バッテリ動作デバイスの増加に伴い、世界各地でより高性能で低コストのバッテリやバッテリ パックの需要が高まっています。バッテリ メーカー各社は新しいケミストリーの導入とバッテリ パックの小型化を進めていますが、これらは電源要件に対して、新しく複雑な制約を課すことになります。その一方で、基本的な機能は従来と同じままです。現在のバッテリは、システム性能を犠牲にすることなく、動作時間を最大化し、保管期間を延長できる必要があります。

低待機電力。迅速な応答時間。小さなフォーム ファクタ。

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消費電力を低減する際は低静止電流 (IQ) を最小化することが優先事項であり、結果としてバッテリ動作時間を延長できます。デバイスのIQ とは、デバイスがスタンバイ モードまたは軽負荷動作状態であるときにバッテリから引き出す電流、言い換えるとデバイスの消費電流を意味します。IQ はデバイスの効率に大きな影響を及ぼす可能性があります。バッテリ動作アプリケーションが無負荷または軽負荷の条件下で高効率を達成するには、出力を厳密に安定化しながら超低消費電流を維持できるようなパワー マネージメント ソリューションが必要となります。

 

現在の多くの設計では、ナノアンペア (nA) 単位の非常に小さな IQ が求められます。電気自動車 (EV) から、電動工具、ヘッドセット、ヘッドホン、小型イヤホンに至るまで、長時間のスタンバイ動作を必要とする多様なアプリケーションにとって、このような低静止電流は重要です。また、この種のシステムは 99% 以上の時間をスタンバイ モードで過ごすため、スタンバイ モードまたはスリープ モードでの IQ がバッテリ動作時間の制限要因となる可能性があります。

 

DC/DC コンバータ、低ドロップアウト レギュレータ (LDO)、パワー スイッチ、電圧リファレンス、スーパーバイザ、バッテリ管理デバイスなどの各種パワー マネージメント ビルディング ブロックを最適化すると、低消費電力を実現し、バッテリ動作時間を延長することができます。

 

この記事では、TI の IQ テクノロジーを活用し、性能を犠牲にせずにバッテリ動作時間と保管期間を延長する 3 つの方法を説明します。

 

常時オンの低消費電力を実現

超低リーク プロセス テクノロジーと斬新な制御トポロジーを活用し、長いバッテリ動作時間を実現できます。システムがスタンバイ モードに移行した状態で IQを達成すると、バッテリ動作時間を延長できます。
1 で、スーパーバイザである TPS37-Q1 は EV のバッテリ監視機能で 1μA (代表値) の IQ を実現すると同時に、監視電圧領域や応答時間を犠牲にすることなく、65V までの範囲で電源電圧の監視を引き続き実行することができます。

1TPS37-Q1 による 12V/48V バッテリ電圧の直接監視

シップ モードの IQ が10nA の BQ25155 のようなバッテリ チャージャ IC は、たとえ保管期間が数か月から数年にわたる場合でも、バッテリの消耗を確実に防止するのに役立ちます。25nA の超低 IQ や、わずか 3nA のシップ モード IQ を達成する TPS7A02 のような低消費電力レギュレータは、通常動作時とドロップアウト動作時にバッテリ動作時間を大幅に延長するのに役立ちます。

 

高速応答時間の実現

高速ウェークアップ コンパレータとゼロ IQ フィードバック制御により、低消費電力という特性を犠牲にせずに高速な動的応答を実現できます。エラーを検出したときに、コンパレータを即座に加速動作させることができるインテリジェントなバイアス印加方式は、IQ を増やさずに速度を高めるのに役立ちます。たとえば、図2では、275nA (代表値) の IQ を達成する降圧スイッチング レギュレータである TPS62843 を使用して、従来製品に比べて「応答時間 × IQ/ILOAD」が3倍以上改善されていることを示しています。加えて、TPS37-Q1 は業界でも非常に優れた応答時間と検出時間 (代表値で 8μs) を達成します。これは、業界の代替製品に比べて、2倍~10倍高速です。

図2TPS62843 の負荷過渡特性 (VOUT = 1.2VIOUT_MIN = 0A IOUT_MAX = 300mA)

フォーム ファクタの小型化

抵抗とコンデンサの面積節減手法により、静止電力に影響を及ぼさずに、スペース制約が厳しいアプリケーションへの統合が容易になります。次世代のナノパワー デバイスは、外付けのプルアップ/プルダウン抵抗や分圧抵抗回路の多くが不要となります。640μm x 64μm というチップ スケール パッケージサイズであるTPS7A02 のような超小型のフォームファクタ―を実現します。

 

基盤面積を小さくする別の方法は、より多くの機能を単一のダイに統合することです。この統合により、スーパーバイザ、リファレンス システム、低ドロップアウト レギュレータ (LDO)、バッテリ チャージャ、DC/DC コンバータのような複数のブロックが共通のビルディング ブロックを共有すると同時に、全体の IQ を低減することができます。BQ25125 は、2.5mm x 2.5mm の WCSP (ウェハー チップ スケール パッケージ) に封止されたバッテリ チャージャ管理 IC であり、I2C を使用して複数の IQ 機能を統合して柔軟に制御できます。この製品を採用すると、パワー マネージメント システム全体を複数の低消費電力アプリケーションに応用できるようになります。

 

まとめ

バッテリ動作アプリケーションの普及に伴い、システム性能を犠牲にせずに低静止電流 (IQ) を達成することは、困難な課題に思えるかもしれません。  しかし、必ずしもそうとは限りません。 IQ テクノロジーを採用した TI の製品ラインアップを活用すると、性能やコストのトレードオフなしで超低消費電力を達成し、次期バッテリ動作設計でバッテリ動作時間の最大化と保管期間の延長を実現することができます。

 

参考情報

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