Other Parts Discussed in Post: MSPM0G3507

組込みシステム内のMCU (マイコン) は、運航の多い空港の航空交通管制に似ています。マイコンは自らの動作環境をセンスし、観測結果に基づいて適切に動作するほか、関連システムとの通信を行います。デジタル温度計や煙探知器から、エアコンのモーターまで、非常に多くの電子機器内でマイコンは信号の管理と制御を行います。

組込み分野の設計者は、システムの低コストと耐久性を維持できるように、設計プロセスの実施中にさらなる柔軟性を必要とします。現在入手できるマイコン製品ラインアップを活用する場合、設計者が現在と将来の設計で再利用できるハードウェアやコードの量に制限が生じます。また、それらの製品ラインアップで利用できる演算能力、内蔵アナログ、パッケージングの各オプションも限定的です。このように柔軟性に制限があるため、多くの場合、設計者は複数のメーカーからマイコンを調達し、各設計固有のニーズに合わせた再プログラミングに余分な時間を費やすことになります。その結果、開発コストや、システム全体のコストと複雑さが増大します。

MSPM0 Arm® Cortex®-M0+ マイコンは、より多くのオプション、より高い設計の柔軟性、より多くの直観的なソフトウェアとツールを設計者に提供し、これらの課題の解決を支援します。この記事では、これらの文脈で「より多くの」が実際に何を意味するのかを解説するほか、これらのマイコンの多様な内蔵アナログ・オプションと処理能力を活用できる可能性のある各種アプリケーションを紹介します。

Embedded World 2023 MSPM0 マイコンを紹介

2023 年 3 月 14 ~ 16 日にドイツのニュルンベルクで開催された Embedded World に出展した TI のブースでは、MSPM0 マイコンを活用してシステムの効率や処理能力とセンシング能力を向上させる方法をご紹介しました。詳細については、ti.com/embeddedworld (英語) をご覧ください。

より多くの計算オプション

従来 8 ビットや 16 ビットを使用していたアプリケーションで Arm Cortex-M0+ を採用すると 32 ビットの計算能力を実現できるほか、それ以外の手法でも計算性能を向上させることができます。例えば、コードの再利用と有効期間の延長を可能にするソフトウェア・アブストラクション・レイヤの追加、超低レイテンシの要件が課されるアルゴリズムへの分析機能の追加、セキュリティ機能の強化などが挙げられます。

MSPM0 マイコンのうち計算関連オプションは、シンプルなアプリケーションに適した 32MHz の Arm Cortex-M0+ CPU (中央演算装置) から、除算、平方根、積和、三角関数 (サイン、コサイン、変数 x のアークタンジェント、変数 y/x のアークタンジェント) を含めたハードウェア・アクセラレーション型算術関数を搭載した最大 80MHz の CPU まで、広い範囲にわたります。

MSPM0G3507 のように、フラッシュのウェイト・ステートを 2 に設定した、計算能力が 80MHz の MSPM0 G シリーズ・マイコンを採用すると、以下のようなアプリケーションで低コスト・マイコンを実装できます。

  • (図 1 のサンプル・アプリケーションに示すように) 算術アクセラレーションを活用して制御ループのレイテンシを短縮し、30kHz を上回る速度で動作するセンサレス FOC (Field-Oriented Control:磁界方向制御) モーター・ドライブ・アプリケーション。
  • グリッド・インフラ内にある多相エネルギー・メーターの計算。

1FOC モーター・ドライブ・アプリケーションの例 (コードレス電動ドリルと家電製品)

より多くの内蔵アナログ

各種 MSPM0 マイコンは、逐次比較型 (SAR) A/D コンバータ (ADC)、コンパレータ、D/A コンバータなど、フレキシブルでプログラマブルなオンチップ接続機能を搭載した複数のビルディング・ブロックを内蔵しています。このようなマイコンを活用すると、センシング回路の精度を向上させることができます。これらのビルディング・ブロックには、ゼロドリフトでクロスオーバ歪のない、チョッパ安定化型のプログラマブル・ゲイン・オペアンプも含まれます。内蔵のトランスインピーダンス・アンプは、フォトダイオード回路の実装向けに、入力バイアス電流が非常に小さい値 (150pA) に抑えられています。

低コストのセンシング・アプリケーションで、誤差の発生源になる入力オフセットを低減すると、センサ信号に対してより大きいゲインを適用できるほか、温度範囲全体で残留入力オフセット誤差を小さい値に維持できるので、以下の状況で精度が向上します。

  • バッテリ充電や残量計などのパワー・デリバリ (電力供給) アプリケーション。
  • 家電製品、電動工具、園芸用器具で使用されるブラシ付きまたはブラシレス DC モーター・ドライブなど、監視とリアルタイム制御のアプリケーション。
  • 血圧計、パルス・オキシメーター (血中酸素飽和度計)、デジタル体温計など各種医療用モニタのシグナル・チェーン
  • 次のデモ・ビデオに示す煙探知器やパッシブ赤外線センサなど、各種ビル・オートメーション・アプリケーション。

内蔵の SAR ADC は、最大 4MSPS で 12 ビット単調動作、最大 250kSPS で 14 ビット動作をサポートし、同時サンプリングによって 2 つの信号の同期測定にも対応できます。この機能を活用すると、商用電源の電圧と電流に 14 ビット同時サンプリングを実施して住宅や企業の各アプリケーションでエネルギー監視を行ったり、コンプレッサ、ポンプ、ファンなどのモーター・ドライブで高速、低レイテンシ (250ns) のサンプリングを行ったりできます。

まとめ

コスト重視の組込みシステムで機能の追加や改善を考える際には、設計予算内でのマイコンのセンシング精度や計算能力が制限要因になりがちです。また、単一プラットフォームのソフトウェア開発アプローチを採用し、多くのアプリケーションにまたがって 1 つのソフトウェア・フレームワークを適用しようとする開発者が増加しています。この状況では、スケーラブルな機能を取り揃えたマイコン製品ラインアップを土台として開発を行うことが、これまで以上に重要になります。それによってすべての開発製品で、必要なセンシング機能と処理機能を搭載しながら最大のコスト最適化を図ったマイコンを確実に使用できるようになります。最新のマイコン製品ラインアップを採用することで、設計者はコストを増やさずに新機能を追加できます。または、従来と同じ機能セットを維持したままコストを削減することもできます。同時に、今後の設計で再利用できるスケーラブルなソフトウェアを開発することも可能です。

その他リソース:

MSPM0 マイコンを活用して多様なアプリケーションで設計を効率化する方法を解説した、TI の一連のアプリケーション・ブリーフをご覧ください。

 

Anonymous