ディープ・ラーニングにそれほど詳しくないとしても、運転体験の自動化に役立ち、製造効率を高め、消費者のショッピング体験を変えることができる、このキーワード自体は耳にしたこがあるでしょう。ディープ・ラーニングは、人工知能(AI)とマシン・ラーニングを経て生み出された技術進歩です。マシン・ラーニングとディープ・ラーニングはともにAIのサブセットであり、従来のマシン・ラーニングのアルゴリズムは、ドメインレベルの専門知識を持つエンジニアにより特定のプログラミングをする必要がありますが、ディープ・ラーニングのアルゴリズムは、データを読み込ませ、学習するニューラル・ネットワークを活用します。解決すべき問題に専門知識を必要とせず、様々なデータを使って学習させることで、同じネットワークでも実に様々な問題を解決することが可能です。ディープ・ラーニングは、多くの業界に影響をもたらす基礎技術だとみなされています。
またディープ・ラーニングは、対象物を分類できる技術だと説明できるでしょう。実世界の多くの問題は、突き詰めれば分類の問題であると言うことができます。
各分野で分類する例
- 自律走行および半自律走行車両:道路、他の車両、人および交通標識(図1参照)
- スマート・ファクトリ:不良品
- 自動化された小売店:消費者が商品を購入するのに店舗から持ち出そうとしているのか、あるいはただ商品を見ているだけなのか
図2にあるように、ディープ・ラーニングには大まかに2つの部分があります。それが、学習と推論です。学習中は、分類の問題を解決するために作成されたニューラル・ネットワークのモデルに大量のラベル付きデータが供給され、そこから対象物の分類方法を学習します。図1にある自律走行車両のシナリオ例では、歩行者、道路標識、自動車、および道路の画像が、それぞれ適切にラベリングされた状態でモデルに供給されます。学習中は、リアルタイムの性能やパワーは問題ではないため、通常これは、デスクトップあるいはクラウド・プラットフォーム上で行われます。
推論中は、エンドアプリケーションに導入されている学習済みのネットワークによって、たとえば、組立ライン上にあるパーツに不備があるかないかの判断など、分類の決定が行われます。
図2:ディープ・ラーニング・ネットワークの一般的な開発の流れ
信頼性、低遅延、プライバシー、パワーおよびコストなどの複合的理由により、センサーがデータを収集する場所の近く、つまりネットワークの「エッジ」で推論を実行するのが有益です。ある程度の人工知能を扱うことのできる高度なセンサーでは、センサー自体の内部で簡単な推論を実行することができます。より複雑な推論の場合は、別途エッジ・プロセッサが必要となります。
TI Sitara™プロセッサは、エッジ処理に最適なデバイスです。Arm® Cortex®-Aコアとフレキシブルな周辺機器を統合する拡張可能なポートフォリオにより、Sitaraプロセッサは、処理、統合および電力効率を幅広く組み合わせた産業グレードのソリューションを提供します。TIディープ・ラーニング(TIDL)ソフトウェアを利用し、Sitara 『AM57x』プロセッサはハードウェア・アクセラレーションを活用してエッジでのマシン・ラーニングとディープ・ラーニング推論の性能を向上させます。
TIDLソフトウェアは、プロセッサのソフトウェア開発キット(SDK)、および『AM57x』デバイスにおけるディープ・ラーニング推論のハードウェア・アクセラレーションによる負荷軽減を実現するツールに含まれる一連のオープンソースのLinuxソフトウェア・パッケージです。Open Computing Language(OpenCL)に組み込まれた一連のアプリケーション・プログラミング・インターフェイスを利用し、EVE(Embedded Vision Engine、組込みビジョン・エンジン)サブシステム、『C66x』デジタル信号プロセッサ・コア、あるいはその両方の組み合わせにおいて、推論を加速できます。
すでに既存のニューラル・ネットワークの枠組みがある場合、TIDLソフトウェアは、図3に示すように、インポート・ツールを通じ、『AM57x』上で一般のCaffeおよびTensorFlowの枠組みと加速されたハードウェアとのギャップを埋めます。ハードウェア上での効率性を最大化する目的で、あるいは既存のニューラル・ネットワークの枠組みがない場合のために、NVIDIA/Caffeから分岐させてTIが開発し、組込み分野向けに設計した枠組みであるCaffe Jacintoがディープ・ラーニングの学習部分を担うことができます。
図3:テキサス・インスツルメンツのディープ・ラーニング(TIDL)ソフトウェア開発の流れ
TIは、組込みアプリケーション用にネットワーク・モデルを学習するために使用できる枠組みを開発していますが、学習そのものはデスクトップあるいはクラウド・プラットフォーム上で行われているという点にご留意ください。TIの組込みプロセッサ上で実行されるのは推論です。
TIのプロセッサSDKの一部として、フリー・ソフトウェア、トレーニング・ビデオおよびディープ・ラーニング向けリファレンス・デザインにより、ディープ・ラーニングの初心者にとっても経験豊富なエキスパートにとっても、迅速かつ簡単に開発に着手できる基本要素を提供します。
参考情報
- ブログ:自動運転におけるAI、実用的なディープ・ラーニング
- ホワイトペーパー:組込みシステムへの ディープ・ラーニングの導入
- リファレンス・デザイン:組込みアプリケーション向けディープ・ラーニング推論のリファレンス・デザイン
英語コンテンツ
- トレーニング・ビデオ
”TIDL Overview for Sitara Processors”
”Introduction to Deep Learning”
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※上記の記事はこちらのBlog記事(2018年11月27日)より翻訳転載されました。
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