Other Parts Discussed in Post: TPS54620, TPS566231, TPS62903, TPS543620

最新の降圧コンバータに備わる機能とは、単純に言えば特定の仕事をこなすためのツールです。このような機能の構成やレイアウトは、スペースや柔軟性を念頭において設計されています。設計者がこれらの機能を簡単に取り出せることは、単に設計課題の解決になる以上の意味があります。

従来、パワーマネジメント・ソリューションには、機能ごとに個別のピンがありました。ソフトスタート、パワー・グッド、スイッチング周波数調整、ループ補償など、すべての機能にピンが1つずつ付いていました。この方法は非常に便利でしたし、これからもそうでしょう。例えば、降圧コンバータ『TPS54620』には、独立したPower-Goodピンがあり、サーマル・シャットダウンの際にはこのピンが信号をLowにアサートします。不安定で厳しい条件のもとで運用される製品の場合、デバイスが安定した電力を供給しているかどうかを示すピンにアクセスできることが不可欠です。

極端な状況がないとしても、電力密度、設計面積、使い勝手、調整の自由度を優先することで、よりニーズに適したICを選択することができるでしょう。図1に、選択したピンアウトが、さまざまな設計課題にどう対応するかを示します。

 1:ピンアウト方式と設計課題との対応

個別ピンアウトを利用する場合の大きな利点は、各機能を細かく調整できることです。機能ごとに専用のピンがあると、抵抗やコンデンサの選択、場合によってはグランドへの短絡によって、ソフトスタート時間などの機能を、デバイスが持つそれぞれの動作範囲内であればどのようにも設定できます。逆に、マルチファンクション・ピンアウトとトリム・ピンアウトのデバイスでは、調整できる自由度が限られるか、場合によってはパラメータの値が1つに固定されます。

あるべき機能だが、今は必要なときではない

時には、設計者側での監視を最小限に抑えて設計課題を解決してくれるコンバータなどを基板に搭載するだけで済むこともあります。こういったときには特に、トリム・ピンアウトが役立ちます。『TPS566231P』や『TPS566231』などの派生デバイスは、Power-Goodピンか調整可能なソフトスタート・ピンかを選べる選択肢を提供します。設計要件の優先度を決める際に、パワー・グッドはそれほど重要ではないと判断し、一方でスタートアップ時の過渡事象についてはもっと気にするかもしれません。こういったケースでは、ソフトスタート(SS)を調整可能な『TPS566231』を選択し、パワー・グッド(PG/PGOOD)ピンの信号監視は省略することができます。

ピンアウトを制限すると、単にICのフットプリント以上のスペースの節約になり、外付け部品の数も大きく削減されます。これらのさまざまなトリムには、通常であれば外付け部品を追加して調整するような機能の多くに対応する固定パラメータがあるため、時間とスペースの大幅な節約になります。図2に、『TPS566231/1P/8/8P』がデバイスの機能性を損なわずに少ないピンをどのように活用するかを示します。『TPS566231/1P/8/8P』ではピンアウトが削減されて、使い勝手が良くなっています。一方で、『TPS54620』では詳細なピンアウトにより柔軟な調整が可能になり、電源ソリューションをより最適化できます。

 2:『TPS566231/1P/8/8P』のピンアウトと『TPS54620』ピンアウトの対比

本質を決めるのはピンアウトではなく機能セット

設計者がいろいろな部分に注意を払おうとするのは当然です。スペースが狭いときはピンアウトの制限で助かることがありますが、パラメータ調整の自由度が後回しになることは否めません。ありがたいことに、マルチファンクション・ピンアウトという折衷案があります。

『TPS543620』や『TPS62903』などのデバイスには、マルチファンクション・ピンとも呼ばれるMODEピンが用意されており、複数のパラメータと補償ループを一度に選択できる抵抗設定を付加できます。言い換えると、ICに数個の抵抗を接続することで、ランプ・コンデンサ、ソフトスタート時間、電流制限などを同時に調整することが可能になります。また、MODEピンにより、降圧コンバータ内の1つのパラメータを調整するのに必要な、適切な抵抗またはコンデンサの値を考慮しなくて済みます。

マルチファンクション・ピンアウトのデバイスのデータ・シートには、図3に示すような表が含まれており、それぞれの抵抗値がIC内のそれぞれのパラメータをどのように設定するかを示しています。

 3RMODE値が、あるデバイスの内部部品の選択にどう関係するかを示す。
RMODE 
は、MODEピンに配置される抵抗

悩ましい問題と優れた設計を同時に見たものは誰もいない

電力ニーズに合うデバイスを選ぶために選択肢を比較検討する際、電力密度や使い勝手を、限られた機能セットと結びつける必要はもうありません。長年にわたるパッケージングの進化により、基板のスペースを犠牲にしなくても、必要な機能をDC/DC降圧コンバータが備えることが可能になっています。さらに、初めはデバイスのピンアウトが制限されているように思えるかもしれませんが、使えるツールすべてを把握するのは難しいことではありません。

参考情報(英語):
+技術記事:
Advantages of scalability: from Peter Parker to pin-strapping
+ホワイト・ペーパー
Understanding the Trade-offs and Technologies to Increase Power Density

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上記の記事はこちらの技術記事(2021年6月28日)より翻訳転載されました。 
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