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データの需要が増加するにつれて、サーバーとデータ・センタの需要も増加し、電力の需要も増加します。業界のトレンドを見ると、ラックあたりの電力が 2020 年の時点で 4kW であるのに対し、2025 年には最大 20kW に達することが示唆されています。

データ・センタやサーバーが利用できる物理的な施設の面積に制限がある以上、より狭い面積でより多くの電力を供給することが望ましいのですが、この要件はサーバー電源アーキテクチャ内の電力密度を高めることを意味します。また、サーバー電源の効率を向上させることも、冷却コストの削減に役立ちます。

私たちの身の回りにある事実上あらゆるものが、データを必要とし、データ・ドリブン、つまりデータに基づいて動作するようになっています。図 1 に示すように、これらのデータの保存と処理はすべて、データ・センタ内のサーバーで実行されます。

 図 1:データ接続型エコシステム

さまざまな処理要件に対応し、高いシステム可用性を維持するために、サーバーは通常、スケーラブルかつホット・スワップ可能です。シームレスなホット・スワップ機能を実現できるように、サーバーのマザーボードとパワー・ディストリビューション・ボードは、ホット・スワップ・コントローラまたは eFuse を採用しています。サーバー電源内にある eFuse のような部品は、サーバーの電力要件の増大に対応するために、より多くの電流を流す必要があります。また、サーバー内にある最新のマイクロプロセッサのピーク処理能力向上に対応できるように、ホット・スワップや eFuse のような保護デバイスは、大きいピーク電流に対処する必要もあります。図 2 に、サーバー電源の代表的なアーキテクチャを示します。

 図 2:サーバー電源の代表的なアーキテクチャ

従来の大電力サーバーの設計では、複数の MOSFET (金属 - 酸化膜 - 半導体の電界効果トランジスタ) を搭載したホット・スワップ・コントローラを採用していました。ただし、サーバーの電力要件と電力密度要件は、指数的に増加しています。これらのニーズに対応し、設計を簡素化するために、サーバー電源アーキテクチャで『TPS25985』(80A ピーク) と『TPS25990』(60A ピーク、PMBus インターフェイス搭載) の各 eFuse を採用をご検討ください。『TPS25985』と『TPS25990』はそれぞれ 60ADC と 50ADC に対応でき、調整可能な電流制限もそれぞれ最大 60A と 50A に設定できます。より大きい電流に対応できるように、『TPS25985』と 『TPS25990』の各 eFuse を、数の上限なしで複数スタックすることも可能です。

高い電力密度を達成

最新のサーバー電源ユニット (PSU) にとって、電力密度は不可欠な要件の 1 つです。最新世代のサーバー PSU は、3kW (12V で 250A) 前後の電力定格に達しています。eFuse を選定する場合、最小サイズで最大電流を流せる製品を選ぶことが重要です。『TPS25985』は、4.5mm x 5mm のパッケージで、80A のピーク電流に対応できます。図 3 に、TI のいくつかの eFuse を示します。

 図 3:さまざまな電力密度に対応する TI の eFuse

『TPS25985』と『TPS25990』の各 eFuse は、1 個の MOSFET、1 個の電流モニタ、1 個のコンパレータ、アクティブ電流共有機能、1 個の温度モニタを統合しているので、プリント基板またはプリント配線基板 (PWB) の全体的な面積を大幅に縮小できます。これらの eFuse を複数個接続すれば、さらなるボード面積の節減と電力密度の向上を実現できます。図 4 に、『TPS25985』と『TPS25990』の電流密度を、市場で入手できる他の eFuse と比較した結果を示します。

 図 4:電流および電力密度の比較

電流共有と電流モニタの精度

複数の MOSFET を並列接続した場合、ホット・スワップ・コントローラを使用してそれらの MOSFET のゲートを非常に高い精度で制御することは不可能です。したがって、並列接続した複数の MOSFET による電流共有は、高精度ではありません。電流共有の精度や電流モニタの精度を向上させるために高精度アンプが役に立つこともありますが、アンプを追加するとソリューション全体のサイズが大きくなります。MOSFET のダイ温度を測定するのは困難なので、過渡と定常状態の各条件下で過熱保護を保証することは不可能です。図 5 に、『TPS25985』の主要なピンと機能を示します。

