マイコン (MCU) ベースのアプリケーションに、プロジェクション (投影型) ディスプレイの追加を検討されたことはありますか? たとえば、家電製品でプロジェクション ディスプレイを採用すると、鮮明な色と低消費電力のインターフェイスを通じて対話型操作を容易にすると同時に、従来型の LCD や TFT (薄膜トランジスタ) ディスプレイより省スペース化を実現できます。
自由形状のプロジェクション ディスプレイを採用すると、新規かつ斬新な水準の HMI (ヒューマン マシン インターフェイス) を実現するとともに、ベゼルやオンデマンド ディスプレイを使用せずに、使用していないときは機器の表面を掃除することが可能になります。DLP® テクノロジーを活用すると、小型スペースのプロジェクション モジュールを追加し、システムのサイズ増加を招かずに、より大きな画像を映し出すことができます。
このようなディスプレイの開発を開始するため、TI は DLP Pico チップセットである DLP160CP と MSPM0G3507 マイコンを使用して、マイコン アプリケーションに適したプロジェクション ディスプレイの評価基板を開発しました。
図 1:コンパクトな DLP160CP 評価基板
0.16 インチ nHD (640 x 360 ピクセル) の DLP 評価基板を最大限に活用する方法を以下にご紹介します。
手順 1:使用事例に関連するデモを検証し、画質テストを実施
電力供給源を評価基板に接続し、フラッシュに格納済みの画像をプロジェクション形式で表示します。これで、DLP テクノロジーの画質と性能をテストできます。ほかに、使用事例に即したデモを通じて、HMI がどのようなものか確認します。この HMI は、オンライン メディア ライブラリと、マイコンが生成した画像を土台にして製作したものです。
手順 2:画像のテストを実施
microSD スロットを使用して画像を表示するほか、構成可能なファイルを使用して、画像を他の画像に切り替えるまでの間隔、または他のコマンドを実行するまでの時間間隔を指定します。ビデオ プロセッサを使用することなく、迅速に画像表示テストも可能です。その結果、製品全体のコストを引き下げ、DLP ディスプレイで適切な性能を確保することができます。
手順 3:コーディングを実行し、プロトタイプ製品を開発
入手可能な他のメディアライブラリを参照し、ディスプレイの設計を進めます。または、TI の MSPM0 マイコン製品ラインアップと JTAG (Joint Test Action Group) を使用して、お客様独自のプログラムを作成します。MSPM0 マイコンは、ピン互換性のある複数の製品で構成された、スケーラブルな製品ラインアップを実現しており、オプションの CAN-FD (コントローラ エリア ネットワーク フレキシブル データ レート) インターフェイスや、各種産業用アプリケーションに適した高度なアナログ統合も利用できます。そのため、多様な設計要件に対応できます。0.16 インチ nHD 評価基板は MSPM0G3507 を使用していますが、代わりに MSPM0G1107 または MSPM0G1507 のような他のマイコンを使用することもできます。これらは、類似の表示効果を実現するための選択肢です。この評価基板は、マイコンとの間で 6800 または 8080 (以前のプロセッサの型番であり、それらのバスは標準として使用されてきた) のグラフィックス インターフェイスを使用し、ディスプレイ コントローラ向けのコマンドや制御に I2C を使用する設計を採用しています。
手順 4:コマンドを構成
ご自分のコンピュータと MSPM0 の間で通信を実行し、UART (ユニバーサル非同期レシーバ / トランスミッタ) を活用してディスプレイ コントローラ宛に I2C コマンドを送信します。この評価基板には、サンプル コードとメディア ライブラリが付属しています。(技術力は必要になりますが、サンプルなどを参考にして) コーディングを通じて開発の自由度が高くなると、マイコンを使用してお客様独自のグラフィックスを生成できます。マイコンが生成したグラフィックスを活用すると、使用事例がさまざまに異なるアプリケーションで、プロジェクション ディスプレイを低コスト実装する新しい機会の扉が開きます。プロジェクション ディスプレイは、独自の機能や方法を実現し、人間と機械の間の情報交換を強化することができます。
手順 5:エレクトロニクス (電子回路) を設計
0.16 インチ nHD 評価基板を使用して、お客様が希望する最終アプリケーション向けにマイコンが生成したグラフィックスの画質と性能をテストします。お客様のアプリケーションの仕様が評価基板とは異なる場合、この評価基板の設計を参考として活用し、お客様独自の製品を開発することができます。この評価基板のエレクトロニクスは、他の DLP チップセットと互換性があります。互換チップセットについては、表 1 をご覧ください。ほかに、DLP 製品の設計と開発に携わるエコシステムを活用し、新しいソリューションの検討、評価、開発を進めることもできます。
表1:0.16 インチ nHD 評価基板のエレクトロニクス設計と互換性のある DLP チップセット
製品ラインアップ |
分解能 |
コントローラ |
DMD |
0.16 インチ QnHD |
320 x 180 |
DLPC3420 |
|
0.16 インチ nHD |
640 x 360 |
DLPC3421 |
|
0.2 WVGA |
854 x 480 |
DLPC3430 |
まとめ
お客様のマイコン アプリケーションでオンデマンド ディスプレイを実現するために最小クラスの DLP チップセットを使用すると、システムのサイズを大きくすることなく、低消費電力で、大画像を映し出すディスプレイが実現可能です。マイコン ベースの設計でプロジェクション ディスプレイを採用すると、産業用アプリケーション、ガラス面へのプロジェクションを行う家電製品、ホーム オートメーション向けのオンデマンド ディスプレイ、低コストかつダイナミックな床へのプロジェクションや壁面表示のサイネージ用途で、オンデマンドの制御パネルのような新機能を実現する新しい可能性が広がります。
参考情報
- アプリケーション概要『家電製品のディスプレイに適した TI の DLP Pico テクノロジー』をご覧ください。
- TI E2E 設計サポート フォーラムの技術記事である『最小のプロジェクション ディスプレイ アプリケーションに適した DMD を TI が設計した方法』と『Arm® Cortex®-M0+ マイコンを活用して汎用のプロセッシング、センシング、制御を最適化する方法』をご覧ください。
- DLP テクノロジーの詳細を確認したいとお考えでしたら、技術記事:『TI の DLP® ディスプレイ・テクノロジーを使用したシステムの開発』