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自動車メーカーは電気自動車(EV)に多額の投資を始めていますが、最近発表されたレポートによると、EV市場は2019年の300万台から2030年までに2,700万台へと拡大すると予想されています。これは、21.1%の年平均成長率に当たります。このようなEV市場の成長に伴い、EV用の公共充電オプションの需要も急激に増大するでしょう。

EV充電ステーションは、電気自動車給電機器(EVSE)に関して3つのレベルに分類することができます。図1に、この3種類のEVSEの相違点を示します。

図1:EV充電器の分類

レベル3のEVSE(DC急速チャージャ)は、レベル1、2とは異なり、ACからDCへの電力変換が充電ステーションで行われます。そのため、高電圧のDC電力をバッテリに供給することが可能になり、充電時間が短縮されます。このDC急速チャージャの高電力レベルをサポートするため、AC/DC整流器には3相AC入力PFC(力率補正)段が使用されます。Vienna整流器は、その3レベルのスイッチング実装、効率の高さ、入力電流の高調波の低さ、部品にかかる電圧ストレスの抑制、および電力密度の高さから、この段のトポロジに望ましい製品です。この記事では、C2000マイコンを使用した、イーサネットによるVienna整流器の制御とモニタリングについて解説します。

TIのVienna整流器をベースとした3相力率補正(PFC)のリファレンス・デザインでは、新しいC2000 F2838xマイコンを使用します。C2000製品ポートフォリオに新たに加わったF2838xファミリは、クリティカルな通信タスクの負担を軽減する機能を持つ接続マネージャを備え、システムの性能向上に役立ちます。図2は、F2838xファミリの構成図です。

図2:『TMS320F28388D』の構成図

この新しい接続マネージャのサブシステムは、Arm® Cortex®-M4 CPUを基盤としています。統合されたアナログ/デジタルの周辺機能の他に、EtherCAT、イーサネット、CAN-FD(Controller Area Network with Flexible Data Rate)、AES(Advanced Encryption Standard)といった先進的な通信プロトコルが利用できるので、リアルタイム制御と通信アーキテクチャを統合した設計が可能になり、マルチコントローラ・システムでの要件が軽減されます。

図3は、C2000 デバイスを使用し、イーサネットによる開始/終了制御機能とパラメータ(電圧、電流、電力)モニタリング機能を組み合わせて、Vienna整流器ベースの3相PFCコンバータを包括的にデジタル制御できるよう実装した図です。


図3:Vienna PFCとイーサネットの構成

図3から分かるように、制御コマンドとパラメータ・モニタリングの2つのデータ・フローがあります。制御コマンドのデータ・フローでは、出力電圧リファレンスやスタートPFC信号のようなコマンド信号をEV充電ステーションのヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)で設定し、イーサネットとプロセッサ間通信(IPC)モジュールを介してVienna整流器を制御できます。図3のIPCモジュールは、F2838xデバイスのC28xコアと接続マネージャ(CM)間の通信をサポートします。パラメータ・モニタリングのデータ・フローは、HMIを使ったモニタリング用に、IPCモジュールとイーサネット・モジュールを介して3相電流、電圧、力率情報を返します。充電中はこのデータが常時更新され、HMIに表示されます。

TIのF2837xとF28004xを使ってVienna整流器の制御やさまざまな制御ループの調整を行うことは可能ですが、このリファレンス・デザインの最新版では、F2838xデバイスの接続マネージャを活用することにより、DC急速チャージャのようなアプリケーションでHMIによりVienna整流器の制御とモニタリングができるようになります。

拡大するEV市場の需要に応え続けるためにも、充電時間の短縮は緊急の課題です。3相AC入力PFC段にVienna整流器トポロジを使用するレベル3のDC急速チャージャであれば、30分以内でEVをフル充電することが可能になるでしょう。最新のC2000 F2838xデバイスを使用したTIのVienna整流器のリファレンス・デザインでは、イーサネットによる開始/終了制御機能とパラメータ(電圧、電流、電力)モニタリングを組み合わせて、Vienna整流器ベースの3相PFCコンバータの包括的なデジタル制御を実装することが可能になります。このリファレンス・デザインをダウンロードして、Vienna整流器の設計を開始しましょう。

参考情報

『TMS320F28388D』の詳細はこちら

+F28388D controlCARD の評価モジュールはこちら

C2000 MCU向けC2000Wareはこちら

+C2000マイコン向けデジタル電源ソフトウェア開発キット(SDK)はこちら

+C2000マイコン向けモーター制御ソフトウェア開発キット(SDK)はこちら

+産業用モーター制御向けの C2000 DesignDRIVE 開発キットはこちら

 

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※上記の記事はこちらの技術記事(2019年10月1日)より翻訳転載されました。
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