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EVの充電やソーラー インバータのようなシステム内で、電流センサはシャント抵抗の両端間での電圧降下の監視、または導体を流れる電流により生じた磁界を監視することで電流を測定します。これらの高電圧システムは、電流値の情報を使用し、電力変換、充電、放電に関する制御と監視を行います。

電流センシングにおいて、ホール効果センサとシャント内蔵センサは幅広く活用されています。ただし、これまでは、高電圧アプリケーションにおいて、ホール効果センサの採用は見送られてきました。この記事では、各トポロジを選択するときの検討事項をまとめ、高電圧アプリケーションでホール効果電流センサを活用して電流センシングを簡素化する、最新の技術革新を紹介します。

 

シャント ベースとホール効果ベースの各電流センシングの比較

一般的に、シャント ベースの電流センサは電流範囲全体で、ホール効果電流センサより高い精度です。安定性の高いアンプ テクノロジーまたは高精度 A/D コンバータ (ADC) を活用し、高精度シャント抵抗と組み合わせると、電流測定範囲全体、温度範囲全体、寿命全体にわたってドリフトが 1% 未満の高精度を実現します。車載トラクション インバータ、サーボ ドライブ、EV 充電インフラの各アプリケーションは、一般的に、シャント ベースのセンサを採用しています。

アンプと高精度 ADC は通常、シャント抵抗の両端間での電圧降下を監視し、それに比例する出力を生成します。各電流センシング ソリューションには、動作電圧、オフセット、ドリフト、帯域幅、使いやすさに関してさまざまな特徴があります。ただし、シャント ベースのシステムにはいくつかの制限要因があります。デバイスのアーキテクチャが原因で、比較的長い伝搬遅延が一般的に発生すること、およびハイサイド電源やローサイド電源など、設計の複雑さが増すことです。また、シャント ベースのデバイスを使用する場合は、シャント抵抗のパラメータと消費電力について注意深く考慮する必要があります。

一方、パッケージ封止型のホール効果電流センサは一般的にシャント ベースのソリューションよりコスト効率が優れており、伝搬遅延が短いほか、システムへの組み込みがはるかにシンプルです。パッケージ封止型ソリューションでは、電流はリードフレーム経由でパッケージに流れ込むため、高精度の抵抗は不要であり、コストと部品表を削減できます。加えて、ハイサイドとローサイドの電源が不要なため、 1つのローサイド電源を使用してホール効果電流センサに電力を供給でき、設計を簡素化できます。

 

ホール効果センサの革新を通じて高電圧の電流センシングを簡素化

ホール効果電流センサにはいくつかの利点がありますが、温度範囲全体や寿命全体にわたるドリフトが大きいという理由で、多くの設計者は高電圧システムの分野でこれらのデバイスを見過ごしてきました。ホール効果電流センサは、電子回路と絶縁の経年劣化により、寿命全体にわたって大きなドリフトが生じる可能性があります。

これらの課題に対処するために、筆者の同僚たちはホール効果電流センサである TMCS1123 の寿命全体にわたる感度ドリフト誤差を、±0.5% まで大幅に引き下げる目的で開発を進めてきました。この特性を実現すると、システムの寿命全体にわたってキャリブレーションやメンテナンスの必要回数が少なくて済む高電圧システムを設計できます。私たちはまた、寿命全体と温度範囲全体にわたる合計最大感度誤差を ±1.75% に低減しました。その結果、効率を向上させ、コストを要するシステム キャリブレーションを減らすことができます。加えて、TMCS1123は差動型のホール効果センシングを採用しているため、磁界による干渉やクロストークを大幅に低減できるほか、過電流検出、高精度電圧リファレンス、センサ アラートなど他の機能も搭載しています。図 1 をご覧ください。

1TMCS1123のブロック図

TMCS1123はほかに、ホール効果センサで一般的に生じる他の制限事項のいくつかにも対処しています。たとえば、リードフレームの抵抗成分やシリコン ダイの放熱特性は、デバイスが取り扱うことのできる電流の大きさに制限を課す制約事項になります。TMCS1123は、25℃時に 75ARMS に対応し、温度範囲全体と寿命全体にわたって、キャリブレーションなしで ±1.75%の感度誤差を達成します。その結果、このデバイスは、システムの寿命全体にわたって高精度のソリューションとして活用することができます。

 

電流センシング設計上の検討事項

ここでは、システムで使用する電流センサを選定する際の主な検討事項をいくつか再確認してみます。第1に、精度は重要な検討事項であり、採用可能なテクノロジーを決定するために、最初に規定する必要のあるパラメータの1つです。第2に、すでに説明したすべてのテクノロジーにとって、電力定格は非常に重要です。安全かつ効率的にデバイスを動作させるために、システムの電圧と電流のレベルは、デバイスが規定しているパラメータの範囲内に収める必要があります。ソーラー エネルギー用の絶縁型DC/DCコンバータなど、アクティブに制御を行うスイッチング システムの場合、帯域幅と速度も規定する必要があります。設計の複雑さを低減できるかどうかは、重要な検討事項の1つです。ホール効果電流センサは、追加の電源や追加の部品を必要としないため、デバイスの限度内にある多様な電圧レベルでシンプルに使用できます。

 

まとめ

EVチャージャやソーラー インバータのような高電圧システムで、高精度の電流測定に関するニーズが継続的に高まっています。高電圧アプリケーションには設計上の課題がいくつか存在し、システムの複雑さや設計のコストが上昇する原因になっています。TMCS1123のような電流センシング デバイスを採用すると、EVチャージャのような高電圧アプリケーションで電流を高精度センスすると同時に、設計の複雑さを低減し、設計上の問題に迅速に取り組み、しかも手頃な価格を実現することができます。

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※上記の記事はこちらの(2023年8月28日)より翻訳転載されました。
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