ほとんどのシステムでは、電源レールの電圧降下を防止するために複数のコンデンサが採用されています。システム電源投入時には、これらのコンデンサが充電されることから、対策を講じていないと、突入電流によるシステム・トラブルが発生する可能性があります。
図 1 は、電源(DC/DC、LDO、外部電源)を用いてダウンストリーム負荷に電圧を供給するシステムの一例を示します。
図 1:一般的な配電システム
システムが起動すると、電源が安定化電圧まで上昇します。電圧が上昇するにつれ、未充電のコンデンサに突入電流が流れ込みます。この突入電流は、容量性負荷を電源レールに接続し、電源電圧レベルまで充電する必要がある場合にも、発生する可能性があります。コンデンサに流入する突入電流の量は、電圧立ち上がり傾斜によって決定し、次式1で表されます:
ここで、IINRUSH はキャパシタンスに起因する突入電流の量であり、C はトータル・キャパシタンス、dV は立ち上がり時の電圧変化量、dt は電圧立ち上がり時の立ち上がり時間を表します。
突入電流に伴う問題
突入電流に関する主な問題点は 2 つあります。ひとつは、回路基板上の配線や部品の絶対最大電流定格を超える心配があることです。すべてのコネクタと端子ブロックには各々に電流定格があり、それを超えると、これらの部品に損傷を与える可能性があります。同様に、回路基板の配線も所定の電流伝送能力を想定して設計されており、突入電流による損傷の危険性があります。
最大突入電流を想定して設計すると、回路基板の配線が太くなり、より耐久性の高いコネクタを使用しなければならず、設計全体のサイズとコストが増加します。突入電流を低減すれば、より小型、低コストで最適な配線とコネクタの利用が可能になります。
もうひとつの問題は、既に安定化した電圧レールに容量性負荷が投入された時に発生します。コンデンサの充電に必要な突入電流量を電源が賄いきれない場合、その電源レールの電圧が引き下げられます。図 2 にこの挙動を示します。
突入電流への対処法:TPS22965 アプリケーション
負荷キャパシタンスに加わる電圧の立ち上がり時間を長くし、コンデンサの充電速度を下げることで、突入電流を低減することができます。テキサス・インスツルメンツのすべてのロード・スイッチ(TPS229xx 製品)の特長は、突入電流を低減するために出力スルー・レートを制御している点です。図 3 はロード・スイッチ用の一般的なアプリケーション回路を示します。
図 3:一般的なロード・スイッチ用アプリケーション回路
図 4 は降圧コンバータを使用して 5V 電源を 1.8V に降圧するシステムを示します。1.8V レールに電源投入した後で、100µF のキャパシタンスがシステムに印加されます。
図 4:スルー・レート制御を行っていないシステムのブロック図
立ち上がり時間を制御せず、スイッチが突入電流の制御を行わない場合には、図 5 に示す結果になります。
図 5:スルー・レート制御を行わない場合の突入電流と電圧降下
図 6 のシステム構成は TPS22965 ロード・スイッチが(立ち上がり時間の制御により)容量性負荷のスイッチを行っている以外は同じです。図 7 はこのシステムに対応する波形を示します。
図 6:TPS22965 を使用したシステムのブロック図
図 7:スルー・レート制御を行った場合の突入電流と電圧降下
立ち上がり時間を制御することで、電源電圧降下を防止し、突入電流を管理可能な量まで低減しています。
キャパシタンスが大きいと突入電流が発生して、デバイスの損傷やシステムの不安定化などの望ましくない挙動につながります。テキサス・インスツルメンツのロード・スイッチは、突入電流管理のための小サイズでコスト効率の高いソリューションを提供します。
その他のリソース
- ブログ記事(英語):What is a load switch?
- アプリケーション・ノート(英語)
- TI のロード・スイッチ製品ラインアップ.
上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。
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