この2部構成のシリーズの第1部では、降圧型DC/DCコンバータの最大出力電流について説明しました。今回は、昇圧コンバータについて見ていきます。昇圧レギュレータの最大出力電流の計算は降圧の場合よりもいくらか複雑になりますが、それでもまだ単純です。
昇圧コンバータについて最初に理解すべきことは、平均インダクタ電流と出力電流が、降圧コンバータのようには等しくならないという点です。昇圧レギュレータもインダクタ電流を制御しますが、これはコンバータの入力電流のことであり、出力電流ではありません。このため、昇圧コンバータは通常、最大出力電流ではなく最大MOSFET電流で指定されます。
たとえば、LMR 62421は“2.1A昇圧型電圧レギュレータ”と呼ばれています。この値はMOSFETスイッチ電流を指したものであり、出力電流ではありません。次の式1を使って昇圧コンバータの最大出力電流を見積もることができます。
まずは、データシートで効率曲線を確認してアプリケーションで必要となる条件に近い効率曲線を見つけ、コンバータの効率であるηを見積もる必要があります。では、LMR 62421のデータシートを例に取り、データシートの情報(図1)を利用して5Vから12Vへの変換時の最大出力電流を求めましょう。
図1: LMR 62421のデータシートからの抜粋
図1のデータと入力および出力条件を式1に代入すると、次のように最大出力電流を計算できます。
この結果は間違っているように見えませんか?“2.1A”の昇圧コンバータから0.73Aしか得られないという結果は本当に正しいのでしょうか?計算結果は間違っていません。また、使用する昇圧コンバータを変えても結果は同じです。
この結果は、理解しにくいものではありません。どのようなDC/DCコンバータでも、入力電力と出力電力はほぼ等しくなります。入力電圧より出力電圧の方が高い場合、入出力の両側で電力が同じになるように、入力電流は、VOUT/VINと同じ程度の比率で出力電流を上回っていなければなりません。MOSFETでは入力電流が検知されることから、その定格は必要な出力電流を大幅に上回っていなければなりません。式1は、これと同じことを数学的に表したものであり、同時にコンバータの効率も考慮しています。
特定の昇圧レギュレータの最大出力電流を確認する方法や、特定の出力電流を持つ昇圧レギュレータを見つける方法は多少難しいので、TIのWEBENCH® Power Designerツールを利用するのが最適な方法です。WEBENCHツールが代わりにすべての計算を行い、要件に適したさまざまなコンバータを見つけてくれます。
その他のリソース
- 昇圧レギュレータの詳細については、アプリケーション・ノート『Working with Boost Converters』をご覧ください。
- 今すぐWEBENCH Power Designerで設計を開始しましょう。
- 今後の設計向けに、TIのDC/DCコンバータをご検討ください。
上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。
*ご質問は E2E 日本語コミュニティにお願い致します。