Other Parts Discussed in Post: TPSI2140-Q1, BQ79731-Q1

電気自動車、ソーラー パネル、エネルギー ストレージ システムのそれぞれで、電力を高電圧化すると、充電時間の短縮、電力損失の最小化、設計の信頼性向上を推進できます。一方で、高電圧の電流は危険であり、ときには致命的な事故を招くおそれもあるため、設計者は絶縁監視システムを使用する必要があります。それにより、ユーザーの感電やアプリケーション (機器類) の損傷を防止するために、アラートを送信したり、電源を切り離したりできます。ユーザーの安全性を最大限に高め、大規模な停電が発生した場合でも損傷や火災が発生する可能性を最小限に抑えるために、絶縁系で障害が発生したときには、それを迅速かつ高精度で検出することが重要です。

絶縁監視機能を搭載している一般的なアプリケーションとして、バッテリ管理システム、エネルギー ストレージ システム、ストリング インバータ、DC 高速チャージャ、DC ウォールボックス チャージャ、ソーラー パネル、モーター、航空機などを挙げることができます。ただし、精度や耐電圧試験の要件が原因で、絶縁監視機能の設計難易度が高くなる可能性もあります。設計プロセスを簡素化できるように、TI はリファレンス デザインとデバイスの両方を設計してきました。

絶縁監視の設計で一般的に直面する課題への対処

絶縁監視を、絶縁チェック、地絡検出、地絡センシングなどと呼ぶこともありますが、この機能は高電圧端子と、保護用のアースやシャーシ グランドとの間の絶縁の度合い (電流の流れにくさ) を監視します。図 1 に、絶縁監視の構成例の 1 つを示します。絶縁監視回路の基本的な動作には、既知の抵抗 (RDIV1/2、RDIV3/4) の切り替え (スイッチのオンとオフ) を行い、連立方程式を解いて、未知の絶縁抵抗 (RISOP、RISON) を求めることが含まれます。

 

1:絶縁監視の構成

厳格な安全性要件への対応

各種安全性規格では、メーカー各社が絶縁耐圧試験 (「高電圧試験」とも呼びます) を実施し、安全性に関わる特定の電気機器や電子機器の絶縁の有効性を評価することを要求しています。絶縁耐圧試験では、絶縁バリアをまたいだ両側の間に、1 分間にわたって高電圧を印加します。試験後に測定される絶縁の値が、そのメーカーの要件のスレッショルドに適合している場合、その測定値および該当する機器は合格グレードであるとみなされます。

IEC (国際電気標準会議) 60950 は、基本絶縁向けの耐電圧試験を、2U + 1,000VRMS と規定しています。ここで、U はシステムの最大動作電圧を意味します。メーカーが 800V のシステムを設計する場合は、式 1 に基づき、4,242V の耐電圧試験を実施する必要があります。

2 x 1,000V (バッテリ充電マージンを加算) +1,000 = 3,000 VRMS = 4,242 VDC         (1)

図 2 に、この耐電圧試験の回路を示します。すでに図示した絶縁監視の構成を流用し、そこから高電圧バッテリを取り除き、端子とシャーシ グランドの間に 4,242V を印加します。

 

2:絶縁監視に関する高電圧試験の例

これらのスイッチ (SW1、SW2) は多くの場合、ソリッドステート リレー (半導体リレー) または MOSFET (金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ) を統合した光学リレーです。したがって、スイッチの耐久性を確保するために、部品の選定時に適切な配慮が必要となります。これらのスイッチは通常、特定の時間にわたるアバランシェ電流 (Iava) の制限定格を規定済みです。そのため、部品を選定する際に、アバランシェ電流を適切に制限する目的で、複数の直列抵抗の選定が必要になることがあります。または、アバランシェ電流が流れるのを完全に防止するために、比較的高額なリード リレー (電磁リレー) をグランドとの間に追加する場合もあります。残念ながら、1 個の大きい直列抵抗を追加すると、測定精度に悪影響を及ぼすおそれがあります。したがって、絶縁抵抗に近い抵抗値を持つ複数の抵抗を選定することで、精度を最大化できます。

ソリッドステート リレーの利点

光学リレーを使用することもできますが、ソリッドステート リレーに比べると、アバランシェ電流、速度、信頼性、ソリューション サイズの点で、いくつかの短所があります。TPSI2140-Q1 は、最大 2mA のアバランシェ電流に対処できます。一般的な光学リレーの 0.6mA に比べて、より大きい値です。また、一般的な光学リレーは、その LED と順方向バイアスに関する要件が原因で、通常はスイッチング速度に制限があります。光学リレーは経年による光学特性の劣化が生じるほか、サイズも大きく、ドライブ回路を製作するために追加の部品を実装する必要も生じます。

図 3 に、TPSI2140-Q1 の機能ブロック図を示します。

 

3TPSI2140-Q1 の機能ブロック図

追加のシステム要件によっては、電圧、温度、電流を測定するために、BQ79731-Q1 バッテリ パック モニタのようなインテリジェントなバッテリ ジャンクション ボックスを使用する構成も検討できます。

高電圧の EV (電気自動車) 充電とソーラー エネルギー分野の絶縁監視に適した AFE (アナログ フロント エンド) のリファレンス デザインと、車載対応、高電圧と絶縁リーク測定のリファレンス デザインはどちらも、既知の抵抗を切り替えるためにソリッドステート リレーである TPSI2140-Q1 を使用しています。

設計者は場合により、設計時に耐電圧試験を考慮に入れるという課題を回避するために、絶縁監視モジュールの購入を選択することがあります。これらのリファレンス デザインはどちらも、互いに異なるトポロジを使用して絶縁監視を実施し、障害検出に関して良好な精度を達成しているほか、安全性規格、スケーラビリティなどにも対応しています。

AFE のリファレンス デザインには、高精度かつ高い信頼性で絶縁抵抗を監視する能力があり、絶縁抵抗測定中に絶縁状態を維持できるほか、IEC 61557-8 と IEC 61851-23 に対応しています。

図 4 に、AFE のリファレンス デザインのブロック図を示します。

 

4AFE リファレンス デザインのブロック図

図 5 に、リーク測定のリファレンス デザインのブロック図を示します。

 

5:リーク測定リファレンス デザインのブロック図

まとめ

充電時間を最小化するために、より高い電圧への移行が進んでいます。たとえば、EV は 400V から 800V への移行を進め、ソーラー エネルギーはより電圧の高いシステムへと移行しています。その結果、安全性と絶縁監視に関して、信頼性の高い方式のニーズが高まっています。絶縁監視機能は、高電圧端子から、アースまたはシャーシ グランドへのリーク電流を測定する方法で、絶縁抵抗を検出します。10mA を上回る電流は致命的な事態を招くおそれがあるため、絶縁監視システムは絶縁の障害を検出した場合に、警告を生成しなければなりません。

TI の各種ソリッドステート リレーは、最高クラスの動作温度、誘電体強度、速度を達成すると同時に、優れたコスト効率も実現しています。また、小型のパッケージで、信頼性の高いスイッチングも実施します。TI の絶縁型スイッチとドライバを活用して設計を最適化する方法について、以下の資料で詳しくご確認ください。

参考情報

 

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