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ボード線図は、動的システムの安定性を判断する方法としてよく用いられますが、ボード線図が安定性を直接的に示さない場合もあります。

図1に、TIのTPS 40425同期降圧型コンバータのボード線図を示します。このアプリケーションでは、降圧型コンバータの出力段にπ型フィルタが使用されています。

1 出力段にπ型フィルタがある降圧型コンバータのボード線図

π型フィルタで使用されるフェライト・ビーズは負荷電流によってインダクタンスが変化するため、異なる負荷条件で測定されたボード線図は大きく変化します。アイドル時に測定されたボード線図は、ゲイン0dbを複数回通過します。この場合、位相余裕とゲイン余裕の基準を適用することは困難です。その代わりに、ナイキスト安定判別法を使用しました。

ナイキスト安定判別法では、s = jωとし、直交座標系で開ループ・システムのナイキスト線図に注目します。開ループ・システムの伝達関数をF(s)とした場合、ナイキスト線図はωを-∞から+∞まで変化させた伝達関数F(jω)のグラフになります。安定性は、グラフが点(-1,0j)の周囲を回転する回数に着目して決定されます。F(s)によるグラフが(-1,0j)の周囲を反時計方向に回転する回数が、F(s)の右半面にある極の数と等しい場合、系は安定しています。この例では、降圧型コンバータが右半面に極を持たない場合、(-1,0j)の周囲を回転する回数が安定性の指標となります。

ナイキスト線図は、測定されたボード線図から導くことが可能です。まずデータを保存します。使用するアナライザからは、図2に示すように、デシベル単位の大きさ(Magnitude)と度単位の位相(Phase)が得られます。別の周波数アナライザでは、フォーマットは異なります。データを複素数で与える周波数アナライザもあります。

2:ボード線図測定で周波数アナライザにより保存されたデータ

式1により、大きさと位相を複素数に変換します。

(1)                                                                                                                                                

ここで、Mnとθnは、s = j2πfnとして測定したF(s)の大きさと位相です。

式1を適用して複素数を直交座標系にプロットしました。図3に示すグラフは、周波数が100Hzから1MHzまでの範囲のものです。これは0Hzから+∞Hzまでのグラフをよく近似しています。-∞Hzから0Hzまでのグラフは、100Hzから1MHzまでのグラフを直交座標内で水平に折り返したものです。この-∞Hzから0Hzまでの部分を図3に追加し、図4を作成しました。

3:周波数100Hzから1MHzまでのボード線図から得られたナイキスト線図

4-1MHzから-100Hzまでと、100Hzから+1MHzまでのボード線図から得られたナイキスト線図

系の安定性に最も関連するのは、ユニティ・ゲインの円の周辺のパスです。ユニティ・ゲインの円の近傍を拡大しました。この系は電圧モードの降圧型コンバータですので、DCゲインは90dB以上で、位相は0度から始まります。図5に示すように、低い周波数部分のグラフを完全なナイキスト線図の中で近似可能になります。

5-∞Hzから+∞Hzまでの近似されたナイキスト線図(アイドル時)

-∞Hzから矢印を追っていけば、このナイキスト線図は点(-1,0j)の周囲を回転していないことが分かります。系は安定しています。半径0.766、中心(-1,j0)の青い円を描きました。ナイキスト線図がこの円の内部に侵入しなければ、位相余裕は45度より大きく、ゲイン余裕は12dBを超えます。

同じ手順を用いて、図6に、全負荷時のナイキスト線図を示します。矢印を追えば、ナイキスト線図が点(-1,0j)の周囲を回転しないことが分かります。また、このナイキスト線図も、先ほど示した安定円の外部を通ります。

6-∞Hzから+∞Hzまでの近似されたナイキスト線図(全負荷時)

ボード線図が安定性を直接的に示していない場合は、ナイキスト線図の使用を検討しましょう。このブログでは、測定されたボード線図をナイキスト線図に変換する方法とナイキスト安定判別法を用いて系の安定性を判断する方法についてご紹介しました。

追加資料:

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2017/02/15/power-tips-how-to-use-nyquist-plots-to-assess-system-stability

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