PSpice for TIを使用して複雑なアナログ電源および信号チェーン回路をシミュレーションする方法


多くのハードウェア技術者は、厳しいプロジェクト日程の中で結果を出すことを求められます。回路設計者やシステム設計者はすべてのツールを駆使して、正確で堅牢な設計を初回で正常に動くように作り上げなければいけません。このような要望や昨今の在宅勤務の増加もあり、リモートで使用できる回路シミュレーションおよび検証ツールの需要がこれまで以上に高まっています。

アナログ回路の設計とシミュレーション用のソフトウェア・ツールは、ほぼすべてのハードウェア技術者が日常的に利用しています。TIでは、Excelをベースにした単純な計算ツールから予想性能を視覚的に表現するものまで、ほぼすべてのTIデバイス・ファミリの設計を補助する多数の設計ツールを用意しています。WEBENCH® Power Designerは、無料のオンライン電力設計ツールです。このツールは基本的な入力・出力仕様を取り込んで、全回路図とBOM(部品表)をすばやく生成します。一般の電力設計には、このツールに含まれる基本的なSPICEベースのシミュレーション・プラットフォームで十分対応できます。また、より自由度の高いSPICEベースのシミュレーション・プラットフォームであるTINA-TIソフトウェアもあり、幅広いコンポーネントに対応しながら、多数のアナログ設計の必要を満たす基本的ユーザー・インターフェイスを備えています。

技術者は、設計のプロトタイプ開発段階や評価段階を削減し、場合によっては、最終的なプリント基板(PCB)の段階まで直接進もうとしますが、誰もが回路エラーのリスクは減らしたいはずです。高性能なアナログ・シミュレーション・プラットフォームのニーズが高まっています。TIは、ケイデンス・デザイン・システムズ社と協働し、業界標準のOrCAD PSpice環境の完全機能版であるPSpice® for TIの提供を開始しました。PSpice for TIを使用すると、簡単にサブシステム全体をシミュレーションして、コンポーネントの評価や検証が行えるようになります。 

シミュレーションの準備を始めましょう。

PSpice for TI 回路シミュレータを無償でダウンロード

SPICEシミュレーションを使用する理由

SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)は、ハードウェア設計の問題解決の有効な手段として何十年もの長い間、技術者に使われてきました。回路シミュレーションが使われるのは、主に次の3つのケースです。

  • デバイスの評価

アプリケーションにおいて特定の製品の性能を、場合によってはそのデバイスやアプリケーション回路の実物が供給される前に、測定できます。

  • 設計の検証

実際のプロトタイプを構築する前に、複雑な基板レベルやシステム・レベルの設計を構築・シミュレーションすることで、回路の信頼性が明確になり、設計期間の短縮につながります。設計の検証の際にワーストケース条件での回路の動作をシミュレーションできるので、製品のリリース後に温度や、電圧の上限下限、デバイスの公差といったパラメータが変わった場合でも、正常な動作が保証されます。

  • 設計のデバッグ

計画通りに進まないときに、エンジニアはシミュレーションを利用してシステムの問題点や脆弱性を突き止めることがよくあります。実際のPCBを作り直してテストを実行する代わりに、SPICEシミュレーションで問題を発見し、早い段階で回路の修正箇所を試験することができます。

これらの作業に回路シミュレーションを活用することで、開発期間が短縮され、より迅速に市場に投入できるようになります。また、コンピュータを利用するという、シミュレーション本来のメリットもあります。例えば、在宅勤務がますます一般的になっている今、シミュレーションを活用すれば、どこにいてもプロジェクトを大幅に進めることができます。部品やPCB、ラボ用機器などが届くまで待つこともなくなります。シミュレーションのテストベンチを組んで実行すればいいのです。

大規模システム・レベルのシミュレーションや設計のピア・レビューの場合には、チームの他のメンバーと回路シミュレーションをオンラインで簡単に共有することができます。パラメータまたは温度のスウィープ、感度解析、あるいはデバイスの公差の解析といった、より複雑なテストを実行することもできます。このような作業を実世界で行うと、コストも時間もかかるでしょう。

図1に示すシミュレーション設定では、コンデンサの値を段階的に変えながら、単一極の抵抗コンデンサ・フィルタ・ネットワークのAC伝達関数をプロットします。

1PSpice for TIの回路図とシミュレーション・プロファイルの例

 

図2は、プロット結果と、各プロットの-3dB帯域幅とゲイン(f = 1MHz時)の自動計測結果です。このようなパワフルな解析機能により、設計の最適化がスピードアップするでしょう。

2PSpice for TIのシミュレーション結果と測定結果

注意すべき点として、正しいシミュレーション結果を得るためには、デバイス・モデルが正確であり、素早く収束する(この場合は答えにたどり着くという意味)ことが前提となります。その点でもTIは、正確さと収束については半導体業界の中でも最上級のモデルを用意しており、新しいモデルの作成とモデリング機能全体の強化にも常に取り組んでいます。

 

PSpice for TIを使用する理由

PSpice for TIは、回路図キャプチャとアナログ回路シミュレーションの両方の機能を備えています。機能が限定された試用版とは大きく異なり、このバージョンのツールは最新リリースのPSpiceに基づいて作られ、オフラインで動作し、完全バージョンで開発されたプロジェクトとの互換性があり、TIのデバイスを使用するときにノードと測定値の数が無制限です。

TIのデバイスについて言えば、コンポーネント・モデルの標準セットに加えて、TIのモデルの完全なライブラリがPSpice for TIに組み込まれているので、数回クリックするだけでTIの部品をプロジェクトに追加することができます。TIのモデルを手作業でインポートする必要がないだけでなく、自動的にライブラリが更新されて、TIウェブサイトで供給中の最新のモデルと常に同じになるようになっています。

ほとんどのTIのデバイス・モデルには、完全にテスト済みの動作可能な設計例に加え、多くの場合、カット&ペースト可能な完全なリファレンス・デザインが付属します。そのため、すばやく開発を開始して、速やかにデバイスの動作や性能を確かめるのに非常に有効です。ツールを数回クリックするだけで、コンポーネントを配置して、関連のリファレンス・デザインを開くことができます。図3は、修正とシミュレ��ションのために用意されたこのような設計例のほんの一例です。この図では、アプリケーションの新しいダーク・モードと、カスタマイズ可能な配色も確認できます。この機能は消費エネルギーの削減になると同時に、疲れ目の軽減にも有効でしょう。

  

3TIのデバイスのリファレンス・デザイン例

さらに、技術者がよりすばやく設計判断を下せるように、TI製品の詳しい内容やデータシート、TI E2E技術サポート・フォーラムの関連する質問などに、このツールから簡単にアクセスできるようになっています。トレーニングビデオ(英語)のライブラリも、この環境の中で利用できます。

開発ワークフローにSPICEシミュレーションを導入し、開発期間の短縮に役立つPSpice for TIをぜひダウンロードしてご活用ください。

参考情報:

TIのリファレンス・デザイン
Power Stage Designer™ ソフトウェア・ツール
TI Precision Labs(英語)
WEBENCH® Power Designer
TINA-TI™

※すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。 
※上記の記事はこちらの技術記事(2020年9月14日)より翻訳転載されました。 
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