これまでにテキサス・インスツルメンツのデバイスを検索したことがある場合は、図 1 のようなツールを目にした記憶があるでしょう。 この製品セレクション・ツールは、数万以上のデバイスを迅速に確認するのに役立つ強力な手段です。
図 1: 製品セレクション・ツール
ただし、よく言われるように、入力が不適切であれば、出力結果も思わしくありません。 そのため、アプリケーションに適した製品を見つけるうえで、検索しようとするデバイスのさまざまな仕様について理解しておくことが重要です。 Motor Drive Forum の上位 FAQ(よくある質問)シリーズに属するこの投稿では、モーター・ドライバの仕様のうち、誤解されることが多い特性の 1 つである、ドライバ電流定格に注目します。 ここで検討する 2 つのドライブ電流パラメータは、ピーク出力電流と RMS(Root Mean Square、二乗平均平方根、実効値)出力電流です。
ピーク出力電流は、デバイスとそのパッケージの熱的制限を無視して、モーター・ドライバが供給することのできる最大電流です。 この制限は一般的に、モーター・ドライバの過電流保護(OCP)によって設定されます(図 2)。
図 2: OCP による制限(ピーク出力電流)
DRV8840 データシートから読み取った保護による制限の例
OCP によって許可される値を上回る電流を流そうとすると、ドライブ段がシャットダウンされる結果になります。 ピーク出力電流制限に対する 1 つの例外は、OCP のデグリッチ・タイマが続行している間、モーター・ドライバがこれより大きい電流を短時間にわたって許容することです。 デグリッチ・タイマによって、スイッチングや出力コンデンサに起因するノイズが発生した場合でも、OCP のトリップとシャットダウンは生じないことが保証されます。
図 3 の波形は、モーター・ドライバの出力で短絡の条件が生じた場合の代表的な OCP イベントを示しています。 黄色い波形は入力信号、青い波形は障害の出力信号、ピンクの波形は出力段を流れる電流です。 当初、電流は急速に上昇しています。 短時間のオーバーシュートが生じていますが、これは出力段にとって問題ではありません。その後、電流はアナログ電流制限によって、約 9A に制限されています。 約 2.5μs 後に OCP デグリッチ・タイマは期限切れになり、電流は 9A というアナログ電流制限にとどまりますが、これは OCP による制限を上回っています。 このデバイスでは、OCP レベルは約 3A です。 この時点で、出力段はディスエーブルになり、電流は 0 に減少し、障害発生として扱われます。
図 3: OCP イベント
RMS 出力電流は、固定的な一連の条件の下でモーター・ドライバがサポートできる最大の実効(つまり同等の DC)電流です。 これらの条件には通常、公称電圧での動作、25℃ の周囲温度、標準的な JEDEC 規定のプリント基板(PCB)が含まれています。 この制限は一般的に、モーター・ドライバの過熱保護によって設定されます(図 2)。 デバイスが過熱制限を上回った時点で、ドライバ段はシャットダウンします。 この結果、デバイスが自らの安全動作領域の外部で使用されないことが保証されます。
図 4: DRV8840 データシートから読み取った過熱保護による制限の例
その他のリソース:
- 熱に関する検討事項の詳細はこちら:TI.com/thermal.
- TI のモーター・ドライバが使用している出力電流定格と保護方式の詳細については、この『“Understanding Motor Driver Current Ratings” (英語)』アプリケーション・ノートをご覧ください。
- TI E2E™ Motor Drive コミュニティ(英語)で、既存の Q&A を検索するか、Motor Application チームに質問する
- Motor Drive フォーラムに投稿された最もよくある質問(FAQ)に関する他のブログを読む。
上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。
*ご質問は E2E 日本語コミュニティにお願い致します。