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自律型ロボットとは、人間による制御や操作なしで、周囲の環境を理解して移動することができるインテリジェントな機械です。これは比較的歴史の浅い技術ですが、工場、倉庫、市街地、家庭でも自律型ロボットの多様な使用事例があります。たとえば、倉庫内での物品の運搬や、ラスト・マイル配送、つまり指定のお届け先への短距離配送、さらには家庭内での掃除や芝刈りなど、さまざまな目的にロボットを使用できます (図 1)。

 図 1:室内を掃除するロボット型掃除機

ロボットが自律性を実現するには、マッピングされた環境の検知とその中での自らの位置識別、自らの周囲にある障害物の動的な検出、それら障害物の追跡、指定された目的地に到達するまでの経路の計画、その計画に従った移動装置の制御が必要となります。加えて、ロボットは操作を実行しても安全である場合にのみ、これらの操作を実行する必要があります。それによって、人間、資産、またはシステム自体にリスクを生じさせる状況を防止します。以前に比べて人間のすぐ近くでロボットが動作している現状で、ロボットには自律性、移動能力、エネルギー効率が求められるとともに、機能安全の要件に適合する必要も生じています。設計者が ICE (国際電気標準会議) 61508 のような各種機能安全規格の厳格な要件を満たすうえで、センサ、プロセッサ、制御デバイスが役に立ちます。

自律型ロボットのセンシング機能に関する検討事項

自律型ロボットが直面する課題を解決できるように、何種類かのセンサを使用することができます。そのうち 2 種類を詳しく見てみましょう。

ビジョン・センサ

ビジョン・センサは、人間の視界や認識能力をかなりの程度模倣します。ビジョン・システムは、高い分解能で空間範囲を網羅できるほか、物体の検出に加え、物体を分類する能力もあるので、位置識別、障害物検出、衝突防止という課題の解決に役立ちます。また、LiDAR のようなセンサに比べると、ビジョン・センサはコスト効率が優れているという特長もあります。ただし、ビジョン・センサはかなり演算集中型です。

消費電力の多い CPU (中央演算装置) と GPU (グラフィックス処理ユニット) は、電力に制約のあるロボット・システムに課題を投げかけます。エネルギー効率の優れたロボット・システムを設計しようとする場合、CPU ベースや GPU ベースの処理を最小限に抑える必要があります。効率的なビジョン・システム内の SoC (システム・オン・チップ) は、システム・コストを最適化しながら、高速、低消費電力でビジョン・シグナル・チェーンを処理する必要があります。ビジョン処理で使用する SoC には、スマートな性能、安全性、優れたエネルギー効率といった要件が求められます。TDA4 プロセッサ・ファミリは、異種アーキテクチャ・デザインを採用した高集積のプロセッサ・ファミリであり、コンピュータ・ビジョンの性能向上、ディープ・ラーニングの処理能力、ステレオ・ビジョン対応、ビデオ分析を実現すると同時に、消費電力を最小限に抑えています。

TI のミリ波 (mmWave) レーダー

ロボット・アプリケーションでTI のミリ波レーダーを採用するのは、比較的新しいコンセプトですが、自律性を目的として TI のミリ波レーダーを使用するという考え方は、以前から存在していました。車載アプリケーションの場合、TI のミリ波レーダーは先進運転支援システム (ADAS) の重要な要素の 1 つであり、自動車の周囲を監視する目的で採用されてきました。ADAS のこのようなコンセプトのうち、サラウンド・ビュー (周囲) 監視や衝突防止のような機能を活用し、ロボットに適用することができます。

TI のミリ波レーダーは、センシング技術の観点では独自の特長を持っています。これらのセンサは、物体の距離、速度、到来角に関する情報を取得し、衝突防止の目的でどのように移動すればよいかを、より的確にロボットに伝えることができるからです。図 2 に示すように、ロボットはレーダー・センサのデータを使用し、接近してくる人間、または物体の位置、速度、軌道に基づいて、自らの経路で安全な移動を継続できるのか、それとも速度を落とす、あるいは止まる必要があるのか判断を下すことができます。

 図 2:レーダー・センシングを使用する倉庫向けロボット

センサ・フュージョンとエッジ側 AI を活用して自律型ロボットの複雑な問題に対処

より複雑なアプリケーションの場合、どの種類のセンサを使用するとしても、1つのセンサだけでは自律性を十分確保できない可能性があります。最終的に、カメラやレーダーのようなセンサがシステム内で互いに補完し合う必要があります。センサ・フュージョンを通じて、プロセッサ上のさまざまなセンサ・モードのデータを活用することで、自律型ロボットの複雑な課題を解決することができます。

センサ・フュージョンはロボットの精度を高めるのに役立ち、エッジ側 AI (人工知能) を活用するとロボットのインテリジェンスを高めることができます。ロボット・システムにエッジ側 AI を内蔵すると、ロボットはインテリジェントな方法で周囲を認識し、より的確な意思決定と行動を実現しやすくなります。エッジ側 AI を搭載したロボットは、インテリジェントな方法で物体の検出と位置識別を行い、その物体を分類したうえで、それらの情報に基づいて行動することができます。たとえば、さまざまな人や物体がせわしなく動いている倉庫内でロボットが移動する状況では、エッジ側 AI を採用することで、ロボットは自分の想定経路上に存在している人、箱、機械、また、他のロボットも含め、多様な物体をより的確に推測し、それらに衝突せずに適切に移動するにはどうすればよいのか判断できるようになります。

AI を搭載するロボット・システムを設計するときは、ハードウェアとソフトウェアの両方に関する設計上の検討事項に取り組む必要があります。TDA4 プロセッサ・ファミリはエッジ側 AI の機能を支援するハードウェア・アクセラレータを搭載しており、演算集中型タスクをリアルタイムで実行するのに役立ちます。エッジ側 AI 向けの使いやすいソフトウェア開発環境にアクセスできれば、アプリケーション開発プロセスとハードウェア導入プロセスの簡素化と迅速化が容易になります。TI は開発プロセスを支援するための各種ツール、ソフトウェア、サービスを無償で提供しています。詳細については、技術記事『How to simplify your embedded edge AI application development』(英語)をご覧ください。

まとめ

従来よりもインテリジェンスと自律性の高いロボットを設計することは、オートメーションの継続的な向上のために不可欠です。倉庫や配送でロボットを使用することで、電子商取引の拡大に対応し、さらに成長を促進することができます。ロボットは、家庭内での掃除や芝刈りのような家事や雑用にも利用できます。自律型ロボットは、業務の生産性や効率を向上させ、生活の質や付加価値を高めるために役立ちます。

参考情報:
+ホワイト・ペーパー:”The fundamentals of millimeter wave radar sensors.”(英語)
エッジ側AIに適した実用的な組込みプロセッシング・ソリューション
TDA4VMプロセッサ・スタータ・キット
+技術記事:”TIのミリ波レーダーを採用した安全保護機能を活用し、安全性を低下させずに製造生産性を向上させる方法

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※上記の記事はこちらの技術記事(2022年3月29日)より翻訳転載されました。
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