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世界各地でエネルギーの革新が進んでいます。国際エネルギー機関 (IEA)によると、2026年までに世界全体で見込まれる電力供給量の増加分のうち、再生可能エネルギー源は約95%を占めます。そして、この95%の半分以上が、太陽光エネルギーから得られる見込みです。

現在、クリーン エネルギーに関する意欲的な目標と政府の方針が原動力となり、太陽光発電、電気自動車 (EV) インフラ、エネルギー ストレージなどの分野で再生可能エネルギーの採用が進んでいます。このような採用の増加に伴い、産業用、商用、住宅用の各アプリケーションで、電力変換システムの導入機会も増えています。効率、密度、コスト、信頼性という 4つの性能指標の間で優れたバランスを達成するうえで、シリコンカーバイド(SiC) のようなワイド バンドギャップ デバイスの採用が役に立ちます。

再生可能エネルギー分野で、従来型のIGBTをベースとする電源アプリケーションと比較したSiCの利点

SiCパワー スイッチと絶縁型ゲート バイポーラ トランジスタ(IGBT)は、再生可能エネルギー システムのような大電力アプリケーションでは一般的なパワー スイッチです。図1に、SiCパワー スイッチとIGBTが動作する一般的なスイッチング周波数と電力レベルを示します。どちらも1kW以上の電力レベルに適用できます。

1:各種パワー スイッチの一般的な動作範囲

大電力の再生可能エネルギー分野では、IGBTのような従来型のシリコン パワー スイッチに比べて、SiCパワー スイッチには性能上の利点がいくつかあります。

利点の1つはIGBTに比べて、抵抗と静電容量が小さいことです。その結果、電力損失が小さくなり、効率の向上に役立ちます。SiCパワー スイッチは、IGBTに比べてかなり高いスイッチング速度に対応できます。この特性は、スイッチング損失を低減し、電力変換効率を高めるのに役立ちます。その結果、エネルギーの獲得量が大きくなります。ソーラー インバータ、エネルギー ストレージ システム、DC高速充電装置内のパワー モジュールなどの再生可能システムで、パワー コンバータの出力を最大化するには、この利点が不可欠です。

多くの再生可能エネルギー アプリケーションは、発熱量の多い小さな領域内で動作します。そのため、設計者はプリント基板のサイズを小型化しながら、放熱を最大化する方法を探し求めることになります。SiCは、IGBTより高い温度で動作できます。そのため、SiCパワー スイッチの方が熱的安定性と機械的安定性が高く、パワー エレクトロニクスでよりコンパクトな設計を実現できるようになります。

ゲート ドライバを使用してSiCを駆動

SiCパワー スイッチを駆動する場合は、SiC固有の特性により、いくつかの特別な検討事項が必要になります。ゲート ドライバの選定は、アプリケーション内でのSiCの動作に大きな影響を及ぼすことがあります。

SiCパワー スイッチを使用するには、高電圧と大電流の各定格に対応できるゲート ドライバが必要です。SiCパワー スイッチのオンとオフを切り替えるため、また電圧スパイクを防止するために、ゲート ドライバには十分なゲート電荷を供給できる能力が必要です。

IGBTに比べると、SiCパワー スイッチは短絡の影響を受けやすく、短絡が発生した場合はパワー エレクトロニクス システムに大きな損傷が生じる可能性があります。 一般的に、IGBTの短絡耐久時間は約10μsであるのに対し、SiCの短絡耐久時間は約2μsです。そのため、SiCパワー スイッチを使用して設計を行う際には、脱飽和や過電流などからの保護を目的とした保護素子の追加を考慮することが重要です。UCC21710ゲート ドライバのような一部のゲート ドライバは、短絡事象を検出し、それに対処するための短絡保護機能を内蔵しています。SiC FETの短絡防止の詳細については、アプリケーション ノート『Understanding the Short Circuit Protection for SiC MOSFETs』(英語) をご覧ください。

SiCパワー スイッチはより高い温度環境で動作できますが、SiCパワー スイッチの放熱性能を監視し、過熱を防止することは依然として重要です。UCC21710は内蔵の短絡保護機能に加えて、監視用のセンサを内蔵しているため、ディスクリート温度センサを実装する必要がなくなります。

まとめ

再生可能エネルギー システムで電力出力を最大限活用するには、効率を最大化すると同時に、コスト、サイズ、信頼性のバランスを維持することが重要です。SiCパワー スイッチは、ソーラー システムやEV充電などの大電力アプリケーションで使用する場合に、いくつかの利点をもたらします。SiCがこれらのアプリケーションにもたらす望ましい影響を最大化できるように、TIはSiC パワー スイッチ向けに最適化されたゲート ドライバ製品を複数提供しています。これらの製品は、複数の電力レベルにわたってスケーリングできるほか、内蔵保護機能にもいくつかのレベルを用意しています。その結果、SiC電力段の設計を簡素化しやすくなります。

参考情報

絶縁型ゲート ドライバを採用したTIの各種リファレンス デザインをご確認ください。

 

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