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ローカル (衛星内) データ処理量の大幅な増加、よりスループットの高い通信リンクへの対応、電気推進システムの急速な採用増加に伴い、人工衛星は、より高性能な電源システム (EPS) が求められるようになっています。EPSは衛星のバス セクション (基本動作に必要な機器) の一部です。このセクションは、構造的な土台となるほか、電源、放熱管理、通信、推進などの各サブシステムを格納しています。EPS は、電力の発電、蓄積、レギュレーション、および他のすべてのサブシステムや衛星に搭載されたペイロードへの配電を行います。

宇宙ミッションに固有の課題と制約により、サイズ、重量、電力 (SWaP) を最適化することが必須です。衛星の設計でSWaPがそのような重要事項となるいくつかの理由を、以下に示します。

  • ミッションの要件:データ送信レート、分解能、感度などの要件が、衛星のSWaP要件に影響を及ぼす場合があります。
  • 打ち上げの制限事項:衛星には、サイズの制約、重量の制約、打ち上げコストの制約が課されており、意図している衛星軌道に応じて、コストは1kg あたり1,000ドルから10万ドルにまで達します。
  • 発電:衛星は一般的にソーラー パネルに依存しており、パネルのサイズと重量に応じて発電量に制限が生じます。また、発電能力はバッテリなどの部品のサイズと重量に影響を及ぼし、配電系や放熱管理などの機能にも影響します。
  • 動作効率:SWaPを最適化すると、宇宙で衛星がより効率的に動作するようになり、その結果、性能の向上とミッションの寿命延長を達成できます。

衛星にとって電力は最も貴重なリソースの 1 つであり、EPSの効率を最大化すると、ミッションの寿命延長、質量と体積の低減、放熱管理オーバーヘッドの最小化に役立つ可能性があります。

多数の電源トポロジを採用しているため、EPSでは効率に加えて、広い範囲の電圧と電流を取り扱うことも必要になります。図1に、最も一般的なトポロジのいくつかを示します。

1:衛星の電源アーキテクチャで一般的な電源トポロジ

図2に示している、一般的な衛星向けEPSの部品と機能は以下のとおりです。

  • ソーラー パネル (エネルギー生成用)大半の衛星にとって、主要な電力源はソーラー パネルです。
  • バッテリ (エネルギー蓄積用)太陽光が当たる時間帯に、ソーラー パネルが発電した電力のうち余剰分をバッテリに充電しておき、太陽光が当たらない時間帯や、ソーラー パネルが十分な電力を発電できないときに、蓄積しておいた電力を衛星に供給します。
  • パワー コンディショニング ユニット (PCU)PCUは、ソーラー パネルやバッテリの出力電力に対するレギュレーションを実施し、安定的で一貫した電圧と電流を衛星の他の部分に供給します。
  • パワー ディストリビューション ユニット (PDU)PDUは、ソーラー パネルが発電した電力やバッテリが放電した電力を、各種サブシステムや衛星に搭載されたペイロードに配電します。
  • バックアップ電源:メインEPSが故障した場合、メイン システムが復旧するまでの間、非常に重要ないくつかの機能を維持するためにバックアップ電源が役立ちます。

2:標準的な衛星向けEPS

この種のシステムで、SWaPに関連した設計の課題を最適化する 方法の1つは、PWM(パルス幅変調) コントローラを使用することです。たとえば、耐放射線強化の TPS7H5001-SP (100kradの総照射線量 (TID)、75MeV⋅cm2/mg) および耐放射線特性の TPS7H5005-SEP (30~50kradのTID、43MeV⋅cm2/mg) の各コントローラ ファミリを採用すると、さまざまなミッションや衛星軌道を対象としたEPSの多くの回路に、一般的な電源アーキテクチャを使用できるようになります。

衛星向け電源システムでSWaPを最適化しようとするエンジニアを支援するために、以下の各リファレンス デザインは宇宙グレードのPWMコントローラを採用し、EPSのほか特定のペイロード ボードを含め、衛星全体で使用できる各種電源回路を提示しています。

  • 絶縁型フライバックのデザイン:
    • 22V ~ 36V入力、5V出力をサポートし、電力段にGaN FETを使用した、100W絶縁型同期整流フライバック トポロジ。
    • このデザインは、単一出力のみを必要とする電源トポロジ向けに最適化されています。
  • 非絶縁型、大電流、2相、降圧のデザイン
    • このデザインは、TPS7H5001-SPコントローラを使用し、11V ~ 14V入力、1V出力で、電力段にGaN FETを使用した、単相同期整流降圧トポロジで構成されています。このデザインは、最大20Aに対応でき、DCとACの厳格な公差を維持します。
    • このデザインに手を加えると、大電流 (50A超) と低い入力電圧 (1V以下) を必要とするペイロード設計向けに最適化したマルチフェーズ ソリューションを製作し、高度なFPGA(フィールド プログラマブル ゲートアレイ) やマルチコアCPU(中央演算装置) のコア レールに電力を供給することができます。

まとめ

衛星にとって電力は最も貴重なリソースの 1 つであり、EPS(電源システム) アーキテクチャは衛星の設計全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。TIの放射線検証済み PWMコントローラ ファミリは高効率を実現するほか、広い範囲のトポロジや、多様なミッションと衛星軌道に導入可能なアーキテクチャに対応できます。

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