電源のレイアウトは、優れた電源設計を実現するうえで最も重要な要素の1つです。レイアウト方法についての考え方や、その方法が最適だとする根拠は、設計者によって異なります。そのような設計者により異なる様々なソリューションも、実際には問題なく機能するでしょう。よほど乱雑なレイアウトにしない限り、おそらく電源は動作します。
ただし、次に示すような共通のルールもいくつか存在します。
- 影響を受けやすい信号のパターンを高速スイッチング信号の下に配置しない、つまりスイッチ・ノードの下に帰還パターンを配置しない。
- 電源供給用のパターンおよびプレーンは、電源電流に十分対応できる大きさにする。
- グランド・プレーンは、できる限り1枚の連続したプレーンにする。
- プレーン間を接続するのに十分なビアを使用する(通常は1A/ビアが初期設定として最適)。
これらの基本的なレイアウト・ルールに加え、私が必ず最初に実施しているのは、まずスイッチング・ループを特定し、次にどのスイッチング・ループに高周波数のスイッチング電流が流れているかを確認することです。図1に、降圧電源用の単純化したパワー・ステージの例(回路図とレイアウト)を示します。
図1: 降圧電源の回路図とレイアウト
降圧電源には2つの状態(連続導通モードの場合)があり、制御スイッチ(Q1)のオン/オフによって切り替わります。制御スイッチがオンのとき、電流は入力側からインダクタに流れます。制御スイッチがオフのとき、電流��インダクタからダイオード(D1)に流れます。この電流は、そのまま出力側に流れます。
しかし、入力側にはパルス電流があり、これがレイアウトの中で注意すべき部分となります。図1では、このループを“High Frequency Loop”とし、青色で示しています。このレイアウトでの第1の目的は、Q1、D1、および入力コンデンサを、できる限り短い低インダクタンスのループで接続することです。このループを小さくすることで、スイッチングにより生じるノイズを最小限に抑えることができます。これを怠ると、電源がうまく機能しなくなります。
スイッチング・ループを特定するための手順は、すべての電源トポロジに適用できます。この手順の各ステップを以下に示します。
- オン状態時の電流パスを特定する。
- オフ状態時の電流パスを特定する。
- 連続電流が存在する場所を見つける。
- 不連続電流が存在する場所を見つける。
- 不連続電流のあるループを最小化する。
以下のリストには、各パワー・ステージ構成におけるクリティカルなループを示します。
- 降圧 - 入力コンデンサ・ループ。
- 昇圧 - 出力コンデンサ・ループ。
- 反転型昇降圧 - 入力および出力コンデンサ・ループ。
- フライバック - 入力および出力コンデンサ・ループ。
- Fly-Buck™ - 入力コンデンサ・ループ。
- SEPIC - 出力コンデンサ・ループ。
- Zeta - 入力コンデンサ・ループ。
- フォワード、ハーフ・ブリッジ、フル・ブリッジ - 入力コンデンサ・ループ。
電源のレイアウトとは、言わば芸術表現の一形態です。レイアウトの方法は人それぞれであり、ほとんどの場合はそれで問題ありません。ただし、パワー・ステージ用の部品を配置するときだけは、必ず高周波数のスイッチング・ループを特定するように心掛けてください。いずれは設計にかかる時間が節約できるようになり、悩みも解消するはずです。
その他のリソース
- このトピックの詳細については、最新のEE Times Power Tipの投稿記事、『Multiphase Power Supplies: Not Just For High Current』を参照してください。
- DC/DC降圧レギュレータを設計するうえで放射EMIを低減するためのレイアウトのヒントについては、こちらのビデオをご覧ください。
- こちらの電源関連のトピックをご確認ください。
- Power Tipsのビデオを視聴し、設計上の課題にお役立てください。
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