MSP マイコン(MCU)に内蔵されている A/D コンバータ(ADC)はプログラマブルな分解能や複数の電力モードなど高いフレキシビリティを提供しています。その理由を考えたことはありますか。 こうした高いフレキシビリティは、スタンドアロン方の ADC では通常、実現が不可能です。 MSP マイコンはさまざまなアプリケーション設計で、性能、使いやすさ、消費電力の最適化を実現し、こうした高いフレキシビリティの活用を可能にします。 最近、筆者は Analog Wire で、MSP432™ マイコンに内蔵されている 14 ビット ADC のオーバーサンプリングによる ADC の性能向上法について解説しました。

今回は、フレキシビリティが高く、アプリケーションに応じてカスタム化が可能な ADC14と呼ばれる MSP432P401R マイコン の14 ビット ADC の主要な性能特性に着目します。

  • 性能特性:
    • 複数のリファレンス電圧オプション
    • シングルエンド入力か差動入力かをチャネルごとに選択可能
    • プログラマブルなビット数

複数のリファレンス電圧オプション

ADC14 は複数のリファレンス電圧オプションから選択可能で、多様なアプリケーションに合わせて最適なリファレンス電圧の採用を可能にするフレキシビリティを提供します。 リファレンス電圧は最大入力信号より高い値であることが必要ですが、最大入力信号の電圧値に近いほど、ADC の実質的な分解能が高くなります。リファレンス電圧が低い方が、ステップ・サイズをより小さくできることがその理由です。 内部リファレンス電圧は複数の ADC14VRSEL ビットにより選択できます。REFVSEL ビットを使用して選択する電圧は、1.2V、1.45V、2.5V のいずれかです。 さらに、(REFOUT ビットを使用して)内部リファレンス電圧を外部へ出力し、レシオメトリック測定用のセンサに電力を供給することや、逆に AVCC 電圧を使用して ADC のリファレンス電圧とセンサへの電力を外部から供給することもできます。 内部リファレンスと AVCC 電圧のいずれも、必要な電力を供給しない場合は、外部リファレンス電圧用の複数のピンを選択できます。

ここで、最適なリファレンス電圧を選択することで、実質的な分解能を高めることができる例を紹介します。 この例では、入力信号が 1V で、14 ビット・モードを選択します。

リファレンス電圧が 2.5V の場合、14 ビット ADC の分解能はコードあたり 153μV になります

リファレンス電圧が 1.2V の場合、14 ビット ADC の分解能はコードあたり 73μV になります

この例では、14 ビット ADC で 1.2V のリファレンス電圧を使用することで、15 ビット ADC で 2.5V のリファレンス電圧を使用する場合より良好な分解能を実現できます。 このように、最大入力信号よりは高く、より低いリファレンス電圧を選択すると、多くのメリットが生まれます。

シングルエンド入力か差動入力か

シングルエンド入力と差動入力のいずれかの選択は、メモリ制御レジスタ ADC14MCTLx により、それぞれの変換ごとに可能です。 これにより、真の差動モードのサポートが可能になります。すなわち、オンボードのシグナル・コンディショニング回路をシンプルにする必要がある場合は、0 VREF の同相モードを選択でき、コストとシステム消費電力を低減できます。 一つの入力チャネルに対して差動入力を選択でき、その他の入力チャネルに対してはシングルエンド入力を選択できることから、デバイスのピン利用率を最大限に高めることができます。その理由は、差動入力は 2 本の入力ピンを必要とするのに対し、シングルエンド入力はわずか 1 本のピンしか必要としないためです。

プログラマブルなビット数

ADC14 では、複数の ADC14RES ビットを使用して、8、10、12、または 14 というプログラマブルなビット数を設定できます。 ビット数を減らすと、1 回の変換の完了に必要なクロック・サイクルを減らすことができます。それにより、サンプル・レートの最大化と消費電力の最小化のために、最小ビット数を選択できます。 これにより、障害検出などの速度を優先するアプリケーションではより少ないビット数を選択し、温度測定などのスピードがそれほど重要でないアプリケーションでは分解能を優先することができます。 ビット数はプログラマブルなので、異なる ADC 分解能を必要とする可能性のあるさまざまなアプリケーション・コードの要件に基づいて、ビット数を変換と変換の間に変更することができます。

設計を開始する際には、使いやすさで定評のある MSP432 MCU ローンチパッド開発キットをご購入ください。

14 ビット ADC のフレキシビリティを活用して実際のアプリケーションの使いやすさを向上させることはとても有用です。次回のブログでは、MSP432 に搭載されている ADC14 の機能の使いやすさについて解説します。ぜひお読みください。

MSP430FR5x/MSP430FR6x マイコンに内蔵されている "ADC12B" も同様の機能を採用しています。MSP430™ マイコンを使って設計を行う場合にはぜひご活用ください。 

他のブログもぜひお読みください。 内蔵 14 ビット ADC については、以下のシリーズの他の記事でも紹介しています。

その他のリソース

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

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