筆者の最初の投稿では、RS-485 について紹介し、多くの産業用フィールドバス・アプリケーションで優先されるインターフェイスになった理由を説明しました。 今回と次回の投稿では、RS-485 の基礎について説明し、RS-485 ネットワークを設計するときに発生する、アプリケーションに関する一般的な疑問に取り組みます。 RS-485 に関する一般的な質問の多くは、ドライバとレシーバの構造および動作について基本的な理解をすると解決できます。 今回の投稿では、RS-485 ドライバと、RS-485 規格に掲載されている該当の仕様について説明します。
図 1: 差動出力ドライバの構造
図 1 に、半二重トランシーバである TI の SN65HVD72 のうちドライバ部分の等価出力回路を示します。 H ブリッジ・ドライバの出力構造は、A 出力と B 出力のそれぞれに対応するハイサイドとローサイドのトランジスタで形成されており、これらは各端子の ESD(静電気放電)セルに対して並列に配置されています。 各トランジスタに対して直列に接続されたダイオードは、A または B の電圧が VCC より高い場合のバス端子から電源への逆流、あるいは A または B の電圧がグランドの電位より低い場合のグランドからバス端子への逆流を防止します。
ドライバの基本動作により、High と Low の出力ロジック状態は、次の図 2 に示すように簡略化されます。
図 2: RS-485 の出力ドライバの動作
果として生じる波形は、正と負両方の差動電圧を、同相のオフセット電圧に重ね合わせる方法でモデル化できます。このオフセット電圧は通常、図 3 に示すように VCC/2 に近い値とします。
図 3: RS-485 ドライバの出力波形
RS-485 規格では、この規格に準拠するドライバが、54Ω 負荷を使用する場合に 1.5V を上回る差動出力電圧を生成する必要があると規定しています。 該当する RS-485 テスト回路を、次の図 4 に示します。
図 4: RS-485 の出力ドライバのテスト回路
したがって、ハイサイドとローサイドの各トランジスタのオン抵抗は、54Ω の両端で 1.5V を生じさせる十分な大きさの電流を供給できるように、十分小さくする必要があります。 一般的な目安は、各トランジスタのオン抵抗の代表値が 20Ω ~ 30Ω の間にあると想定することです。
さらに、RS-485 規格は、この規格に準拠するドライバが、60Ω の差動負荷を使用する場合に 1.5V を上回る差動出力電圧を供給すること、または 375Ω の同相負荷を供給する場合に A 出力と B 出力のそれぞれが -7V ~ +12V を供給することも要求しています。次の例を参照してください。
図 5: 同相に対応する RS-485 の出力ドライバのテスト回路
さらに、H ブリッジ出力の各レッグのオン抵抗は、適切にマッチング(つまり、Q1 ≈ Q2、かつ Q3 ≈ Q4)している必要があります。 RS-485 規格は、出力が正の場合の VOD の大きさと、出力が負の場合の VOD の大きさの差が 200mV 未満であることが必要だと規定しています。 H ブリッジ出力の各レッグが完全にマッチングしている場合は、データシートで ∆|VOD| として表現されているこの値が 0 になります。 SN65HVD72 の場合は、∆|VOD| の最大値は 50mV です。 差動ロジック状態に関する VOD の不均衡が大きい場合は、同相ノイズが増加し、放射される EMI(電磁干渉)のレベルが高くなる結果をもたらします。
あらゆる RS-485 ドライバにとって重要な最後の特性は、出力の立ち上がり時間と立ち下がり時間であり、これらの時間は、トランジスタ Q1、Q2、Q3、Q4 のスイッチングを制御する個別の回路によって決定されます(図 2 を参照)。 出力の立ち上がり時間と立ち下がり時間によって、トランシーバが動作できる最大データ・レートが制限されます。 通常、ドライバの立ち上がり時間と立ち下がり時間は、所定のデータ・レートに対応する合計ビット時間の 1/3 以下であることが必要です。 さらに、所定のデータ・レートに対して、立ち上がり時間と立ち下がり時間が早すぎるトランシーバより、立ち上がり時間と立ち下がり時間が遅めのトランシーバの方が優先されます。後者は、隣接する回路に対して放射する EMI(電磁干渉)がより少ないからです。
差動出力電圧が大きく、同相範囲が広いことから、RS-485 は他の信号伝達規格より差別化されており、産業用オートメーション、e メーター、モーター制御など、ノイズの大きい電気的環境やアプリケーションでの使用に適しています。
このシリーズの次回投稿では、代表的な RS-485 レシーバに関する設計と基本動作について説明する予定です。
その他のリソース:
SN65HVD72 データシートのダウンロード
アプリケーション・ノート: 『RS-485 failsafe biasing: Old versus new transceivers』(英語)
RS-485 の基礎シリーズの他の投稿を読む
上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。
http://e2e.ti.com/blogs_/b/industrial_strength/archive/2015/06/16/rs-485-basics-the-rs-485-driver
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