多くの人が同時に話している雑踏の中に身を置くと、そこでは、大声で話している人の声しか聞こえません。しかし、それぞれが1人ずつ話せば、同じ雑踏の中でも1人1人の会話をはっきりと聞くことができます。この状況は、無線スペクトルと増加し続ける接続デバイスに似ています。 

2.4GHz帯は、ビル・オートメーションおよび医療アプリケーションに幅広く使われており、そのような非常に混雑した帯域の1つです。いくつかの一般的なプロトコル、例えば、Wi-Fi®Bluetooth®などは、同じ2.4GHzのアンライセンス周波数帯を利用しています。この帯域には、伝送エラーを引き起こす可能性があるノイズや干渉がたくさんあります。例えば、患者監視ゲートウェイでは、高電力のWi-Fi無線が、同時に動作している遠隔の患者監視センサと通信するのに用いられる隣接した低電力のBluetooth® Low Energy無線と干渉する可能性があります。共存メカニズムがなければ、この干渉によって患者のデータに深刻な影響がもたらされるかもしれません。 

したがって、共存によってWi-FiとBluetooth Low Energyの併用通信を管理する必要性がきわめて重要になります。プロトコル同士が競合するので、堅牢で信頼性の高い通信が必須です。両方の無線が同じ周波数帯で同時に使われても、共存することで、干渉の可能性が最小限に抑えられます。さらに、2種類の無線に対応した2チップ・ソリューションを使用することで、堅牢な無線性能が実現され、消費電力の低減とセキュリティ能力の向上が可能になります。

HVAC(冷暖房空調)ゲートウェイや医療用の患者監視システムは、Wi-FiとBluetooth Low Energyの併用ソリューションを利用できる使用事例の好例です。Wi-Fiは、システムをクラウドに安全に接続して、遠隔監視、遠隔コマンド、遠隔制御を可能にするために使われます。さらに、Bluetooth Low Energyデバイスを使うと、HVACコントローラのWi-Fiをローカル・ネットワークで利用できるようになります。Bluetooth Low Energyは、さまざまな低消費電力のBluetooth Low Energyセンサ・ノードを監視し、HVACコントローラまたは患者モニタにデータを集めるためにも使うことができます。集めたデータは処理のためにクラウドに伝送します。

Wi-Fi無線およびBluetooth Low Energy無線の両方が同時に動作する必要がある場合には、システムの共存機能により、干渉を最小限に抑えるような方法でトラフィックを管理できます。そうでなければ、この干渉はBluetooth Low Energyデバイスで頻発することになります。図1に示すように、Wi-Fi無線の方がはるかに高い出力電力レベルで動作するからです。

 1:共存機能のないシステムでは、同時動作モードで使用した場合にWi-Fi無線が
Bluetooth Low Energy
無線に干渉する

両無線の共存によって、良好な同時通信を実現する製品が可能になります。共存できなければ、両無線が2.4GHz帯域で互いに干渉し合うため、同時通信に障害が生じることになります。この問題は、各無線を独立に動作させながら共存をサポートすることで最小限に抑えることができます。図2に示す共存アルゴリズムによって、トラフィック管理が処理されるからです。さらに、一体型共存を用いた2チップのWi-FiおよびBluetooth Low Energy 5.xソリューションでは、それぞれ独立し最適化されたアーキテクチャによってさらなる利点が得られます。デュアル無線アーキテクチャによって、感度を向上させることができ、共有型の単チップ無線手法やセキュリティ・イネーブラを揃えることと比較して、到達距離の延長、消費電力の低減が可能になります。

 2:一体型共存を用いたシステムでは、2.4GHz無線を同時動作モードで使用した場合に、
互いの無線との干渉が最小限に抑えられる

さらに、バッテリ駆動対応のWi-FiとBluetooth Low Energyの併用製品にとっては、低消費電力が重要な要素になります。Wi-Fiデバイスには、4.5uAのスリープ・モードを有する設定可能な低消費電力プロファイルがあり、ウェイクアップ時には200msec以内でアクセス・ポイントに高速かつ安全なTLS/SSL接続を行います。その独自のネットワーク学習アルゴリズムを用いると、Wi-Fiデバイスはさらに、さまざまなアクセス・ポイントへの安定した信頼性の高い低消費電力接続を可能にし、これは、現時点で230を超えるアクセス・ポイントについて検証済みです。同様に、Bluetooth Low Energyデバイスも、スタンバイ電流が0.94uAときわめて低く、-97dBmの優れた感度によって最大+5dBmの出力電力で到達距離の延長が可能になります。

2チップアーキテクチャはさらに、Wi-FiとBluetooth Low Energyの両方のセキュリティ機能、例えば、ハードウェア暗号化、セキュア・ブート、アプリケーション・レベルのセキュリティ、セキュアOTA(over the air)などを利用することで、セキュリティの向上を可能にします。Wi-Fiデバイスは、個人および企業レベルの最新のWPA3サポートも組み込んでおり、TIの信頼ルート公開キーや、暗号化され認証された実行可能ファイルによって、クローニングやハッキングを阻止するバリアを実現します。また、1-wireインターフェイスを介してデバイス間で共存を一体化することで、IOラインの数が最小限に抑えられ、他のセンサまたは周辺機器で利用できるようになります。

ゲートウェイと同様に、ホーム・オートメーションおよび医療アプリケーションにおける他のタイプの製品も、2チップ・システムで実現されるセキュリティ、最適化された低消費電力、信頼性の高い通信に加えて、共存機能から恩恵を受けることができます。そのため今日では、特別に注意を払って堅牢な通信を維持し、混雑してノイズの多い環境でも干渉を最小限に抑えて、異なるテクノロジーが同じ2.4GHz周波数帯で動作できるようにすることが、設計者にとってさらに重要になります。

2チップ・ソリューションの利点を詳しく知っていただくために、TIはリファレンス・デザインを用いて設計およびサポートを容易にします。拡張性のあるデバイス、EVM、ツールの多様なポートフォリオをご覧ください。

参考情報:
+Bluetooth関連製品:
- 『CC2642R  - CC2652P』    - 『CC2652R』   - 『CC2652RB』 - 評価ボード
+Wi-Fi関連製品:
- 『CC3230S』    - 『CC3230SF』  - 『CC3235S』    - 『CC3235SF』  - 評価ボード

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上記の記事はこちらの技術記事(2021年7月23日)より翻訳転載されました。 
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