日常的に携帯する多様な電子機器向けに、ポータブルかつ高速で効率的なチャージャが消費者に求められています。エレクトロニクス製品の多くがUSB Type-C® チャージャへの移行を進めている中、あらゆるデバイスの充電に使用できるコンパクトな電源アダプタの需要が急速に高まっています。
最新のコンシューマ向け USB Type-C モバイル アダプタや、PC 用、テレビ用などの電源を設計する際の課題は、ソリューション サイズを小型化しながら、電力レベルを維持または増加させることです。TI の低消費電力 窒化ガリウム (GaN) デバイスは、ごく一般的なトポロジでこの課題に対処するほか、放熱、サイズ、統合に関する利点を実現します。最近数十年にわたる、GaN のようなワイド バンドギャップ技術の開発に加え、効率と機能を向上させるために、AC/DC の各種トポロジでも新しい改良が進められてきました。この記事では、これらのアプリケーションに適した一般的なトポロジにおいて、これらのデバイスの利点と互換性について詳細に説明するほか、いくつかの魅力的な新しいトポロジも紹介します。
アクティブ クランプ フライバック (ACF) と 非対称ハーフブリッジ (AHB) の各トポロジによる効率と電力密度を最大化
新規開発されたいくつかのハーフブリッジ トポロジは、効率を最適化すると同時に、出力電圧の可変能力を実現するのに役立ちます。図 1 に示すACFとAHB の各トポロジは、DC/DC 段での効率と電力密度の最大化に役立ちます。疑似共振 (QR) フライバックやゼロ電圧スイッチング (ZVS) フライバックで損失の多いスナバ クランプを使用するのとは異なり、ACF と AHB の各トポロジでは出力側へ向かうリーケージ エネルギーをリサイクル (再利用) し、効率をさらに改善することができます。また、これら 2 つのトポロジは、低電圧側の電界効果トランジスタ(FET)で電圧スパイクを完全に排除することができます。その結果、2 次側で、より電圧の低い同期整流 FET を使用することができます。加えて、AHB トポロジは第 2 の出力フィルタを必要としないため、全体的に、より低コストで、より小型のソリューションを製作するのに役立ちます。
統合型の GaN FET である LMG3624 は、「ロスレス」 (損失のない) 電流センシング機能を内蔵しており、図 2 に示すような損失の低減を通じて、効率をさらに改善するのに役立ちます。たとえば、65W ACF の場合、内蔵型の電流センシング回路の損失寄与分は 10mW 未満であるのに対し、従来型の電流センシング方式では約 170mW です。ACF や AHB のような電流モード制御を必要とする各種トポロジでは、この大幅な損失低減から大きなメリットが得られ、ソリューション全体の効率をさらに向上させることができます。
図 1:ACF と AHB の各トポロジ
図 2:内蔵型電流センシングと従来型の電流センシングとの電力損失の対比
より電力の大きい設計に適したトーテムポール PFC トポロジ
世界各地で、電力レベルが 70W を上回る場合の力率補正 (PFC) 段に関する要件があります。この力率補正段で GaN の能力を最大限活用することを求める場合、図 3 に示すトーテムポール PFC トポロジを考慮する可能性が高くなります。このトポロジでは、ブリッジ整流器の排除によって GaN FET の価値を高めることができます。GaN FET には、逆回復損失がゼロという特長があるからです。
金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET) にはボディ ダイオードが内在し、その逆回復電荷が大きいことが原因で、このトポロジで MOSFET は事実上使用できません。シリコン カーバイド (SiC) では、逆回復電荷に関してわずかな向上しか得られません。一方、LMG3624 には調整可能なスルーレートという特長があり、システムで電磁干渉(EMI) と効率との間に適切なバランスを見つけやすくなります。
図3:トーテムポール PFC トポロジ
QR、ZVS、LLC、昇圧 PFC の各トポロジに対する低消費電力 GaN
新しい各トポロジが増加している一方で、従来型の各種トポロジで統合型 GaN を採用する方針にも引き続き明確な利点があります。QR フライバック、ZVS フライバック、従来型の昇圧 PFC に GaN を導入することが一般的になってきました。1 個のスイッチング FET を GaN FET に置き換えるだけで、効率とスイッチング周波数能力を向上できるからです (GaN の入力容量が小さく、ターンオフ損失が減少することが主な要因です)。加えて、GaN FET である LMG3624 には低静止電流という特長もあり、スタンバイ モードで消費電力をさらに低減できます。QR、ZVS、昇圧 PFC の各トポロジでは、LMG3624 に内蔵されるロスレス電流センシング回路も利点となります。
LLC 共振コンバータ トポロジは数十年にわたって存在しており、ノート PC アダプタやテレビ用電源などのUSB Type-C 出力電圧が優勢となっていない固定出力電圧アプリケーションでは、LLC が一般的です。また、この LLC トポロジは、大半のハーフブリッジ DC/DC トポロジに比べると、最高クラスのトランス効率を達成します。
まとめ
より小型でより効率的な AC/DC ソリューションに対する需要が継続的に高まっており、消費者は持ち運びやすいより小型のアダプタを求めています。産業用には、GPU (グラフィックス処理ユニット) がより多くの電力を要求するため、PC 向けに高効率電源 (PSU) が必要になりつつあります。また、ハイエンドの薄型テレビ向けに、より薄型の PSU も求められています。LMG3624 は、この記事で紹介したどのトポロジにも統合できる機能と利点を実現しており、これらのアプリケーションの要件を満たすのに役立ちます。
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