Industry 4.0(産業 4.0)は、サイバーフィジカル・システム(CPS)がファクトリを変革するという構想を表す用語です。 このコンセプトを紹介した最近のドイツ語記事で、筆者は、産業界の変革がこれまでに新しいデータ管理と新エネルギー源の優位をどのように組み合わせてきたか、またエネルギー・ハーベストが Industry 4.0 をどのように強化しているかを説明しました。 エネルギー・ハーベストを成功させるためのベスト・プラクティス共有が限定されている場合は、これらの設計の成功率も限定されるので、このブログを通じて筆者はこのようなベスト・プラクティスのいくつかを共有および公開したいと思います。
筆者はたびたび、エネルギー・ハーベスト・システムを最善の方法で設計するためのヒントととコツについての問い合わせを受けます。 この投稿で、エネルギー・ハーベスト・システムに取り組むときは、「ナマケモノ」ではなく「クマ」になることの重要性について説明します。
エネルギー・ハーベストに関する秘訣は、クマのように行動することです。つまり、
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エネルギー・ハーベストに関してよくある失敗は、ナマケモノのように行動することです。つまり、
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ところで、組込み型のエレクトロニクス・システムでは、ナマケモノとクマは何に相当するでしょうか。 その答えには、次回のブログ投稿を要する可能性が高そうですが、 太陽電池が 1 平方 cm という同じアクティブ面積で、0(光なし)、2 ~ 5μW(微弱な光)、10μW(最大の日光)いずれかのエネルギーを生成できることをほとんどの設計者はすでに理解しています。 クマのようなシステムは、これらすべてのエネルギーをハーベストできるのに対し、ナマケモノのようなシステムはワーストケースのエネルギー、たとえば 1μW に合わせて最適化されています。 ナマケモノのアプローチは性質上、周囲のエネルギーをハーベストする機会を減らし、新しい環境条件への適応に失敗する可能性が高くなります。その結果、そのようなシステムが最終顧客にもたらす利点は限定されます。
では、クマのように行動するシステムを設計するには、どうすればよいでしょうか。 出発点の 1 つとして、熱電発電機(TEG)向けの汎用エネルギー・ハーベスト・アダプタ・モジュールの TI Designs リファレンス・デザインを使用することです。 低消費電力モードでは、このデザインは 60nA で動作し、40μW から数百 mW のエネルギーを 80% を上回る効率でハーベストすることができます。 また、システムがハイバネーション(冬眠)モードにあるときでも、環境の変化に応じていつでもウェークアップすることができます。
この性能を実現できるのは、超低消費電力およびエネルギー・ハーベストという TI デバイスの独自の組み合わせを活用しているからです。TPL5100 プログラマブル・タイマと bq25570 パワー・マネージメント集積回路(IC)、さらに業界最小のマイコン(MCU)である MSP430FR5969 マイコンと、最小消費電力のコンパレータである TLV3691が該当します。
TPL5100 は、このリファレンス・デザインの「ハート・ビート」を生成します。 このタイマの最善の機能は、30nA で動作し、ハウスキーピングの目的で MSP430™ マイコンを定期的にウェークアップすることです。 この IC について定義しようとするときは、MSP430FR5969 マイコンのような超低消費電力マイコンに対する割り込みを生成する機能か、負荷を切り離す能力を強調したいと思います。 この TI Design リファレンス・デザインに関して、最初の方法で使用法を説明したいと思います。
周囲のエネルギーをハーベストするために、bq25570 を選択しました。これは、最小 100μW の小規模エネルギーに対応し、入力エネルギー源の 90% を変換することができる DC/DC 昇圧コンバータであると同時に、最高電力点追従(MPPT)機能を実行することができます。MPPT もパワー・ダウンさせることができ、その場合の消費電力はわずか 1nW です。
システムの頭脳の役割を果たすのは MSP430FR5969 マイコンです。 このマイコンは、最小電力モード(LPM4.5)の場合、わずか 20nA の電流で動作すると同時に、汎用入出力(GPIO)をアクティブ状態に維持して、非同期割り込みに対応するか、システムの低消費電力機能に対して電力を直接供給することができます。
クマ、つまりこのシステムをハイバネーション(冬眠)からウェアークアップさせる「感覚」は、TLV3691 コンパレータからもたらされます。この製品はわずか 75nA で動作し、入力電圧を監視するように設計されています。 コンパレータの消費電力が少ないので、MSP430FR5969 マイコンの GPIO からコンパレータに電力を供給することができ、この結果、必要に応じてコンパレータのオンとオフを切り替えることができます。
図 2: ブースタパック・フォーム・ファクタに収容された、プロトタイピングをすぐに開始するためのリファレンス・デザインのブロック図
超低消費電力またはエネルギー・ハーベストのシステムを設計することに関心を抱いている場合は、このリファレンス・デザインの回路図、レイアウト、テスト・データに注目してください。 これまで成功事例、またはこれまでの設計で直面した課題について、コメント欄でご意見をお聞かせください。
また、クマのように行動し、エネルギー・ハーベストを活用してください。その結果、適応能力を強化し、エコシステム全体の魅力を高めることができます。
その他のリソース
- 熱電発電機(TEG)向けの汎用エネルギー・ハーベスト・アダプタ・モジュールの TI Designs リファレンス・デザインの回路図、テスト・データ、設計ファイル、部品表(BOM)をダウンロードしてください。
- エネルギー・ハーベストにより Industry 4.0 を強化(ドイツ語)する理由を説明した、このドイツ語の記事もご覧ください。
- エネルギー・ハーベスト・システムをメイン・システムから分離する必要がある場合は、この TI Designs リファレンス・デザイン(TIDA-00349)から回路図をダウンロードしてください。