電圧リファレンスには、シャント・リファレンスと直列リファレンスの2種類があります。  それぞれに固有の使用条件があるので、この2種類からどちらかを選択する場合は、そのプロセスの複雑さに気後れを感じることがあります。  比較表は存在しますが、特定のアプリケーション向けにどちらか一方のリファレンス・トポロジを選ぶ方法については、一般に大した情報は得られません。このブログ・シリーズでは、シャント・リファレンスと直列リファレンスの両方のアプリケーションを取り上げ、どのような場合にそれらを使用すべきかについて説明しつつ、各リファレンス・トポロジのあまり知られていないユースケースもいくつか紹介していきます。

1 - シャントと直列、どちらのトポロジが適しているか

現実世界は(少なくとも現時点では)アナログであり、現実世界とシステムを仲介するインターフェイスとしては、アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)、センサ、またはその他の特定用途向け集積回路(IC)を使用するのが最も一般的です。電圧リファレンスICは、システムの電圧や温度が変化しても一定の値として使用できる安定した出力電圧を供給します。電圧リファレンスにはシャント直列の2種類があり、表1に記載されているとおり、それぞれに固有の長所とユースケースがあります。

表1:シャント電圧リファレンスと直列電圧リファレンスの標準的な比較表

シャント・リファレンスは機能的にツェナー・ダイオードと類似しており、最小動作電流に達した後のデバイスでの電圧降下は一定になります。シャント・リファレンスは、一定の電圧降下として機能することによって負荷のレギュレーションを行い、負荷に必要のない過剰な電流はデバイスを介してグランドに分流します。シャント・リファレンスに最大入力電圧定格はありませんが、外部抵抗が必要です。入力電源から見た電流値は常に、入力電圧レベルと外部抵抗によって決まる最大負荷電流になります。シャント・リファレンスでは、負荷の電流要件の変化に応じて、シンクする電流が増減します。

外部抵抗は、次の式1と式2によって算出される値の範囲内でなければなりません。

シャント・リファレンスを使用してフローティング・リファレンスや負のリファレンスを作成することも可能で、その場合も計算式に変更はありません。 

直列リファレンス・デバイスには外部抵抗が不要で、消費する電流は、負荷に必要な電流と微小な静止電流だけです。ただし、入力電圧がリファレンス・デバイスに直接渡されるので、直列リファレンスには最大定格入力電圧があります。直列リファレンスには、デバイスを外部からイネーブルまたはディスエーブルにするイネーブル・ピンを含めることができ、消費電力を節約できます。

今後設計するアプリケーション向けに電圧リファレンスを選択する際は、必ず以下の代表的なユースケースに留意してください。

シャント・リファレンスのユースケース:

  • 広範囲の入力電圧または高い入力過渡電圧
  • 負またはフローティング電圧リファレンス

直列リファレンスのユースケース:

  • 負荷電流の変動。直列では軽負荷になるほど低下します
  • スリープ動作やシャットダウン動作を備えたリファレンス

「電圧リファレンスを理解する」の第2部では、超低ドロップアウトと、それが直列リファレンスだけの特性ではない理由について説明します。

それまでは、www.tij.co.jp/vrefにアクセスして、TIの電圧リファレンス製品についての詳細情報をご覧ください。また、ADC分解能に関連した電圧リファレンスの選定について詳しい説明が必要な場合は、ホワイトペーパー『Voltage Reference Selection Basics』(英語)をダウンロードしてください。

 

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※上記の記事はこちらの技術記事(2015年4月29日)より翻訳転載されました。
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