最新の電力供給ソリューションにおける電力密度の重要性とその価値は、どれだけ強調しても足りません。 

高電力密度設計の基本技術をより深く理解するために、この技術記事では高電力密度ソリューションで最も重要な次の4つの観点について説明します。 

  • 損失発生の低減
  • 最適なトポロジと制御の選択
  • 効果的な熱除去
  • 機械部品および電気部品の集積化によるシステム体積の削減 

また、TIと連携し、この4つの観点を支える高度な技術的能力と製品を利用することで、高電力密度を達成する取り組みをどのように強化できるかもお見せします。 

しかし、まずは電力密度とは何かを明確にし、電力密度の値を基にソリューションを比較するときの重要な点を明らかにしましょう。 

 

電力密度とは 

電力管理アプリケーションの場合、電力密度とは単純に、コンバータの定格(または公称)出力電力を、コンバータが占める体積で割ったものです(図1参照)。  

図1:電力密度を計算するのは簡単だが、公称電力と体積の定義の仕方によって曖昧になりやすい  

 

しかし、電力密度で電源を比較しようとする場合、この単純な定義でも多くのことを明確にする必要があります。  

出力電力は、ワーストケースの環境条件でコンバータが供給可能な連続出力電力に相当します。それに関連する電力供給能力は、周辺温度、許容可能な最大ケース温度、取り付け方向、高度、想定寿命などの組み合わせによって影響を受ける場合があります。  

同様に、電源の体積を定義す���方法は、コンバータの用途や構造に応じていくつもあります。電源の体積や、その結果として得られる電源の電力密度に大きく影響する可変要素として、電磁干渉フィルタ、ファン、ハウジング部品、入力/出力エネルギー蓄積コンデンサなどが含まれているかどうかがあります。これらの部品が必須なことはよくありますが、最新の電源の多くには含まれていません。そのため、資料に記載された電力密度データを比較するときには、これらの可変要素を把握し、考慮に入れることが必須です。 

 

電力密度向上の制限要因とその障壁を打破する方法をご覧ください。

電力密度の歴史 

なぜ電力密度が重視されるのかと、この傾向がどのように始まったかを確認しながら、大まかな歴史を簡単に見てみましょう。 

初期のスイッチ・モード電力変換の頃から、効率が電力技術のイノベーションを牽引してきました。主に入力/出力の電圧比と利用可能な数少ないトポロジに左右されていた、リニア電源の確定的な効率の値が、スイッチ・モード電力コンバータによって更新されるようになりました。 

1990年代の初頭以降、パーソナル・コンピュータや個人向け電子機器、電子通信機器、半導体テクノロジの進歩に刺激され、効率向上の必要性が著しく高まっています。図2に示すように、電源ソリューションの効率向上に後押しされ、電力密度も上昇し続けています。 

 

図2:密接に連動する、電力供給アプリケーションの効率と電力密度 

エネルギー危機に襲われ、そのため緊急に規制を設ける必要に迫られることが何度もあったため、特に省エネ化と総保有コストの面で、効率は電力システムにとってさらに重要な特性になりました。 

ここ10年間で、高電力密度は、電力システム技術の最終的な頂点として認識されるようになっています。 

 

高電力密度を実現するには 

電力密度の要点をよく理解するために、高電力密度の実現には何が必要かを確認しましょう。効率、サイズ、電力密度が密接に関連していることは、傍から見てもすぐにわかります。 

デバイスから出る熱量を下げることが不可欠のため、効率は高電力密度実現の見張り役と考えられます。高い効率を利用するには、ソリューションの体積、つまりサイズを縮小しなければなりません。高効率とサイズ縮小を同時に実現するには、高い動作周波数で効率よく機能するソリューションが必要になります。そのようなソリューションには、とりわけ次のようなことが必要です。 

  • スイッチング損失の削減 

導通損失とスイッチング損失が低いスイッチング素子。 

  • トポロジ、制御および回路設計 

高いスイッチング周波数で動作する適切なトポロジが必要です。適用される制御技術に基づき、ほとんどのコンバータ・トポロジで、従来の方形波パルス幅変調、ゼロ電圧/ゼロ電流遷移、または全共振モードなどのさまざまな動作モードが可能なことを考えると、制御手段と革新的な回路実装も重要です。 

 

  • 集積化 

パッシブ部品の動作周波数上昇のスケーリング効果により、電力コンバータのサイズを縮小できます。しかし、他にも電力密度の問題を解く非常に重要な手がかりとして、シリコン・テクノロジ自体に基づき電力部分と制御部分を一体化する、集積化があります。半導体デバイス側では、設計者は、複数の半導体のダイと、多くの場合でパッシブ部品、コンデンサ、磁気部品も合わせて一体化する、マルチチップ・モジュール・テクノロジを使用します。コンバータの機械設計とプリント基板設計に加えて筐体も、高電力密度の実現に欠かせない要素であることは間違いありません。 

 

  • 熱特性の改善 

TIの高度なパッケージングと先進的なリードフレームの技術は、外部の冷却表面と実際のシリコン温度との間の温度勾配を最小限にするうえで重要な働きをします。付随するモデリングや最適化機能と合わせてこれらの技術を用いることで熱特性が改善しますが、これにより高電力密度設計が実現するだけでなく、TIの半導体デバイスが長期間、高い信頼性で動作することにもなります。 

 

以上4つの基本技術を合わせて使用することが、成功した多くの高電力密度設計の土台となっています。このことから、最も適切な半導体テクノロジを設計者がどの程度利用したか、また適切なトポロジ、制御手法、機械設計、熱管理、集積化方針を選択したかどうかを段階的に評価する成績表のように、電力密度の達成程度を確認することができます。 

 

まとめ 

電力密度を、電力エンジニアリングにおける技術的価値をランク付けする汎用的な評価点として見るだけでなく、なぜ電力密度が重要なのかを本質的に理解したい場合は、一歩下がって、産業界と社会が全体として高電力密度からどのような恩恵を受けているかを確認する必要があります。 

例えば、物理的にサイズが小さくなると、通常は使用する原材料が減るので、材料コストが低下することにつながるでしょう。同じく小型化と使用材料の削減によって、軽量化もできるかもしれません。軽量であることは電力システムでは非常に有益な特性であり、輸送分野では燃料の節約や輸送距離の延長につながるでしょう。最後に、電力密度を高めることは、超小型化の可能性に関係します。この観点を限界まで推し進めることで、電力変換産業は、これまで考えもつかなかったような新しい市場を切り開けるようになっています。 

これらの例でわかるように、メーカー、ユーザー、またはオペレータにとってシステム・レベルで明確な経済的メリットがあり、総保有コストの低下につながる可能性があることを考えると、電力密度は非常に重要です。 

この情報に加えて関連のトレーニング・ビデオ・シリーズ「電力密度に関する基礎テクノロジの理解」をご覧になり、当社とその技術についてさらに深く知りたいと思っていただけたら幸いです。知識を深めることで、当社の先進的なシリコン・テクノロジと窒化ガリウム(GaN)の高電圧パワー・デバイスを使用して、5V未満の電力レール電圧から600V以上に至るまで、業界トップの電力密度を実現できるでしょう。 

 

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年8月18日)より翻訳転載されました。
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