多くの消費者は現在、スマート・ロック、カメラ、センサ、スマート・ホーム・ハブ、照明、家電製品、サーモスタットなど、いくつかのスマート・ホーム製品を保有しています。残念ながら、メーカーが異なると相互運用性を確保できないため、単一の端末やソフトウェア・アプリケーションから各種スマート・デバイスを制御することは難しくなります。

相互接続された制御可能な家庭環境という未来は手の届く範囲のように思えますが、ホーム・オートメーション市場が急成長し、非常に多くのメーカーがこの事業に携わった結果、エコシステムの細分化が発生しています。競争の激化は消費者の選択肢の増加やデバイスの革新にとっては望ましいことですが、競争の細分化につながってきました。

幸い、新しい Matter プロトコルを活用すると、相互運用性に関する課題を解決し、個別のスマート・ホーム・デバイスがどのエコシステム内で動作しているかにかかわりなく、それらのデバイスを相互接続できるようになります。

Connectivity Standards Alliance (CSA) が策定した Matter は、ロイヤリティ・フリーのコネクティビティ規格です。Thread Wi-Fi® の各ネットワーク・レイヤで動作し、Bluetooth® Low Energy を使用してコミッショニングを行います。この記事では、Matter に関する 2 つの主要な設計トレンドを活用し、ホーム・オートメーション市場でコネクティビティを変革する方法を説明します。1 つは相互運用性を通じて消費者の操作環境を効率化すること、もう 1 つはコネクテッド (ネットワーク接続型) アプリケーションの開発を簡素化することです。

Matter 対応の SimpleLink® ワイヤレス・マイコンの動作を紹介
 TI は、2022 11 15 日~ 18 日にドイツのミュンヘンで開催される electronica Hall C4booth 157 に出展し、家庭での EV 充電管理をさらにスマート化する Matter プロトコルの能力をデモで展示します。詳細については、ti.com/electronicaをご覧ください。 

デバイスの相互運用性に注目

Matter により、消費者は統合プロトコルの利点を活用できます。たとえば、スマート照明とスマート・ロックを互いにシームレスに連携させることができ、しかもこれらの製品のブランドが違っていてもかまいません。また、さらに別のブランドのスマート・ハブと組み合わせることもできます。この業界団体 CSA は相互運用性の重要さを認識しているので、この規格の最初のリリースMatter specification 1.0 (英語) で、ThreadWi-Fi、イーサネットという 3 つの技術を単一の共通アプリケーション層に統合しました。これら 3 つの技術のいずれかを土台としているデバイスは、互いにシームレスに通信し合うことができます。しかも、これらの技術の間、または個別のアプリケーション層の間で橋渡しをするために、各デバイスのメーカーがゲートウェイ上で独自ソフトウェアを開発する必要もありません。加えて、Matter specification 1.0 (英語) はブリッジ機能も定義しています。それにより、他のコネクティビティ技術を使用している各アプリケーション (デバイス) から Matter 対応エコシステム内にあるコネクテッド・アプリケーションへの橋渡しが可能になります。

AppleGoogleAmazonSamsung などの主要なエコシステムは、Matter をサポートする方針をすでに表明しました。その結果、スマート・デバイスに従来課されていたエコシステム固有の要件を軽減または排除しやすくなります。将来、消費者は Matter ロゴの付いた製品を見つけるだけで、その製品がどのエコシステムに属しているのか気にすることなく、(Matter 認証要件に合格した後に) 購入した Matter 対応の新しいデバイスが、自宅のスマート・ホーム・エコシステムで正常に動作することを確信できるようになるでしょう。

市場への早期導入

メーカーの観点からは、自社が実装するスタックの耐用期間と信頼性を確保するうえで、Matter が役に立ちます。スマート・ホーム・デバイスのメーカーは、この機能を通信に活用することで、開発を迅速化できます。その結果、消費者の操作環境を向上させる自社固有のアプリケーションの開発に、より多くの時間を費やせるようになります。Matter は、開発の迅速化だけでなく、低消費電力の維持やセキュリティ向上にも貢献します。

この業界団体には、TI を含め 500 社以上のメンバーが参加しているので、Matter は多様なスマート・ホーム・エコシステムを統合するうえで強力な裏付けを確保できています。開発者は単一かつ共通のオープン・ソース・プロトコルを活用することで、最終製品を迅速に開発しながら、多数のメーカー間での相互運用性に信頼を置くことができるようになります。

Matter は、単に新たなホーム・オートメーション・プロトコルというだけではありません。これは、すでに確立済みの複数の規格が互いにシームレスに連携できるようにし、ホーム・オートメーション分野で大幅な変革を遂げるだけの潜在能力を持つ規格です。それにより、エコシステム間の障壁を排除し、ホーム・オートメーションの将来的な標準化のための土台を提供できます。

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※上記の記事はこちらの技術記事(2022年10月27日)より翻訳転載されました。
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