Other Parts Discussed in Post: TDA4VH-Q1, TPS62876-Q1

この記事は、Tanvee Pandya Goeswami Deva Singh による共著です。

自動車システムの電動化は先進運転支援システム (ADAS) 分野で成長を続けており、その中には、自動運転、パーキング アシスト、アダプティブ制御の各用途に適したビジョン分析機能があります。スマート コネクティビティ、安全上重要なソフトウェア アプリケーション、ニューラル ネットワーク処理はいずれも、リアルタイム演算能力の強化を必要とします。

これらの高度なニーズに対応するには、TDA4VH-Q1 のようなマルチコア プロセッサが必要であり、この製品は 100A を上回る電子制御ユニット (ECU) をサポートできます。ただし、このような大電力を扱う場合には、より電流量の多いレールでの高効率の達成、放熱性能の制御、全負荷時の過渡応答、機能安全要件への適合といった設計上の課題に対処する必要があります。

ADAS 処理機能への電力供給

降圧コンバータ TPS62876-Q1 は、斬新なスタッカブル機能によって、30A を超える電流を扱う設計に役立ち、TDA4VH-Q1 のようなシステム オン チップ (SoC) への電力供給に必要な大電流にも対応できます。このファミリでは 15A ~ 30A の各種デバイスが共通のパッケージで提供され、スタック機能によって 100A を超える負荷電流への到達もサポートされます。

これらのデバイスをスタックすると、次世代の ADAS 向け SoC のコアへの電力供給に役立つほか、熱的な制約の緩和や効率の向上を通じて放熱性能の強化につながります。図 1 をご覧ください。

 

12 個の TPS62876-Q1 デバイスをスタックした構成

スタック機能は、デイジーチェーン方式を使用して動作します。1 次デバイスが制御するのは、1 個の補償回路、1 本の POWERGOOD ピン、1 本の ENABLE ピン、1 個の I2C インターフェイスです。最適な電流共有を実現するには、スタック内にあるすべてのデバイスが同じ電流定格、同じスイッチング周波数、同じ電流レベルを使用するようにプログラムする必要があります。

また、スタック内の 1 次デバイスは、出力電圧を設定し、そのレギュレーションも制御します。SYNCOUT ピンとグランドの間に 47kΩ の抵抗を接続すると、そのデバイスは 2 次デバイスとして動作します。SYNCOUT ピンがハイ インピーダンス状態の場合、そのデバイスは 1 次デバイスとして動作します。図 2 に、1 枚のプリント基板に実装したスタック構成を示します。

2:降圧コンバータ TPS62876-Q1 3 個スタックした評価基板の例

このファミリに属する降圧コンバータのその他の特長:

  • ドループ補償は、負荷の変動に対処するためのライン制御機能であり、自動電圧ポジショニングとも呼ばれます。公称出力電圧をスケーリングすると、出力電流 (15A ~ 30A) に基づく過渡応答の許容差を改善できるほか、出力容量の低減、コスト最適化の推進、電力密度の高いソリューションの実現に役立ちます。ドループ補償は、REGISTER ピンを使用して有効または無効にできます。この機能はデフォルトで無効になっています。
  • リモート センシング機能は、より幅広い SoC プロセッサのサポートに役立ちます。より厳格な出力電圧要件に対応でき、負荷過渡が発生している期間中に、より多くのヘッドルームを確保できるからです。このデバイスのリモート センス ラインをポイント オブ ロードに直接接続することにより、8% の精度で電圧を設定できます。
  • I2C インターフェイスはシステムの性能を監視し、温度や出力電流が指定した制限を超過したときに警告を送信します。ダイナミック電圧スケーリング機能を使用し、出力電圧を4V ~ 1.675V の範囲で調整することもできます。I2C 機能が必要ない場合でも、SCL と SDA の各ピンをグランドに接続すれば、同じデバイスを引き続き使用できます。

機能安全

機能安全は、ADAS にとって重要な側面の 1 つであり、特に ADAS を自動運転に活用する場合には不可欠です。降圧コンバータ TPS62876-Q1 には、TI の「機能安全対応」レベルの資料が付属しており、その中には以下の情報があります。

  • 業界の信頼性規格に基づいて推定した、半導体部品に関する機能安全の FIT (failure-in-time:平均故障率)。
  • デバイスの主な機能に基づく、部品の故障モードとその分布 (FMD)。
  • ピンの故障モード解析 (FMA)。

設計に外部スーパーバイザを追加することで、各種 ASIL (車載セーフティ インテグリティ レベル) 規格に適合できるようになります。

まとめ

SAE (米国自動車技術者協会) Level 2 など、より高度な自律レベルに移行するには、より高い分解能と迅速な応答を非常に短い時間で実現するために、いっそうの計算能力が必要となります。AI 技術のような機能を組み込む場合も、消費電力の大きな ADAS SoC プロセッサのニーズが高まります。TPS62876-Q1 ファミリのスタック対応能力は、より高い水準の自動運転の実現に向けて 100A を超えるコア電力を供給するのに役立ちます。

参考情報

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