Other Parts Discussed in Post: DRV8320

今回の記事では、統合型とディスクリート型の違いを箇条書きにして説明します。比較する設計は、本技術記事シリーズのPart 1およびPart 2で取り上げた設計と同じものです。

絶えず基板面積の小型化が求められるという制約の下で、プリント基板(PCB)の設計者は、新たな可能性を求めて限界を超えようと努力を続けています。このような状況の中で、統合型マルチ・ハーフブリッジ・ドライバに注目が集まっています。PCBの小型化が進むのに対し、電力レベルや性能要件は厳しくなる一方です。その結果、設計者の中には、従来型のディスクリート・ハーフブリッジの設計を続けるべきか、集積度が高い『DRV8320』のような統合型の三相ハーフブリッジの設計に転向すべきかと迷っている方もおられます。Part3では、データを参照しながらこの2つの選択肢の長所と短所を簡単に比較したいと思います。この内容は、ブラシレスDCモーター駆動用IC(集積回路)を選択する際の参考にもなると考えています。

ディスクリート・ハーフブリッジ・ゲート・ドライバの設計

  • 長所:

    • レイアウトがシンプル

      ハーフブリッジの数が3つまたは6つでも、各ハーフブリッジはICと外付け部品で構成され、レイアウトが同じなので、1つのハーフブリッジのレイアウトを複数回コピーすることで全体を構成できます。また、各ハーフブリッジに専用のモーター・ドライバICを使用することで、ゲート・ドライバとMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ。単にFETとも呼ばれます)と間のトレースを短くし、基板の寄生要素を減らすことができます。
  • 短所:
    • 外付けコンポーネントの数が多い

      電源およびシステム保護やFET制御用の部品を外部に追加する必要があるため、レイアウトが複雑になり、基板面積が増えます。
    • 保護機能の問題

      シンプルなディスクリート・ハーフブリッジ・ゲート・ドライバでは、保護機能は限定的で、まったく無い場合もあります。これらの機能を外部に追加することは可能ですが、システムがさらに複雑化し、レイアウトや回路図を作成する労力が増大します。

統合型ゲート・ドライバの設計

  • 長所:
    • 高レベルの集積度

      直列ゲート抵抗、ゲート・シンク・パス・ダイオード、ゲート-ソース間電圧(VGS)クランプ・ダイオード、ゲート・パッシブ・プルダウン抵抗、電源など、FETゲート・ドライブや電力供給をサポートする部品がゲート・ドライバに統合されているため、部品点数が少なく組立コストも下がります。
    • 保護機能を搭載

      ドレイン-ソース間電圧(VDS)モニタ、VGSモニタ、および電流シャント・アンプによって外部のFET、PCB、モーターが保護されるため、外部に部品を追加する必要はありません。
    • システムがシンプル

      複合型の障害通知や単一ポイントのモーター駆動/シャットダウンにより、モーターのすべての機能が1個の集積回路で制御できます。
  • 短所:
    • レイアウトが複雑

      ドライバが1つであり、中央の1点から6つのFETに配線する必要があるため、トレースが長くなり、PCBの寄生成分の影響が増える可能性があります。

ゲート・ドライバでは、統合型とディスクリート型のどちらを採用するかでPCBレイアウトによる寄生成分に差が生じるため、多くの場合、これが設計上の大きな違いであると言われていました。一般に、統合型レイアウトではゲートもソースもトレースを長くする必要があるため、ディスクリート型よりも寄生成分による悪影響が大きいと言われています。

筆者は、モデリング用とシミュレーション用のソフトウェアを使用して、本シリーズのPart 2で比較したレイアウトについて寄生インダクタンスおよび寄生抵抗を分析し、両設計方式による違いを実際に確認しました。図1は、その結果をまとめたものです。

DRV8320統合型ドライバの設計 ディスクリート型の設計
GHxトレース長:最小= 660mil、最大= 851mil GHxトレース長:794mil
GHxトレース幅:10mil GHxトレース幅:10mil
インダクタンス:最小= 15.11nH、最大= 21.16nH インダクタンス:17.0nH
インピーダンス:最小= 23.3mΩ、最大= 30.0mΩ インピーダンス:26.4mΩ +ディスクリート抵抗

1:統合型とディスクリート型ゲート・ドライバの比較
(注:統合型では、近くに配置されたハーフブリッジが1つ(B相)と遠くに配置されたハーフリッジが2つ(A相とB相)あるのに対し、ディスクリート型では、同じレイアウトのコピーが3つ配置されています。統合型設計のパラメータの中に最小/最大の2値があるのに対し、ディスクリート型で値が1つしかないのは、そのためです)

ここで注目すべきは、統合型とディスクリート型の両ハーフブリッジ・ゲート・ドライバの間で、寄生インダクタンスおよび寄生インピーダンスの差がほとんど見られないことです。統合型ゲート・ドライバで寄生要素の影響が顕著に増えてはいません。一方で、重要度の高い保護機能の搭載、部品点数の少なさ、小サイズのソリューションといった長所は従来と変わりません。

以上をまとめると、『DRV8320』をはじめとする統合型ゲート・ドライバは、製品サイズが大きいというディスクリート型の課題を解決する優れた選択肢であり、ブラシレスDC製品に画期的な「転機」をもたらすことは確実であると考えられます。

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年12月16日)より翻訳転載されました。 
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