DC/DCコンバータの電流制限仕様は、この種のレギュレータに慣れていない設計者にとって混乱の原因となることがあります。この2部構成のシリーズでは、このような混乱の一部を解消するために役立つ情報を紹介します。

まず、DC/DCコンバータのデータシートに記載されている電流制限仕様は、低ドロップアウト・レギュレータ(LDO)の電流制限仕様と意味が異なります。LDOの場合、電流制限値とは、レギュレータが過負荷状態または短絡状態のときにデバイスから出力に供給する電流の最大値です。降圧コンバータの場合、データシートにはインダクタ電流のピークまたはバレーに対する制限が指定されます。しかし、降圧コンバータの出力電流を表すのは平均インダクタ電流です。次の式1と式2では、インダクタ電流制限を最大出力電流に変換しています。

例として、24V入力を5V出力に変換するLMR 16030の場合を考えてみましょう。図1に示すように、データシートに記載されている最小ピーク電流制限は3.8Aです。

図1: LMR 16030の電流制限仕様

式1と、データシートの例で選択されているインダクタを使用すると、次のような式が得られます。

これは“3A”レギュレータですが、このような条件では3Aを少し上回る負荷電流が得られます。

別の例として、LM 43601の場合を考えてみましょう。図2に示すように、データシートには標準ピーク電流制限の2.45Aと、標準バレー電流制限の1.1Aが記載されています。

図2: LM 43601の電流制限仕様

式1と式2から、次のような式が得られます。

このような条件での、このデバイスの最大出力電流としては、低い方の値である1.58Aを使用します。

1つ前の計算式は、コンバータが過負荷となり、出力がレギュレーション範囲外まで低下する前の最大出力電流を表しています。より厳しい条件である出力の短絡状態では、ほとんどのレギュレータで最大出力電流がさらに低くなります。この“フォールドバック”モードでは、コンバータの過熱状態やパワーステージ部品の損傷を防ぐことができます。

第2部では、昇圧コンバータについて検討します。また、TIのDC/DCコンバータを今後の設計向けにご検討ください。

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2016/08/29/dc-dc-converter-datasheets-current-limit-part-one


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