 図 5:主な差別化機能を強調した『TPS25985』のピン配置

『TPS25985』と『TPS25990』の各 eFuse はアクティブ電流共有機能を搭載しており、MOSFET のダイ・パラメータ (電圧、電流、温度) に直接アクセスすることもできます。そのため、すべての eFuse のゲートを並列接続して高精度で制御することや、内蔵 FET のダイ温度を高精度で監視することができます。アクティブ電流共有なしで 1 個の eFuse を使用する場合に比べると、『TPS25985』と『TPS25990』を採用することで、設計エンジニアは eFuse の数とシステムの性能を最適化できます。

統合型電流モニタは、PSYS/PROCHOT を使用してサーバー・プラットフォームの電源管理能力を強化するので、プラットフォームの計算スループットと電源利用率を最大限に高めるのに役立ちます。また、これらの機能はフロント・エンドの AC/DC 電源の最適化にも役立ち、システム・コストの削減につながります。加えて、調整可能な過渡電流ブランキング・タイマを搭載しているので、誤検出によるトリップを防止し、システムの信頼性と全体の可用性を向上させることができます。

リモート監視とリモート制御

『TPS25990』を採用すると、システムに PMBus インターフェイス機能を追加できます。単一のコマンドで電源サイクル (電源オフと電源オン) を実施でき、電源オンまでの遅延時間が調整可能であるため、システム設計エンジニアはシステムのシーケンシングとリセットをリモート実行できます。また、『TPS25990』はブラック・ボックス機能も備えており、7 つの事象を相対時刻のタイムスタンプとともに記録できます。『TPS25990』は高速 A/D コンバータを搭載しているので、デジタル・オシロスコープを使用している場合と同様に、ユーザーは 1 つの信号を選択してプロットすることができます。『TPS25990』向けの GUI を、この製品の他の機能と組み合わせることで、設計エンジニアは全体の開発期間を短縮できるだけでなく、現場で発生した問題の特定と解決を迅速に進めることができます。一般的に、これらの問題の再現と解決は非常に困難です。

熱に関する検討事項

サーバー電源システムは広い周囲温度範囲 (–40℃ ~ 85℃) で動作しますが、ホット・スワップ・コントローラや eFuse は、さらに高い周囲温度にさらされます。したがって、小型パッケージで大電流を取り扱う場合、電源設計エンジニアにとって、これらのデバイスの熱特性が懸案になります。『TPS25985』と『TPS25990』の各 eFuse は、接合部温度が 125℃ でも動作するので、この懸案の軽減に役立ちます。『TPS25985』と『TPS25990』の RDS(on) はそれぞれ、0.59mΩ と 0.79 mΩ です。プロセス、電圧、温度に起因する RDS(on) のばらつきや分散は限定的です。したがって、これらの eFuse の自己発熱は非常に小さく、ディレーティングの必要なしで、広い動作温度範囲に対応できます。図 6 に、『TPS25985』のケース温度を示します。

 図 6:VIN = 12V、IOUT = 50A、Tamb = 25℃ のときの『TPS25985』のケース温度

まとめ

設計エンジニアは、サーバー電源アーキテクチャ内で『TPS25985』と『TPS25990』の各 eFuse を使用することで、設計期間を短縮し、設計コストを削減できます。これらの eFuse は RDS(on) が小さいので、システム内の電力損失が小さくなり、データ・センタが効率に関する目標を達成しやすくなります。電力密度を向上させると、データ・センタの処理能力も向上し、エンド・ユーザーはデータ接続型デバイスを使用するときにシームレスな使いやすさを体感できます。診断機能や構成機能の搭載、スケール化への対応といった eFuse の特長を活かすことで、データ・センタはダウンタイムを最小化し、継続的なサービスを維持するとともに、顧客に対するアップタイムの保証をより高いパーセンテージで提示することができます。

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※上記の記事はこちらの技術記事(2022年10月3日)より翻訳転載されました。
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