーマンス・クラスC (CC-C)。 CC-Bの機能に、次が追加されました。
  • IRT(アイソクロノス・リアルタイム)と呼ばれる特定のPROFINETフレームのための帯域予約
  • コントローラとデバイスの間の時刻同期

CC-CPROFINET IOのサイクルタイムは最小で31.25μsです。しかし、大多数のアプリケーションでは、250μsか、さらに遅いサイクルタイムで十分です。PROFINET IO IRTバージョンには、専用の2ポート産業用 Ethernet MACが必要です。このため、すべてのソリューションは専用の産業用Ethernet MACハードウェアで実現する必要があり、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレー)やASIC(特定用途向けIC)などの外付けデバイスを使うことになります。PROFINET IRTをサポートするワンチップ・ソリューションには、この機能を統合したSitara™ プロセッサ製品があります。

PROFINET IRTの詳細について説明します。図2では、サイクルタイムは赤、緑、黄色のフェーズに色分けされています。各フェーズは特定タイプのPROFINETフレームや、その他のEthernetフレームのために帯域を予約します。

2: PROFINET IRT の通信フェーズ

赤色の部分は、PROFINETRTC3(リアルタイム・クラス3 フレーム)のために厳格に予約され、これは図3に示すように、PROFINET ネットワーク上で最も高い優先順位を持っています。この赤色のフェーズでは、ネットワーク・デバイスは、他の種類のフレームを送出できません。各RTC3パケットは、前もって用意されます。つまりI/O デバイスが、既定の送信時刻にRTC3フレームを送出します。これらの開始時間は、I/Oコントローラがネットワークの初期設定時に各I/Oデバイスに設定します。

3: PROFINET IRT の高速レーン
(図はPROFIB US Internationalによる)

緑色のフェーズは、RTC3以外のRTC1(リアルタイム・クラス1)のPROFINETフレーム、PTA PROFINETアラーム・フレーム)、時刻同期用のフレーム、PROFINET関連のプロトコル・フレームや標準的なTCP/IPフレームなどに使われます。

黄色のフェーズが開始されると、ネットワーク・デバイスは新しいフレームの送信ができなくなります。緑色のフェーズの終わりに開始されたフレームは、黄色フェーズが終わる前に終了できます。黄色のフェーズは、これらのフレームの伝送期間に対して十分な期間を持つことから、これらのフレームは赤色のフェーズに入ることはありません。

4に示すPROFINET RTIRT向けのTISitara™ プロセッサ・ソリューションでは、PRU-ICSS(産業用通信サブシステム)ペリフェラル内の独自のプログラマブル・リアルタイム・ユニットが、すべてのコンフォーマンス・クラスをサポートします。このPRU-ICSSには、赤色のフェーズ内のRTC3フレーム処理や、緑色と黄色のフェーズ内でのその他すべてのEthernetフレーム処理のためのカットスルー・スイッチが統合されています。認定済のPROFINET RTIRTソリューションの詳細に関しては、PROFINET通信開発プラットフォーム(TIDEP 0008)や、1GHz ARMアプリケーション・プロセッサによる認定済Profinet IRT V2.3デバイスのリファレンス・デザイン(TIDE P0029)をご覧ください。

4: Sitaraプロセッサに統合されたPROFINET RT/IRT ソリューション

 

このブログ記事では、PROFINETの機能をクローズアップしました。このシリーズの、他の産業用Ethernet標準規格に関するブログ記事もご覧ください。

 

その他の資料

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/industrial_strength/archive/2015/11/06/how-to-select-the-right-industrial-ethernet-standard-profinet

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