USB Type-C は、USBケーブルの両端を単にひっくり返すだけではなく、交換可能にしたことでUSBのエコシステムを大きく変えました。このことは、他のどのようなUSBデバイスを接続するのかにもよりますが、ノート型パソコンやスマートフォン(スマホ)のようなUSBデバイスに異なる特長を持たせることができるようになります。それは、データ・ロールと電力ロールをそれぞれ別々に交換できるからです。USBインプリメンターズ・フォーラムは、USB Type-Cのバージョン1.2をリリースしました。この記事でまとめたバージョン1.1からの重要な変更点がいくつかあります。しかし、最大の違いは、この新しいUSBエコシステムを記述していた用語の変更です。USB Type-Cという用語がこのバージョンで再定義されたとも言えます。

この新しい用語は、新しいUSBの世界をよりよく表現しており、データ・ロールと電力ロールがお互いに直交関係にあることを明確に強調しています。言い換えれば、USBはこの新しい2次元エコシステムを完全に取り入れています。次の表には、押さえておくべき重要な用語が記載されています。

用語
意味
DFP
下向きポート(データ・ロール)
UFP
上向きポート(データ・ロール)
DRD
デュアル・ロール・データは UFPDFP (USB PDが必要) のいずれか
ソースのみ
電力をUSBコネクタ(電力ロール)VBUSピンに供給
シンクのみ
USBコネクタ(電源ロール)VBUSピンから電力を消費
DRP
デュアル・ロール電力は、ソースかシンクのいずれか
デフォルト・ソース
ソースのみ(電源ロール)に接続されない場合、ソースとして接続されるDRP
デフォルト・シンク
シンクのみ(電源ロール)に接続されない場合、シンクとして接続されるDRP

図1は多くの適応可能アプリケーデョンを分類し、次元グリッド上に配置しています。

図1 USB Type-Cバージョン1.2のアプリケーション例

USBパワー・デリバリは、データ・ロールを交換することができます。例えば、常に電源でありながら、DFP(ホスト)あるいはUFP(デバイス)のいずれかにもなる、DRD(デュアル・ロール・データ)が存在します。これとは対照的に、電源になっている間はDFP(ホスト)であるDRP(デュアル・ロール・パワー)システムもあります。しかし、電力をシンクしている間はデータをサポートしません。すべての適用可能なアプリケーションについては、別の記事で言及したいと思います。ここでは、データと電源の役割を分けて考えたいと思います。

最初の電力ロールとデータ・ロールは、Type-Cの頃から、関連性を維持しています。ソースとして初期化されるデバイスはDFPであるか、あるいはデータを扱えず、UFPとして初期化できない可能性があります。同様に、シンクとして初期化するデバイスはUFPであるか、あるいはデータを扱えません。最初の接続後、データ・ロールを交換するには、USBパワー・デリバリのメッセージDR_Swapを使う必要があります。

USB Type-Cには、デフォルト・ソースおよびデフォルト・シンクと呼ばれる二つの特長があります。(バージョン1.2で、これらの特長が明確化されており、従来はそれぞれトライ・ソース、トライ・シンクと呼ばれていました)。このデフォルト・ソースの特長は、主に電力を供給するシステムに向けたものですが、時には電力バンクのようなシンク・パワー向けのものでもあります。この電力バンクは、ソースだけつながれていなかったり、バッテリが切れていたりする場合に、電力を供給するものです。このデフォルト・シンクの特長は、主に電力をシンクするスマホのようなシステムに向けたものですが、もしシンクだけのアクセサリにつながっていると、電力を供給することができます。これら二つの特長はダイナミックに活用できるため、バッテリの充電レベルなどの基準にもよりますが、システムはシンクのみ、あるいはデフォルト・ソースに変えることができます。次の表では、USB Type-Cデバイスのさまざまな種類の役割がまとめられています。

USB Type-Cバージョン1.2では他に何が新しくなったのでしょうか。表1にその他の変更点を示しています。

変更点
内容
最大ソースVBUS容量
ソースは未使用リセプタクルのVBUS上の容量を10µF 以上にしてはいけない。実際には、従来のType-Aポートでの突入容量
テストを今、全てのType-Cポートに適用する
アクセサリ・モードのデバッグ
普及していないType-Cモードを完全に精密検査済み
Cから従来のA ケーブルへ
初期のCからAへの従来ケーブルが不正確に作られた際、不適切な広報により、新規格ではケーブルを正しく造る方法を開示している
バイナリ周波数シフト・キーイング(BFSK) リファレンス
BFSKリファレンスは現存しないUSBパワー・デリバリ1.0規格を除去している
シンクは検出を切断
電圧が5V以上になるとシンクが切断をどのようにして検出するかを規定する。これは、パワー・デリバリのシンクにのみ適用
可能
IRドロップ(ケーブル内の電圧降下)の明確化
USBケーブルの電源・グランド配線の電圧ドロップ後に、シンクの電圧レベルがどれ位になるのかを明確化

最大のソースVBUS容量の変化については、説明する価値があります。それは、このUSBインターフェイスが従来のUSBとの互換性をどれほど確保しているのかを表します。従来のUSB Type-Aポートは、何も接続しない状態でも常にVBUS上で5Vです。その結果、USB Type-Bポートに接続すると、Type-BポートのVBUS容量に突入電流が流れます。USB Type-Bポートは、突入電流を制限するために長い間、10µF以上のコンデンサをおかなければなりませんでした。

リセプタクル(ソケット側)を持つUSB Type-Cシステムは従来のUSB Type-Aリセプタクルに接続できますので、USB-Type Cのリセプタクルは全てVBUS容量を10µF以下に制限しなければなりません。この要求がなくては、従来のUSB Type-Aシステムは突入電流を供給できず、内部の電圧レールは下がってしまいます。この電圧低下が過度に続くとブルー・スクリーンになるはずです。大きな突入電流もまた、何度も続くとコネクタを損傷してしまいます。

TIの最新のUSB Type-Cパワー・デリバリのデバイスである『TPS25740』と『TPS25740A』は共に最新のUSB Type-Cバージョン1.2に準拠しています。詳細はTIのUSB Type-Cソリューションのポートフォリオをご覧ください。

 参考情報:
・ブログ「USB Type-Cで静止時電流が重要な理由」
・設計のためのリファレンス・デザイン
 『USB タイプ C 5V/12V/20V コントロール・カード、リファレンス・デザイン
 『USB-C DFP、20V/3A 出力、ユニバーサル AC 入力、リファレンス・デザイン

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上記の記事はこちらのブログ記事201684日)より翻訳転載されました。
 
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