現在、エレクトロニクス業界の注目度が極めて高い「USB Type-C」(図 1)。これは、「USB Implementers Forum」によって 2014 年 8 月に標準化された新しい規格だ。データ伝送に使うケーブルとコネクタに関する規格であり、既存の USB 3.1 規格に追加される形で登場した。
注目度が極めて高い理由はUSB 3.1 規格を「大幅に強化」している点にある(図 2)。強化点は大きく 3 つある。1 つは、コネクタの形状/構成に工夫を凝らしたことである。リバーシブル・タイプのコネクタで、裏表を逆に挿してもデータ伝送が可能である。
図 2 表裏の区別のない接続が可能に
信号端子の配置を工夫することで実現した。プラグの逆接続を認識し、自動的に対応する。
2 つ目は、最大データ伝送速度が 10G ビット/秒の USB データのほかに、DisplayPort や HDMI、MHL といった規格に対応したビデオ信号の伝送にも利用できることだ。それを可能にするのが「オルタネート・モード(Alternate Mode)」である。USB データを伝送する高速ラインの 1 本、もしくは 2 本を転用して、他の規格のビデオ信号を送る。
3 つ目は、供給可能な電力が大きいことだ。新たに「USB Power Delivery(PD)プロトコル」を導入することで、供給可能な電力を 100W(20V、5A)に引き上げた。USB 3.0 規格では最大 9W にすぎず、スマートフォン/タブレット端末向け高速充電規格「Quick Charge 2.0」でも最大 24W(micro USB コネクタを利用した場合)だった。
USB Type-C を利用すれば、データ信号とビデオ信号、電力のすべてを 1 本のケーブルで伝送できるようになる。ユーザーの利便性が格段に向上するのは間違いない。そのため、既にノート・パソコンやスマートフォン、タブレット端末で採用が始まっている。今後、採用数は急速に増加するだろう。
対応チップが登場
この USB Type-C を実現するには、ケーブルとコネクタを新調するだけではなく、電子機器本体に半導体チップを追加する必要がある。どのような半導体チップが必要になるのか。以下で説明しよう。
ビデオ信号や 100W の電力を送らずに、USB データのみを伝送する USB Type-C コネクタ機能を実現する場合は、構成チャネル(CC:Configuration Channel)・コントローラとマルチプレクサ(MUX)・スイッチを使えばよい。ビデオ信号や 100W の電力を送る機能を有効にするには、信号マッピングに使うデータ用 MUX スイッチと PD(Power Delivery)コントローラの追加が不可欠になる。
こうした用途に向けた半導体チップが、既に製品化されている。例えば、テキサス・インスツルメンツ(TI)が市場に投入している『TPS65982』と『HD3SS460』を使えば、DisplayPort ビデオ信号の伝送と大電力の供給に対応した USB Type-C コネクタ機能を実装できる。
オルタネート・モードにも対応
『TPS65982』は、PD コントローラ IC である。USB Type-C に対応した接続プロトコルを処理する構成チャネル(CC)用ロジックを集積した。PD メッセージのハンドシェーキングを管理したり、電力の供給やビデオ信号伝送といった拡張機能を有効にしたりする機能を担う。さらに、パワー MOSFET を集積しているため、USB Type-C コネクタ経由の電力供給を制御することが可能だ。外付けのパワー MOSFET を制御する機能も備えているので、最大 100W(20V、5V)の電力供給もサポートできる。
『HD3SS460』は、クロスポイント・スイッチ IC である。USB Type-C コネクタの向きと接続モードに応じて、USB データ信号と電力給電(PD)の経路を有効にする。接続モードは、ケーブルでつなげる 2 つのシステム間の PD コントラクトによって決定され、その結果、供給電力とデータの役割が決まる。なお、拡張機能を有効にしても、USB Type-C コネクタは USB データ伝送という基本機能を失わない点に注意してほしい。
PD メッセージを取得できない場合は、USB 経由でオルタネート・モードに対応したデバイスを識別しなければならない。これを可能にするのが USB の新しいデバイス・クラスである「USB Billboard」だ。USB ホストは、オルタネート・モードを有効にできない場合や、アップデートできない場合に USB Billboard にアクセスする。そうすることで、動作に必要な電流モードを指定できようになる。USB Billboard は、オルタネート・モードへの対応が求められる USB Type-C デバイスには実装しなければならない。TI の PD コントローラ IC である『TPS65982』は、USB 2.0 エンドポイントを集積しており、それによって USB Billboard をサポートしている。
4 つのアプリケーション例
『TPS65982』と『HD3SS460』を組み合わせることで、USB Type-C が備えるすべての機能を提供できる。すなわち、これまで以上の電力供給とオルタネート・モードへの対応が可能である。この組み合わせを実際に適用したアプリケーションの例を以下に 4 つ挙げよう(図 3)。
図 3 システム構成例
1.USB Type-C ポート付きノート・パソコン/タブレット端末。USB デュアルロール・データとデュアルロール・パワー、DisplayPort 対応ビデオ出力に対応。
2.USB Type-C ポート付きドッキング・ステーション。USB USP(Upstream facing port)と電源、DisplayPort シンクに対応。
3.DisplayPort と USB に対応したドングル・タイプのポート・エクステンダ。USB USP と電源、DisplayPort シンクに対応。
4.USB Type-C ポートをサポートした DisplayPort モニタ・ディスプレイ。USB USP と電源、DisplayPort シンクに対応。
TI は、USB Type-C システムの設計の迅速化をサポートする評価モジュール(EVM)として『TPS65982-EVM』や、『HD3SS460EVM-SRC』『TUSB320EVM』などを提供している。この他、USB Type-C ドック向けのリファレンス・デザイン『TIDA-00630』もある。
【関連リンク】
- USB Type-C ソリューションの概要
- PD コントローラ IC 『TPS65982』
- クロスポイント・スイッチ IC 『HD3SS460』
- USB Type-C CC(コンフィギュレーション・チャネル)ロジックとポート制御を提供する『TUSB320』
- 評価モジュール『TPS65982-EVM』
- 評価モジュール『HD3SS460EVM-SRC』
- 評価モジュール『TUSB320EVM』
- USB Type-C ドック向けのリファレンス・デザイン『TIDA-00630』
(2015 年 10 月 30 日 EDN マイクロサイト掲載の記事広告を転載。記事中の情報はすべて掲載時点のものです)
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