「電圧リファレンスを理解する」シリーズの最初の記事では、直列電圧リファレンスとシャント電圧リファレンスの違いについて説明しました。 今回は、超低ドロップアウトと、それが直列リファレンスだけの特性ではない理由に焦点を絞って説明していきます。
広い入力電圧範囲と低ドロップアウト動作を両立しなければならない電圧リファレンスが必要になったことはないでしょうか?たとえば、低ドロップアウトの直列リファレンスのほとんどが、12Vまでの入力電圧には対応していません。そのような場合は、シャント・リファレンスが非常に便利です。
図1:シャント・リファレンスによるADC外部リファレンス・ピンの駆動
図1に示すアプリケーションでの『LM4040』シャント・リファレンスの電圧は4.096Vです。これはアナログ/デジタル・コンバータ(ADC)用に選択する電圧としては一般的な値で、その理由は、1mVが12ビットADCでの1最下位ビット(LSB)に相当するからです。
シャント・リファレンスには、消費電流を設定するための外部抵抗が必要です。電圧リファレンスの負荷電流は、ADCのデータシートから判断できます。この例では、『ADS8320』を使用してみましょう。図1に示す回路での外部リファレンス・ピンの消費電流は、ADCのデータシートには40µAと記載されています。外部抵抗の値が576Ωである場合、電圧リファレンスは4.16V~12.75Vの入力電圧範囲にわたり動作領域内に留まります。これが64mVのドロップアウト電圧であり、12Vを超える電圧でリファレンスとして完全に機能します。シャント・リファレンスの低ドロップアウトを同じ4.096Vの基準電圧で直列リファレンスと比較できるように、データシートには、『REF5040』の最大ドロップアウト電圧として200mVという値が記載されています。
64mVでもまだ高いという場合は、100Ωの外部抵抗を使用すれば、最小入力電圧を4.11V、ドロップアウトを14mVまで下げることができます。この超低ドロップアウトとトレードオフの関係にあるのが最大入力電圧で、その値は、静止電流がデバイスの最大定格を超えないよう5.59Vに制限されることになります。もう一度直列リファレンスと比較してみると、『REF3240』は5mVの低ドロップアウトですが、最大入力電圧は5.5Vです。直列のドロップアウトが改善しているのは部品が異なるためですが、シャントの場合は同じ部品で抵抗器が異なるという点に注意してください。
表1は、『LM4040』シャント・リファレンスの2つの抵抗値に対する電圧値と電流値を簡単にまとめたものです。
RS |
ILOAD |
VINMIN |
IQ at VINMIN |
VINMAX |
IQ at VINMAX |
576 Ω |
40 μA |
4.16 V |
71.1 μA |
12.75 V |
14.98 mA |
100 Ω |
40 μA |
4.11 V |
100 μA |
5.59 V |
14.9 mA |
表1:『LM4040』シャント・リファレンスの異なる外部抵抗での電圧および電流パラメータ
このような非常に低いドロップアウト電圧が実現できるのは、リファレンス・デバイスから見た負荷電流が40µAと非常に小さいからです。負荷が100µAなら、同じ576Ωの抵抗で可能な最小VINは4.2V、ドロップアウトは104mVとなりますが、それでもまだ低い値です。負荷電流がさらに高いアプリケーションでは、必要な抵抗が大きくなるにつれてドロップアウトも増加します。
「電圧リファレンスを理解する」の第3回(英語)では、直列リファレンスの精度でシャント・リファレンスの柔軟性を実現する方法について、Marek Lisが解説します。
それまでは、www.tij.co.jp/vrefにアクセスして、TIの電圧リファレンス製品についての詳細情報をご覧ください。また、その他の設計に役立つリソースとして、以下もご検討ください。
このシリーズの第1部では、直列電圧リファレンスとシャント電圧リファレンスの違いについて説明しています。「シャントと直列、どちらの電圧リファレンス・トポロジが適しているか」ADC分解能に関連した電圧リファレンスの選定について詳しい説明が必要な場合は、ホワイトペーパー『Voltage Reference Selection Basics』(英語)をダウンロードしてください。
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※上記の記事はこちらの技術記事(2015年4月30日)より翻訳転載されました。
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