以前のブログ投稿で、ワイヤレス・センサ・ノードにおける長いバッテリ寿命の重要性と、具体的なデューティ・サイクル形式の実装について説明しました。 今回は、このようなワイヤレス・センサ・ノードを想定したパワー・トポロジに関するいくつかの考慮事項を説明します。

一部のワイヤレス・センサ・ノードでは、さまざまな集積回路に対して、適切に安定化された動作電圧を供給する必要があります。 通常、高精度のアナログ・センシング・コンポーネントはドリフトのない電圧を必要とします。または、センサ・ノード内にあるコンポーネントが、バッテリからの供給電圧より高い電圧を必要とすることがあります。 さらに、バッテリの寿命末期に電圧が低下すると、バッテリの使用可能期間が短縮される結果になります。 適切に設計された昇圧コンバータを追加すると、ワイヤレス・センサ・ノードでバッテリ寿命を延長するために必要とされていた要素を実現できます。

デューティ・サイクル形式のワイヤレス・センサ・ノードでは、オフ状態の間は、センサ・ノードのほぼ全体が完全にパワー・ダウンになります。 バッテリ寿命を最適化するには、パワー・マネージメント回路もパワー・ダウンに含める必要があります。 オン状態に遷移する時点で、昇圧コンバータは通常の動作を開始し、適切に安定化された電圧レールをアナログ・センシング回路と Sub-1GHz ワイヤレス・マイコン(MCU)に供給します。 オン状態の電流を供給するときに昇圧コンバータの効率が非常に高い場合は、DC/DC コンバータの効率損失に起因するバッテリ寿命の短縮は最小限で済みます。 昇圧コンバータを追加すると、バッテリの使用可能電圧範囲が広がります。 バッテリ寿命と、適切に安定化された電圧レールの間で妥協を図る必要がなくなります。

湿度/温度センサ・ノードの TI Design リファレンス・デザイン(TIDA-00484)は、デューティ・サイクル形式のセンサ・ノード内にあるアナログ・センシング回路とワイヤレス・マイコンに対して、適切に安定化された 3.3V レールを供給するための最適化手法を示します。 図 1 に、10 年以上のコインセル・バッテリ寿命を実現する Sub-1GHz スター・ネットワーク用の湿度/温度センサ・ノードのリファレンス・デザインに対応するシステム・ブロック図を示します。 この例で使用する昇圧コンバータには、バッテリ寿命の延長に不可欠なバイパス・モードが内蔵されています。 図 2 に TPS61291 昇圧コンバータの代表的なアプリケーションを示します。

図 1: TIDA-00484 リファレンス・デザインのブロック図  

図 2: TPS61291 昇圧コンバータの代表的なアプリケーション 

このトポロジでは、ナノパワー・システム・タイマを使用して、超低リーケージ・ロード・スイッチと昇圧コンバータのバイパス・モードの両方を制御します。 オフ状態では、昇圧コンバータをバイパス・モードに設定します。その結果、バッテリをロード・スイッチに直接接続し、昇圧インダクタをバイパスして損失を減らすことができます。 この期間内は、昇圧コンバータの静止時電流は代表値で 15nA です。 オフ状態の間はロード・スイッチは開き、湿度スイッチとワイヤレス・マイコンは、昇圧出力つまり実質的にバッテリから切り離されます。

オン状態の間は、ナノパワー・システム・タイマが昇圧コンバータを通常の動作に設定し、ロード・スイッチを閉じます。その結果、アナログ・センシング回路とワイヤレス・マイコンが、安定化 3.3V 電圧レールに接続されます。 安定化電圧レールを追加した結果、センサ・ノードはバッテリを最後まで使いきれるようになるほか、バッテリ電圧より高い最低電圧を必要とするセンサも使用可能になります。

このリファレンス・デザインにより、システム全体のバッテリ寿命を最適化できます。昇圧コンバータのバイパス・モード、ナノパワー・システム・タイマ、超低リーケージ・ロード・スイッチの組み合わせを採用すると、ほとんどの標準的なマイコンのシャットダウン・モードに比べて、オフ状態の平均電流が数十分の 1 に減るからです。 さらに、このリファレンス・デザインで使用しているワイヤレス・マイコンと湿度センサは非常に消費電力が小さいので、オン状態の平均電流も 5mA 未満に減ります。 センサ測定値とワイヤレス・データ送信が完了するまでの所要時間はわずか 30ms ほどであり、(1 分間に 1 回測定を行う場合の)全体的なシステム・バッテリ推定寿命は 10 年以上です。

この昇圧コンバータを、デューティ・サイクル形式のアーキテクチャや、ナノパワー・システム・タイマと組み合わせて使用することで、さまざまなセンサ・タイプでワイヤレス・センサ・ノードが非常に実践的に活用できるようになります。 システム・バッテリ寿命が、バッテリ自体の標準的な保管期限を上回っているので、この TI Design リファレンス・デザインは、昇圧コンバータを差別化要因として使用し、ワイヤレス・センサ・ノードを新しいアプリケーションでどのように実装できるかを示すものとなります。

その他のリソース:                                                                                   

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