窒化ガリウム(GaN)電界効果トランジスタ(FET)は、SiC(炭化ケイ素)FETやSi(シリコン)ベースFETに比べて、スイッチング損失が劇的に改善し、電力密度が高くなっています。このような特性は磁気回路のサイズ縮小につながるため、デジタル・パワー・コンバータなどのスイッチング周波数が高いアプリケーションで特に有用と考えられます。

パワー・エレクトロニクス業界にいる設計者は、GaNシステムの性能向上のための新しい技術と手法を必要としています。GaNテクノロジを使用する最新の電力変換システム開発で、設計の課題解決に役立つC2000リアルタイム制御マイコン(MCU)をご紹介いたします。

C2000リアルタイム制御マイコンのメリット

C2000マイコンのような適応性のあるデジタル・コントローラは、ゼロ電圧スイッチング、ゼロ電流スイッチング、またはハイブリッド・ヒステリシス制御方式のインダクタ-インダクタ-コンデンサ(LLC)共振DC/DC電源といった、複雑なトポロジや制御アルゴリズムに有効です。

C2000マイコンを使用すると、以下のような利点があります。

  • 複雑で、時間的制約が厳しい演算処理
    C2000マイコンの高度な命令セットにより、複雑な算術演算にかかるサイクル数が減少します。演算時間が短縮されることで、マイコンの動作周波数を上げなくても制御ループ周波数を高めることが可能になります。
  • 精密な制御
    C2000マイコンの高分解能パルス幅変調器(PWM)により150psの分解能が得られ、組み込みのアナログ・コンパレータと構成可能ロジック・ブロックによりエラー状態を確実に処理できます。
  • ソフトウェアとペリフェラルの拡張性
    C2000プラットフォームは、システム要件の変更に合わせてリアルタイム制御マイコンの機能を拡張したり縮小したりできる一方で、ソフトウェア投資を維持して開発期間をさらに短縮できます。例えば『TMS320F280029C』のような低価格のC2000マイコンは、小型サーバの電源をリアルタイムで処理・制御できるほか、高周波数のマルチフェーズ・システムでよく使われる『TMS320F28379D』とのコード互換性も維持しています。

C2000マイコンでGaNスイッチングの課題に対処する

先ほど述べたように、スイッチング周波数を上げるとスイッチング・コンバータの磁気回路のサイズを縮小できますが、サイズが小さくなることで制御面での課題がいくつか生じることもあります。例えばトーテムポール力率補正トポロジでは、インダクタのサイズが小さくなるとゼロクロス点での電流スパイクが増加し、デッドバンドによる第3象限の損失も増加する可能性があります。これらの現象が重なって、全高調波歪(THD)が増加し、効率が低下します。

このような課題に対処するために、C2000リアルタイム制御マイコンには豊富な機能を持つPWMが搭載されており、ソフトスタート・アルゴリズムによって電流スパイクを平滑化し、THDを改善することができます。C2000マイコンは他にも、拡張命令セット、浮動小数点ユニット、三角関数演算ユニットを備えており、PWMのオン時間といったパラメータの計算に必要な時間が大幅に削減されます。この時間短縮によって制御ループ周波数も上昇し、PWMの150psの分解能も合わさって、第3象限の損失が削減されます。

C2000マイコンをTIGaNテクノロジと組み合わせる

図1に示すように、C2000マイコンとデジタル絶縁デバイスとGaN FETのみで、デバイス同士を接続できます。

 1C2000マイコン、デジタル・アイソレータ、600V GaN FETの接続図

強化デジタル・アイソレータは、過渡ノイズを抑制してC2000マイコンを保護します。C2000マイコンは、その高分解能PWMと構成可能ロジック・ブロックを使用した高精度の制御出力を備え、また強化されたキャプチャ・モジュールによって、外部的な中間ロジックを使わずにGaN FETの安全保護、温度、エラー通知の各機能出力を取得します。600V GaN FETにはドライバが内蔵されているため、誘導性リンギングに起因するシステム設計上の問題が少なくなります。これらのデバイスの組み合わせによって外付け部品が不要になり、全体的なコストの削減につながります。

TIのGaN FETの先進的な機能について詳しくは、技術記事「ドライバおよび自己保護機能内蔵GaN FETにより、次世代の産業用電源設計を実現する方法」(英語)をご覧下さい。

まとめ

TIのC2000リアルタイム制御マイコンとGaN FETの組み合わせは、現代のデジタル・パワー・システム向けのシンプルで柔軟性があるソリューションとして機能します。また、電力密度と効率の高いデジタル・パワー・システムを実現する最先端の機能も備えます。完全に動作確認済みでドキュメントも備わったTIのリファレンス・デザインを利用すれば、高効率かつ高電力密度のデジタル・パワー・システムをより速く開発することが可能になります。

参考情報:
C2000 MCUリファレンス・デザイン
+アプリケーション・レポート(英語):
Does GaN Have a Body Diode? – Understanding the Third Quadrant Operation of GaN
+トレーニング・ビデオ(英語):
C2000 Configurable Logic Block (CLB) Introduction

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年12月17日)より翻訳転載されました。 
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