伝送媒体を通して流れる信号は、ノイズ、歪み、および信号損失の影響を受けます。通常、低いビット・レートではシグナル・インテグリティ(完全性)やフィデリティ(忠実度)を保つことができ、長距離の伝送が可能ですが、DisplayPortやHDMI®(高精細度マルチメディア・インターフェイス)を介した何ギガビット/秒もの高速信号の場合、信号がコネクタを結ぶ長い配線や長いケーブルを流れる際に、通常はシグナル・インテグリティが大きく低下します。このような長い配線により、受信端で信号強度が下がり、歪みまたはノイズの多い信号になったり、標準に準拠しない信号になったりする場合があります。

リタイマリドライバをDisplayPortやHDMIインターフェイスに使うことによって、ビデオ・システムは、信号品質が改善され、長い配線やケーブル上のシグナル・インテグリティを保つことができるようになります。このことは、信号がケーブルや配線に沿って伝わる距離を長く延ばすことによって、設計の柔軟性が向上することを意味します。また、リタイマとリドライバは、幅広い相互運用性を実現し、システム性能を高め、システムが標準で求められる要件に対応できるようにします。

リタイマとリドライバの一般的な使用例は、ノート・パソコンやデスクトップ、ゲーム機、DVDプレーヤのビデオ・ソース側です。そこで、このリタイマあるいはリドライブは、SoC(システム・オン・チップ)やGPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)からのビデオ出力と、HDMIコネクタとの間に配置され、HDMIケーブルを通じて、モニタやHDTVなどにビデオ信号を送信します。図1は、ビデオ・ソース側のシステム設計におけるリタイマの使用を示しています。

1: ビデオ・ソース側に使用されているリタイマ

リタイマやリドライバがシステムに恩恵をもたらすもう一つの分野はビデオ配信で、一つのSoCあるいはFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が異なるビデオ・チャンネルを出力します。図2に示すように、設計者はチャンネルから信号をHDMIコネクタに送る前に、各チャンネルにリタイマかリドライバを組込むことができます。

2:ビデオ配信システムにおけるリタイマの使用 

SNx5DP159』と『SNx5DP149』のような高性能でデュアル・モードのDisplayPort、あるいはTMDS(伝送を最小に抑える差動信号技術)- HDMI間リタイマは、システムのシグナル・コンディションに求められる要件を満たします。リタイマがどのようにビデオ・ディスプレイ・システム設計のシグナル・インテグリティの改善に役立つのか、二つの具体例で説明しましょう。

ドングル・システム機器のシグナル・インテグリティを改善する

DisplayPort信号をHDMIインターフェイスに送信できるようにするために、デュアル・モードDisplayPort(DP++)を使用すれば、簡単なアダプタを使ってDisplayPortにDVI(デジタル・ビジュアル・インターフェイス)とHDMIインターフェイスとの相互接続性を持たせることができますので、DisplayPortに三つの機能を加えながら、DVIとHDMIフォーマットに出力させることができます。

・ビデオ・アダプタに電力を供給するため、DP_PWR DisplayPortリセプタクル電源ピンを加えます
・デュアル・モードのビデオ・アダプタに検出機構を設けるため、CONFIG1とCONFIG2を加えます
・HDMIのDDC(ディスプレイ・データ・チャネル)インターフェイスに使うため、AUXチャネル上のI2Cを加えます

二種類のデュアル・モードDisplayPortアダプタがあります。Type 1は、DVI、HDMI共に最大クロックTMDS周波数165MHzと、I2Cを通したDDCシグナリングをサポートします。Type 2は、DVI用に最大クロック周波数165MHzとHDMI用に300MHz、およびDDCとAUX上のI2Cの両方のシグナリングをサポートします。

図3に示されているように、デュアル・モードのDisplayPortからHDMIへの変換ドングルでは、DP159/DP149リタイマは信号品質を改善します。

3: ビデオDisplayPortからHDMIドングルへの変換に使われるDP159/DP149リタイマ

ドッキング・ステーションの設計におけるシグナル・コンディショニング

ここでは、二つ目の事例を紹介します。ドッキング・ステーションは、通常、ラップトップやノート・パソコン、モバイル・デバイスをモニタにつなぐためのビデオ・ソースとして機能します。普段、ドッキング・ステーションは、ビデオ・ソースとの接続方法により、シンク・ロスのプロファイルを持っています。信号調整装置として働くDP159/DP149リタイマは、信号強度を高め、きれいな信号をモニタへ送ります。図4は、ドッキング・ステーション・アプリケーションでのDP159/DP149リタイマの使われ方を示しています。

4:ドッキング・ステーション・アプリケーションに使われたDP159/149リタイマ 

先述のDP159およびDP149デバイスは、ビデオ・システム・アプリケーションに加え、デスクトップおよびラップトップ・パソコン、ゲーム機、DVDプレーヤ、AVRアプリケーションなど、その他の多くのシステム設計にも使えます。

参考情報
・『SNx5DP159』および『SNx5DP149』デバイスのデータ・シートをダウンロード
・ホワイトペーパー「ビデオ・コンディショナ製品を使って、真に忠実なシステムを構築」(英語)を参照

※すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/analogwire/archive/2016/06/21/hdmi-2-0-how-to-generate-cleaner-signals-over-long-traces-connectors-and-cables

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