リレーは、トランジスタの発明以前からスイッチとして使用されてきました。多くの車載システムの開発にとって必須なのは、絶縁抵抗の監視の場合と同様に、高電圧システムを低電圧側から安全に制御できる能力です。電磁リレーや接触器の技術は長年にわたって進歩してきました。一方で、寿命全体にわたる信頼性の確保、高速なスイッチング速度、さらに低ノイズ、衝撃と振動への耐性、消費電力に関する設計目標を満たそうとすると、電磁リレーには引き続き複数の課題が存在しています。
それに対し、ソリッドステート・リレー (SSR) は、性能とコストの面で優れているほか、基礎絶縁や強化絶縁といった複数の絶縁レベルを定格として規定しています。また、SSR には電磁リレーやフォトリレーなどの代替技術を上回る利点があります。
システムの信頼性を向上 | |
TI のソリッドステート・リレー製品ラインアップの詳細 |
従来型リレーを使用するスイッチング・ソリューション
電磁リレー (EMR) は、高電圧のスイッチング・アプリケーションでは一般的です。EMR は電磁気力を使用して、接触器を機械的にオンまたはオフに切り替えます。この動作の性質上、EMR にはオン抵抗が非常に小さいという特長があります。電磁リレーの接点は基本的に金属と金属の接続であるためです。
ただし、EMR にはスイッチング速度と信頼性に関するトレードオフがあります。リレー内で部品を物理的に動かすことが制限要因になり、標準的なスイッチング速度は通常、5 ~ 15ms の範囲にとどまります。経過時間と使用回数の増加に応じて、EMR ではアーク放電、チャタリング、溶着などの障害が発生しやすくなります。
EMR とは異なり、フォトリレーには可動部品はなく、高い絶縁電圧を実現できます。フォトリレーは従来型の EMR に代わる改良手段です。ただし、伝送可能な電力量の制限や、内部 LED の劣化という設計上の検討事項が存在しています。加えて、フォトリレーは 1 個の外部電流制限抵抗を必要とし、多くの場合は LED のオン / オフ状態を管理するために追加の FET (電界効果トランジスタ) を必要とします。
SSR による絶縁の信頼性向上
TI の各種ソリッドステート・リレー (SSR) は、(FET 内蔵) スイッチとして使用すること、または外部 FET を制御するドライバとして使用することができます。静電容量性絶縁と磁気絶縁のどちらを使用する場合でも、TI の絶縁型 SSR 製品ラインアップを採用すると、基礎絶縁または強化絶縁レベルの設計を実現できます。TI の『TPSI2140-Q1』 絶縁型スイッチと『TPSI3050-Q1』絶縁型ドライバには、EMR に比べて信頼性や耐久性の向上という特長があります。これらの製品では、時間の経過に伴う機械的な劣化が発生しないためです。したがって、SSR を採用すると、従来型の EMR に比べて寿命全体への信頼性を 10 倍に高めることができます。また、TI の各種 SSR は EMR に比べて桁違いの速度であるマイクロ秒 (μs) 単位でスイッチングを実行できます。
『TPSI3050-Q1』と『TPSI2140-Q1』は、単一の絶縁バリアを介して電力と信号を伝送する機能を備えているため、2 次側バイアス電源は不要であり、小型のソリューション・サイズを実現できます。図 1 は、高電圧システム内で『TPSI2140-Q1』絶縁型スイッチを使用する例を示しています。バイアス電源や外部制御回路のような外部部品が不要になっています。
図 1:『TPSI2140-Q1』絶縁型スイッチは高電圧システム内でソリューション・サイズの縮小に貢献
『TPSI2140-Q1』や『TPSI3050-Q1』のような各種ソリッドステート・リレー (SSR) には、従来型のフォトリレーやフォトカプラを上回る利点もあります。『TPSI2140-Q1』や『TPSI3050-Q1』などの TI の各種デバイスは、LED の劣化がないので、フォトリレーよりも高い信頼性を実現します。ロジック・レベルの入力でシステムを直接駆動できるので、外部制御回路は不要です。表 1で、これらの絶縁型スイッチング技術の性質を比較します。
電磁リレー | フォトリレー (光学リレー) | TI のソリッドステート・リレー | |
絶縁材 (インシュレータ) | 空気またはエポキシ | エポキシまたはポリイミド | ポリイミドまたは二酸化シリコン |
誘電体強度 (1 秒定格) |
≅1VRMS/μm ≅20VRMS/μm |
≅20VRMS/μm ≅300VRMS/μm |
≅300VRMS/μm ≅500VRMS/μm |
利点 | 低い抵抗 | 低 EMI (電磁干渉) |
高速 (μs 単位) 低消費電力 |
欠点 |
低速 (ms 単位) 機械的摩耗、振動 / 磁気への耐性 |
光学的劣化と部分放電 | EMI を制限する設計が必須 |
動作時の周囲温度 | -40℃ ~ 85℃ | -40℃ ~ 85℃ | -40℃ ~ 125℃ |
コスト | 高 | 低 | 低 |
表 1:既存の各種スイッチング・ソリューションの比較
まとめ
TI の各種ソリッドステート・リレーは、システム・コストを抑え、最高クラスの誘電体強度を、これまでにない速度と動作温度で実現します。また、小型のパッケージで、より信頼性の高いスイッチングを実行します。TI の絶縁型スイッチとドライバを活用して設計を簡素化する方法について、以下の資料で詳しくご確認ください。
参考情報:
+TI プレシジョン・ラボ・トレーニング・シリーズ "絶縁基礎トレーニング" (「CC」アイコンのクリックで日本語字幕が選択可能)
+アプリケーション・ノート(英語):
”Why Pre-Charge Circuits Are Necessary in High Voltage Systems”
”Cascoding Two TPSI3050 Isolated Switch Drivers to Increase Gate Drive Voltage”
+TPSI3050Q1EVM
+TPSI2140Q1EVM
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※上記の記事はこちらの技術記事(2022年5月9日)より翻訳転載されました。
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