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世界のエレクトロニクス企業が熱い視線を送る IoT(Internet of Things)市場(図 1)。市場予測では、2020 年には数兆米ドルといった極めて大きなビジネス規模に成長するという見方が多い。将来性は極めて高い。

図 1 拡大する IoT 市場

 IoT システムを構成する上で欠かせないのは、数多くのセンサ・ノードだ。センサ・ノードを多くの場所に取り付けて、ある物理量(データ)を検出し、無線(ワイヤレス)通信技術を使ってクラウド・コンピュータに送る。集約したデータをクラウド・コンピュータで処理することにより、多くの有益な情報を得るという仕組みである。どのようなデータを集めて、どのような情報を手に入れるのか。そのアイデア次第で、さまざまな新しいサービスやビジネスが生まれると期待されている。

 従って、センサ・ノードには、センサで検出したアナログ信号をデジタル信号に変換する機能や、検出データをデジタル処理する機能、データをクラウドに送る無線(ワイヤレス)通信機能などが不可欠になる。しかも、こうした多くの機能を搭載しながらも、消費電力を極めて低く抑えることが求められる。前述のようにセンサ・ノードは数多く取り付けて使うもの。それぞれのセンサ・ノードが内蔵する電池を頻繁に交換しなければならないようでは、多くの人件費が掛かってしまう。従って、1 個の電池で、15 年や 20 年といった長い期間駆動できるように、センサ・ノードの消費電力を極めて低く抑える必要がある。

 サブ 1GHz の無線を利用

 IoT システムのセンサ・ノードに向けた半導体チップを、既にさまざまな半導体メーカーが製品化している。こうした中、テキサス・インスツルメンツ(TI)は、業界で最も消費電力が低いワイヤレス・マイコン「「CC1310」」を製品化した(図 2)。TI の無線通信ソリューション「SimpleLink™」に含まれる製品だ。  図 2 CC1310 の内部ブロック図

消費電力は極めて低い。例えば、データ受信時のピーク消費電流は 5.5mA で、競合他社品の約 1/4。データ送信時(+10dBm 出力)のピーク消費電流は 12.9mA で、競合他社品の約 1/3 である(図 3 左)。スリープ時の消費電流についても 0.6µA に抑えた。1 個のコイン型電池で、最大 20 年の電池駆動時間が得られる。

  図 3 消費電力を大幅に低減

図左は、CC1310 の消費電力の具体例。処理動作、通信動作、スリープ時のいずれの状態でも、消費電力を低減した。図右は、プロセッサのエネルギー消費効率を評価するベンチマーク「ULPBench」のスコアで、158 と高い。

 無線通信で利用する周波数帯域は、いわゆる「サブ 1GHz」である。具体的には、315MHz や 433MHz、500MHz、779MHz、868MHz、915MHz、920MHz といった帯域を利用できる製品を用意した。データ伝送速度が 50k ビット/秒のときの受信感度は-110dBm で、0.625k ビット/秒のときは-124dBm である。いずれも高感度なため、20km を超える距離の通信が可能という。市街地全体をカバー範囲とする IoT システムを構築できる。用途としては、ビル・オートメーション機器や FA 機器、セキュリティ・システム、スマート・グリッド、ワイヤレス・センサ・ネットワークなどを挙げている。

 3 つのプロセッサ・コアを搭載

 CC1310 には、3 個のプロセッサ・コアを搭載した。1 つは、ユーザーが利用できるメイン CPU コア「ARM Cortex-M3」。2 つ目は、無線通信機能を担当するプロセッサ・コア「ARM Cortex-M0」。3 つ目は、センサで検出したアナログ信号のデジタル変換などを担うセンサ・コントローラを構成する 16 ビット・マイコンである。

 ARM Cortex-M3 は、消費電力を低く抑えたと同時に、演算処理性能も高い。CPU コアの処理能力を評価するベンチマーク「EEMBC CoreMark」のスコアは 142、エネルギー消費効率を評価するベンチマーク「EEMBC ULPBench」のスコアはクラス最高の 158 である(図 3 右)。動作周波数は最大 48MHz である。

 ARM Cortex-M0 は、RF 処理部を構成するプロセッサ・コアだ。RF 処理部は、このプロセッサ・コアのほかに、A/D コンバータやデジタル PLL 回路、DSP モデムなどで構成した。ARM Cortex-M0 を使ってソフトウェア無線を実現している。ハードウェアによる無線通信回路ではなく、ソフトウェア無線を採用したメリットは大きい。例えば、周波数帯域が周囲温度によってずれてしまうといった現象をデジタル的に補正することが可能になる。この結果、外付けのフィルタ回路を狭帯域にできるというメリットが得られる。

 センサ・コントローラを構成する 16 ビット・マイコンは同社独自のコアである。消費電力が極めて低いことが特長だ。A/D コンバータを介したセンサ検出データの読み取りのほか、I2C/SPI インタフェースを介した読み取りも可能だ。16 ビット・マイコンのほか、200k サンプル/秒の 12 ビット分解能 A/D コンバータやアナログ・コンパレータ、定電流源、時間/デジタル・コンバータなどで構成した。

 微細化が低消費電力化に貢献

 業界最小の消費電力を実現できたポイントは大きく分けて 2 つある。1 つは、製造プロセスを微細化したことである。TI の従来品では、0.18µm ルールの CMOS 技術で製造していたが、今回は 65nm ルールの CMOS 技術に微細化した。

 もう 1 つは、スイッチング方式の DC/DC コンバータを集積したことである。+3.3V 入力を+1.8V に降圧変換して、IC 内部に供給する役割を担う。従来は、LDO レギュレータを使っていた。変換効率は、DC/DC コンバータの方が圧倒的に高い。その分だけ、消費電力の低減に成功したわけだ。スイッチング方式の DC/DC コンバータを使うと、放射ノイズが増加してしまうという懸念があるものの、この点については、十分に対策を打っているため、問題はないという。

 モジュールや開発キットを提供

 CC1310 を搭載した無線通信モジュールや開発キットも提供している。無線通信モジュールは、SMK とテレパワーが製品化する(図 4)。SMK の製品は、920MHz を利用する特定小電力無線モジュールで、国内電波法の認可(技適)を取得済みである。  図 4 無線通信モジュール

SMK とテレパワーの製品である。

 この他、開発キットとして TI は、「CC1310DK」を製品化している(図 5)。ハードウェア(ボード)とソフトウェアからなる包括的な開発プラットホームで、価格は 299 米ドルである。

  図 5 開発キット

TI の「CC1310DK」。ボードとソフトウェアなどで構成される。

今後 IoT 市場は、順調に成長すれば極めて大きくなるだろう。しかし、その成長を現実のものとするには、幾つかの条件をクリアする必要がある。その 1 つがセンサ・ノードの低消費電力化だ。従って、CC1310 の製品化は、IoT 市場の拡大に大きく貢献するはずだ。

 

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(2016 年 2 月 29 日 EDN マイクロサイト掲載の記事広告を転載。記事中の情報はすべて掲載時点のものです)