TIのSIMPLE SWITCHER® LM257xおよびLM259xレギュレータは、DC/DC降圧レギュレーション用の一般的なレギュレータとして、20年以上にわたって利用されています。その人気から、数多くのメーカによって、一見するとSIMPLE SWITCHER製品を真似たような類似製品が作られていますが、これらの類似製品が実際には似ていないという可能性もあります。ここでは、表面的には同じに見える複数の製品の中から使用する製品を選ぶ際に注目すべき点について説明します。
TIのSIMPLE SWITCHER LM257xおよびLM259xファミリに対するピン互換(P2P)のドロップイン代替デバイスが、他の複数のメーカで製作されています。これらの類似製品(ここでは“レギュレータX”と呼びます)は、SIMPLE SWITCHERと同じ性能および仕様を持つ製品とされています。しかし、表面的にはわかりませんが、レギュレータXにはまったく別のレギュレータ用に設計されたシリコンが使用されており、各メーカでSIMPLE SWITCHERの構成に合うようにピン配置が変更されています。現実的には、ある部品のパラメータを異なるシリコンを使用した部品のパラメータに正確に一致させることは、極めて困難です。つまり、レギュレータXでは、SIMPLE SWITCHERデバイスよりもデータシートの仕様上の定格を下げる必要があり、そうしなければレギュレータXの性能が仕様に一致しなくなります。
レギュレータXのデータシートはTIのSIMPLE SWITCHERレギュレータに酷似していますが、実際のところ、まったく同じものに見えます。しかし、いったいどのようにして、レギュレータXの性能をデータシートに記載されているスイッチング周波数や電流制限などの重要なパラメータに一致させているのでしょうか?当然このような疑問が生まれます。TIのアプリケーション・エンジニアリング・チームでは、テスト用にカスタム評価ボードを作成し、TIの40V、3AのSIMPLE SWITCHER LM2596降圧コンバータと、別々のメーカによる他の3つのレギュレータXデバイス(ここではXa、Xb、Xcと呼びます)で性能および信頼性のベンチ・データを取得しました。
TIでは、一般的な5VOUTアプリケーションでの入力電圧と負荷電流に対する効率性を、4つのデバイスすべてについて評価しました。-40℃、25℃、85℃の温度条件でテストを実施しました。また、性能限界、安全性リスク、信頼性リスクを明らかにする目的で、公称値3Aのデバイスに対して7Aまでの出力電流をテストしています。各動作点でオシロスコープの画面キャプチャを取得し、短絡状態時のサーマル・カメラの画像を記録しました。
仕様に対する性能誤差が最も多く見つかったのは、仕様上の電流制限と実際の電流制限の比較においてでした。高い電流制限は、短絡状態時にインダクタ、ダイオード、集積回路(IC)での過度の発熱を引き起こすため、ICが損傷して正しく機能しなくなる可能性があり、その結果として、最終製品の動作不良が発生する場合があります。レギュレータXa、Xb、Xcのデータシートに記載されている電流制限は4.5A(標準)です。しかし、評価中に確認されたレギュレータXa、Xb、Xcの実際の電流制限は、5Aから10Aにまで及びました(表1を参照)。
表1: TIのSIMPLE SWITCHER LM2596と各代替デバイスの電流制限の比較
評価対象とした3つのP2P代替ICの電流制限は、すべてがデータシートに記載されているパラメータを大きく上回る非常に高い値でした。2つのデバイスは5.5A~6Aになるまで電流制限がかからず、一方でもう1つのデバイスの電流値は短絡状態時に最大で10Aにまで達しました。図1に示すように、このICの温度は110℃まで上昇し、ダイオード(画像なし)の温度は133℃まで上昇しました。このような温度では、ICが損傷する可能性が高くなります。
図1: 短絡状態時におけるレギュレータXcのサーマル・カメラ画像
これらのデバイスが使用される最終機器の長期的な信頼性を確保するためには、正確かつ安全な電流制限が不可欠です。短絡状態は、場合によってはシステムが操作不能になる原因となります。
今後LM257xおよびLM259xレギュレータを購入する際は、データシートをコピーするだけでは高品質のICを作ることはできないという点を思い出してください。TIのSIMPLE SWITCHERレギュレータなら仕様どおりに動作するので、安心してお選びいただけます。
その他のリソース
- 電源回路の設計者にとって熱管理は最大の懸案事項です。最低10℃/Wの熱抵抗を持つ、こちらのSIMPLE SWITCHER DC/DCスイッチング・レギュレータをご利用ください。
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