Other Parts Discussed in Post: TLV9042, TLV9001, OPA391

このシリーズのPart1では、正弦波出力とDCオフセットを伴う単電源オペアンプ回路の消費電力に関連した課題と、このような回路で消費電力を減らす2つの手法について説明しました。それは、抵抗値を増やすことと、低静止電流のオペアンプを選ぶことです。この2つの手法は、ほとんどのオペアンプ・アプリケーションで使用できます。

Part2では、低い電源電圧に対応した低消費電力オペアンプの使用方法を説明します。

低電圧レールを用いた省電力

Part1で、正弦波信号とDCオフセット電圧を伴う単電源オペアンプ回路の平均消費電力を、次に示す数式1および2を用いて定義しました。



Part1では、電源レール(V+)には触れませんでした。これは「一般的に、回路で利用できる電源電圧で決まる」からです。その通りなのですが、非常に低い電源電圧を使用できるアプリケーションもあります。そのような場合、この電源レールの範囲内で動作可能な低消費電力オペアンプを選ぶと、大幅な省電力化につながります。これは、数式2を見るとわかります。Ptotal,avgはV+に正比例します。

多くのオペアンプの最小電源電圧は、2.7Vまたは3.3Vの範囲内です。このような制限がある理由は、内部トランジスタをその望ましい動作範囲に維持するのに必要な最小電圧と関係があります。中には、1.8Vまたはさらに低い電圧まで下げても動作するように設計されたオペアンプもあります。例えば、汎用オペアンプ『TLV9042』は、1.2Vレールで動作可能です。

 

バッテリ駆動のアプリケーション

現在のセンサやスマート・デバイスの多くはバッテリで動きますが、バッテリの端子電圧は放電とともに公称定格電圧から低下します。例えば、アルカリ単3電池1個の公称電圧は1.5Vです。実際の端子電圧は、最初に無負荷で測定すると、1.6Vに近いかもしれません。バッテリが放電すると、この端子電圧が1.2V以下まで低下します。高い電圧で動作するオペアンプの代わりに、1.2Vまで下げても動作可能なオペアンプを用いて設計すると、次のような利点が得られます。

  • バッテリの残量が終わりに近づいて、端子電圧が低下しても、オペアンプ回路が長い間動作し続ける
  • オペアンプ回路が1つの1.5Vバッテリで動作でき、2つのバッテリで3Vレールを作る必要がない

低電圧オペアンプが1つのバッテリで長期間動作できる理由を理解するために、図1に示すバッテリの放電曲線を検討します。バッテリは通常、この曲線に似た放電サイクルを持っています。バッテリの端子電圧は、公称定格電圧付近から始まります。バッテリが時間の経過とともに放電すると、端子電圧は徐々に低下します。バッテリの残量が終わりに近づくと、バッテリの端子電圧は急激に低下します。オペアンプ回路がバッテリの公称電圧付近の電圧、例えばV1で動くようにしか設計されていない場合、この回路の動作時間(t1)は短くなります。しかし、少し低い電圧、例えばV2で動作可能なオペアンプを使うと、バッテリの動作寿命(t2)が大幅に延びます。

 1:単セル・バッテリの標準的な放電曲線

この影響は、バッテリの種類およびバッテリの負荷などの要因によって変わります。それでも、『TLV9042』などの1.2V駆動オペアンプが、1.5V駆動オペアンプと比べて、1.5Vの単3電池1個からどのように長寿命を得られるかがよくわかります。

低電圧デジタル・ロジック・レベル

低電圧レールをデジタル回路とアナログ回路の両方に使うアプリケーションでも、低電源電圧に対応した低消費電力オペアンプを活用できます。デジタル・ロジックには、5Vから1.8V以下に至るまで、標準的な電圧レベルがあります(図2)。オペアンプ回路と同様に、デジタル・ロジックは低電圧で電力効率が良くなります。そのため、低いデジタル・ロジック・レベルが望ましいことが多々あります。

設計プロセスを簡略化するために、アナログ回路とデジタル回路に同じ電源電圧レベルを使うよう選択する場合もあります。この場合、1.8V対応のオペアンプ、例えば、高精度で広帯域幅の『OPA391』、またはコストを最適化した『TLV9001』があると、役に立つことがわかります。将来的に1.2Vのデジタル・レールにも対応できるような設計を行うなら、『TLV9042』の方が適しているかもしれません。この手法を選択する場合には、デジタル回路からアナログ・デバイスの電源ピンに流入し得るあらゆるノイズを必ず排除してください。


 2:標準的なロジック・レベル

まとめ

この記事では、低電源電圧に対応した低消費電力オペアンプがさらなる利点をもたらすアプリケーションについて説明しました。次回は、シャットダウン回路を備えたオペアンプを用いて節電する方法について見ていきます。

参考情報(英語):
TIプレシジョン・ラボ
トレーニング・ビデオ
アプリケーション・レポート


すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。 
上記の記事はこちらの技術記事2021324日)より翻訳転載されました。 
ご質問はE2E Support Forumにお願い致します。

Anonymous