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リアルタイム制御とは、データの収集、そのデータの処理、およびシステムの更新を既定の時間枠内で行う閉ループ・システムの能力を指します。「『リアルタイム制御』の定義とその必要性」という記事の続編として、リアルタイム制御システムの最初の機能ブロックであるデータのセンシング (収集) を取り上げます。特定のセンサ・パラメータに注目し、リアルタイム制御システムのデータ・キャプチャを最適化する方法について、3 つのヒントを提示します。

モーターの位置や速度の監視、電気自動車 (EV) 充電ステーションの出力電力の制御、あるいは前方の停止車両に接近する際の車間距離の測定など、センサにはさまざまな用途があります。いずれの場合も、閉ループ・システムの安全性と性能に関係する重要な変数として、センサの速度、精度、信頼性が挙げられます。

ヒント 1:既定の時間枠内でデータの収集と通信ができるセンサを選択します

リアルタイム制御システムで、環境に急激な変化がある場合、センサの応答、変換、通信の速度が非常に重要になります。システムにおけるデータの収集と処理の速度が高速であれば、迅速に出力を更新して安定性と効率性を維持することができます。

一例として、バッテリー・セルの温度を 40 個以上のセンサで計測する EV のバッテリー・パックについて考えてみます。これらのセンサで取得したデータは、バッテリー・セルの安全な動作を維持するため、また、充電効率を最適化するために役立てられます。設計者が直面することの多い課題として、従来の負温度係数サーミスタを接続するポイント・ツー・ポイント・ケーブルでは、EV の重量が増え、コストがかさむことが挙げられます。

この課題を解決する方法として、図 1 に示すように、TI の『TMP1826』温度センサで採用されている 1 線式プロトコルを取り入れることで、必要なケーブルの本数を減らして全体的な重量を抑え、車両の効率性を高めることができます。

 図 1:電気自動車のバッテリー温度センサのケーブル本数の削減

ただし、1 本のバス上に複数のセンサがある場合、コントローラが既定の時間枠内にそれぞれの温度センサから新しい温度の読み取り値を照会できるよう、十分な通信速度を確保することが重要です。幸い、『TMP1826』などのデバイスでは、レガシー・アプリケーション向けの標準速度と、低レイテンシの通信向けのデータ・レート 90kbps のオーバードライブ・モードの両方がサポートされており、リアルタイム制御システムで各バッテリー・モジュールのセルの温度を適切に更新することが可能です。

ヒント 2:精度の高いセンサを選択し、ベスト・プラクティスに従うことで、外部での誤差を最小限に抑えます

リアルタイム制御システムには精密なフィードバックが必要であり、それを実現する最も簡単な方法は精度の高いセンサを使用することです。図 2 に示すような 6 軸ロボット・アームや協働ロボットなどのモーター制御システムを考えてみましょう。このようなロボットでは、組み立てプロセスの正確性や人間の介入が必要な場合の安全性を確保するため、モーター位置の精密なセンシングと制御が求められます。

高精度でモーター位置を把握できれば、機械的公差を小さくできる可能性があります。つまり、位置センサの精度が高いほど、設計に余裕ができます。『TMAG5170』のような高精度ホール効果位置センサを使用すると、モーター位置を高精度で監視しながら、角度の変化に迅速に対応できるため、リアルタイム制御処理ユニットでモーター位置を適宜修正することができます。

 図 2:多軸協働ロボット

高精度の測定を実現するには、設計上のベスト・プラクティスにも従う必要があります。また、システムの機械的欠陥やシグナル・チェーンに関連する誤差など、潜在的な誤差源についても考慮する必要があります。磁気センシングを使用するアプリケーションで高精度の角度フィードバックを必要とするリアルタイム制御システムについては、アプリケーション・ノート「Achieving Highest System Angle Sensing Accuracy (英語)」に記載されているガイドラインを参照してください。

ヒント 3:製品のミッション・プロファイルに基づいて、信頼性の高いセンサを選択します

リアルタイム制御を成功させるには、センサの速度と精度の 2 つが鍵となりますが、センサを長期にわたり適切に動作させるには、システムの寿命と環境動作条件についても考慮する必要があります。たとえば、図 3 に示すような人工衛星は、過酷な物理的振動や宇宙空間の大量の放射線に耐えられるだけでなく、極端な温度変化にも対応できる必要があります。

 図 3:宇宙は電子部品にとって非常に過酷な環境

宇宙におけるリアルタイム制御の一例として、人工衛星の発電・送電システムが挙げられます。このシステムでは、シングルイベント・トランジェントを検出するため、電流センス・アンプ (CSA) を使用してメイン電源レールの入力電流を監視します。過電流イベントが検出された場合、プロセッサはリアルタイムに対応し、電子サブシステムをシャットダウンして損傷を防止できます。

TI の『INA901-SP』や『INA240-SEP』などの CSA 製品では、宇宙で高い測定精度を維持し、リアルタイム制御を実現するために、宇宙用強化プラスチックや耐放射線パッケージなどの先進的技術を取り入れています。詳細については、技術記事「How Current-Sense Amplifiers Monitor Satellite Health (英語)」をご覧ください。

まとめ

センシングとは、多くの場合、電圧、電流、モーターの速度や位置、湿度、温度のような外部変数を測定する機能を意味します。データの変化をリアルタイムで制御システムに送信するうえで、センサの応答時間、通信速度、精度、信頼性は重要なパラメータとなります。


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※上記の記事はこちらの技術記事(2022年8月9日)より翻訳転載されました。
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