皆様はこのビデオをご覧になったことがありますか。サメのコスチュームを着たネコが、ロボット掃除機に乗って移動していています。 ネコ好きの人にとって、このビデオの内容を紹介されただけで好奇心をそそられるでしょう。 犬好きの人にも、 サイドバーを参照すると、犬が同じ行動をしているビデオがいろいろあります。

筆者は検証エンジニアとして、ペットがかわいいというだけではなく、最終製品の品質を検証することになるのでこれらビデオを素晴らしいと思います。 特にあるビデオでは、成犬のシベリアン・ハスキーがロボット掃除機の上に乗っているのが確認できます。 

「どれぐらいの重量だろうか」と考える人もいるでしょう。 ハスキーは最大で 60 ポンド(27.24kg)以上に成長することがありますが、それに対し、ロボット掃除機の重量はわずか 8.4 ポンド(3.81kg)です。 犬の体重が加わった結果、ドライブ・トレーンにかかる負荷は増大します。 移動を続けるために、追加の負荷に対応する補償として、モーターはより多くのトルクを必要とします。 この事実は、バッテリからより大きな電流を引き出すこと、およびエレクトロニクスに対して発熱という形で余分のストレスが加わることを意味します。 設計が不適切なシステムでは、このような条件が原因で、ヒューズ切断からシステムのオーバーヒートや致命的なデバイス障害まで、望ましくないさまざまな結果が生じるおそれがあります。

ところが、デバイスの障害が発生するどころか、当初設計の重量を 800% 以上上回る負荷の下で、ロボット式掃除機は引き続き移動し、吸引を続けています。 これは非常に興味深い事態です。 ロボット式掃除機は堅牢に設計されており、市場に出荷される前に包括的に検証されたのだろう、と言うことができます。

仮にこのような堅牢性が作りこまれていなかった場合はどうなるか考えてみましょう。 犬が掃除機の上に乗ったことが原因で、仮に掃除機から出火した場合は、会社がどのような事態に直面するか想像できるでしょうか。 人気獲得を狙ったバイラル動画ではなく、膨大なリコールが発生する事になったことでしょう。

このような背景に基づいて、検証というアイデアが生み出されました。 検証とは、現実の世界でデバイスやシステムの機能をテストすることを指し、多くの場合は極端な動作条件が課されます。 包括的なテストがなされていない製品はリコールの対象になる可能性があり、その場合は企業のイメージが低下するとともに利益が減少し、時には負傷や死亡を伴う事故に至るおそれがあります。 テキサス・インスツルメンツの Motor Drives(モーター・ドライブ)グループには、リコールに関する理念があります。誰もリコール発生を望んでいません。

このような理由で、筆者がこの記事を作成しています。検証エンジニアとして、筆者の仕事は自社製パーツを厳密に検査することです。 筆者は、デバイスを最初に使用する顧客として行動し、初めて納入を受けてそのデバイスを評価するときと同じ心構えで取り扱いを進めています。 予断を持たずにデータシートを観察し、現実の世界の条件でパーツをテストし、データシートの記載どおり正確に動作するかどうかを確認します。デバイスに何らかの弱点がある場合は、発見した事項を社内の設計チームに報告します。設計チームはそのデータを使用して、デバイスの堅牢性を強化します。

Motor Drives(モーター・ドライブ)ポートフォリオに属しているリリース済みデバイスすべてを、動作電圧範囲全体で、また最大電流と最小電流で、さらに広い温度範囲でテストします。 筆者は保護回路(過電流保護やサーマル・シャットダウンなど)をチェックし、過酷な同条件の下でもこれらのシステムがデバイスを正しく保護することを確認します。 また、この条件範囲全体でデバイスの機能面での動作もテストし、顧客が何か予期しない作業を実施した場合でも、デバイスが引き続き規定の性能仕様を満たすことを確認します。

デバイスに致命的な損傷を及ぼすテストを実行する計画を立てることもあります。そのような作業を実行することで、デバイスに関する限界を学習できるからです。 日本を含む各国で放映される番組の「MythBusters」(伝説バスターズ)のように、科学的な目的で破壊を行うことになります。 さらに、使いやすい機器も複数用意されています。 筆者が使用している次の検証ベンチをご覧ください。 筆者はこれらを The Gauntlet(この文脈では「デバイスを過酷な方法で扱う装置」の意味)と呼んでいます。

図 1: モーター・ドライブの検証 – The Gauntlet 直前の検証作業で脱落したデバイスには、赤い丸を付けます。

TI 全体で筆者のようなエンジニアが各種デバイスに対して同様のテストを実施しています。その結果、皆様は TI のパーツが仕様どおりに動作することを 確信して活用することができます。

その他のリソース:

  • 設計に関するお問い合わせについては、TI E2E™ コミュニティの TI Motor Drivers forums(英語)をご利用ください。
  • リファレンス・デザインについては、TI Applications ページの Motor Drives セクションをご覧ください(ページの右上にある「English」をクリックすると、日本語への切り替えが可能)。
  • 新しい H ブリッジ・シングル・ゲート・ドライバ DRV8701 の詳細はこちら。

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/motordrivecontrol/archive/2015/06/19/motor-drive-validation-keeping-our-parts-in-your-hands


*ご質問は E2E 日本語コミュニティにお願い致します。

 

 

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