TIのエンジニアであるPradeep Shenoyは画期的なイノベーションの実現から社員の教育まで、次世代の車載電源技術をさらに前進させることに情熱を注いでいます。

 

Pradeepはテキサス州北部の自宅でドキュメンタリー番組“Long Way Up”を視聴しながらも、頭の中では、エピソード内で描かれるあるシーンに思いを巡らし、自分の思考を解決モードに切り替えていました。それは、俳優ユアン・マクレガーが友人とハーレーダビッドソンの電動バイクに乗って旅をするなかで、バイクのバッテリ充電と奮闘するという点です。

「このエピソードを見ながら、思わずハーレーダビッドソンの電動バイクについて調べていました」とPradeepは言います。「どのような仕様なのか? バッテリ・パックの構造は? なぜバッテリの充電がそんなに遅いのか? 好奇心がそそられ、理解したいと思いました」 

Pradeepは本能的に設計上の課題を解決したいと思い、自分のチームに相談しようと考えました。 

PradeepはTIの車載電源設計チームを率いています。車載分野のお客様のためにシステム・レベルの課題を解決するエンジニアのグループです。チームは現在、GaNを使用したEVの充電に関する革新的で画期的な設計に取り組んでおり、彼はその設計(またはそのバリエーション)がバイクにも適用できるのではないかと思っていました。Pradeepは、GaN対応の高電力チャージャがバイクにも役立つかどうかをチームと相談したいと考えました。

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彼は、パワー・エレクトロニクスとチームワークのどちらにも情熱を注いでいます。その2つの情熱が交わるところで、彼は最も大きな力を発揮します。 

「私はパワー・エレクトロニクスのオタクですが、社交的なオタクです」と彼は言います。「人と交流したり、異なる物の見方を学んだり、一緒に働くのが好きです。良いチームとは、共通のミッションに向かって進みながら、信頼やつながりを深めていくものです。質の高い関係を築くことの重要性は、いくら強調しても足りないくらいです」

電源設計に一目惚れ

エレクトロニクスにより大きなパワーを注ぐこと、より速く、より遠くへ達し、より高い性能を発揮することへのPradeepの情熱は、大学時代の1つのプロジェクトから始まりました。ハイブリッドのフォーミュラ・レースカーです。

彼は電子工学を専攻するかたわら、イリノイ工科大学のハイブリッド電気自動車研究室にボランティアとして参加し、回路基板のはんだ付けをしながらモーター・ドライブやハイブリッド車の構成要素について学んでいました。そんなとき、最初のフォーミュラ・ハイブリッドに向けた車の設計と製作という新しいプロジェクトで、電気関連のリーダーに任命されました。このチーム競技は、高性能レースカーのドライブトレインの変革と燃料効率に重点を置いています。イリノイ工科大学のチームはニューハンプシャー・モーター・スピードウェイで17時間走行し、レースで5位の成績を残しました。 

初めての設計から夢中に

「設計は初歩的なものでしたが、誇りを持っていましたし、自分たちの車がトラックを動いているのを見てちょっと驚きました」とPradeepは言います。「大きな達成感があり、もっと学びたいという意欲が湧いてきました。あの年が私にとってのターニング・ポイントでした。研究室での作業やプロジェクトへの取り組みで、私はパワー・エレクトロニクスに恋をしたのです」

それ以来、Pradeepは約15年にわたってパワー・エレクトロニクスの設計に携わり、世界中のお客様の電源設計の問題解決を支援してきました。電源を設計していないときでも、彼は電源設計に関する教育や執筆活動に多くの時間を費やしています。電源管理について詳しく学びたいエンジニアを対象とした技術的トレーニングであるTIの電源設計セミナーでもプレゼンテーションを行ったり、またAPEC(Applied Power Electronics Conference)などの業界イベントでも活動しています。

より良い世界のためのイノベーション

この研究室がPradeepのパワー・エレクトロニクスへの情熱を育んだことは偶然ではありません。彼の大切な思いは、研究室で新しいテクノロジーを開発している最中に得られたものです。Pradeepはそのキャリアをずっと、高密度で高効率の電力変換システムの革新に費やしてきました。 

「パワー・エレクトロニクスは、現在見られる非常に多くの興味深いテクノロジーに影響を及ぼしています。コンピュータ・サーバ、ソーラー・エネルギー、ウェアラブル機器、電気自動車、さらには掃除機にまでです。これらのどのアプリケーションも電源なしには実現できません。電源はあらゆる場所で利用され、電源設計が及ぼす影響を見ていると努力が報われ、エネルギーが湧いてきます」

 自分の電気自動車を充電するPradeep

 

彼がKilby Labsで働き始めてから間もなく、1つの設計が生まれました。Kilby Labsは、1958年にTIで集積回路を発明したJack Kilbyにちなんで名付けられたTIの応用研究センターです。Pradeepは電力変換の画期的なイノベーションである、競合製品よりも65%サイズを縮小した直列コンデンサ降圧コンバータに関して、テクニカル・リーダーを務めていました。これにより、貴重な基板スペースが開放され、電源エンジニアは効率を下げることなく機能を高めて、より多くの電力を得られる設計に創造的に取り組めるようになりました。 

彼はそのプロジェクトのプロトタイプとテスト・チップを活用し、チームと連携して、企業向けコンピューティング・サーバやマイクロプロセッサ、通信などのアプリケーションを改善するデバイスを市場にリリースしました。

「画期的なイノベーションを成し遂げるには、チームの力が必要です」とPradeepは言います。「適切な人員を適切なプロジェクトに配置し、すべての段階で各人の技能を適切に組み合わせることが重要です。適材適所の配置によって、チームが力を合わせて適切な解決策を見出せるようになります」

将来を見据えて先導

Pradeepの最大の功績は、設計、構築、テスト、調整、再テストといった厳格なステップ・バイ・ステップのプロセスから成し遂げられました。現在彼は、次世代のエンジニアの教育を通じてこれらの経験を伝えています。

 ラボでのPradeepとSahana Krishnan

 

Pradeepのチームのシステム・エンジニアであるSahana Krishnanは次のように語っています。「Pradeepは私のメンターとして、いろいろ面倒を見てくれながら、すべてを教えてくれました。彼のプロジェクトが私のプロジェクトへとなっていきました。彼は自分の仕事が遅れるのもかまわず手順や詳細をひとつひとつ示してくれました。彼は先生であり、教育者であり、チーム全員の成功を望んでいるリーダーです」 

しかしそれだけはなく、彼は常にチームの全員がそれぞれ”大切にされている”と感じられるよう努めていると、Sahanaは言います。

Pradeepは言います。「私は人々が自身のポテンシャルや能力をすべて理解するために手助けしたいと思っています。その結果として、より大きな電力、より多くの電気自動車、より多くのソーラー設備が生まれ、より持続可能なエネルギーへの移行が実現するでしょう。私は、チームのメンバー全員が成功できるような環境を作ることに注力しています。成功のためのチーム作りは、TIのお客様を成功に導き、より良い世界を作ることにつながるのです」

 

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年12月15日)より翻訳転載されました。 
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