第1部 の最後では、無負荷時の入力消費電流についての説明を始めたところでした。しかし、先に進む前に説明しておくべき“静止”電流がもう1つあります。

多くのDC/DCコンバータには、コンバータの内部回路に電力を供給する低ドロップアウト・レギュレータ(LDO)が内蔵されています。最新のレギュレータでは、LDOの入力をコンバータの外部ピンとして利用できる場合が多くなっています。通常、このピンは“バイアス”と呼ばれますが、実際の名称はデータシートで確認してください。この入力をレギュレータの出力に接続することで、バイアス電流はコンバータの出力に追加された負荷として機能します。この負荷は、他の負荷と同じように入力電圧と出力電圧の比率でダウンコンバートされます。結果として、入力時の電流が減少し、効率が上がることから、これは推奨される接続方法と言えます。

では、無負荷時の入力電流に話を戻しましょう。この入力電流は、場合によってはデータシートに記載されていなかったり、確認したい条件とは異なる条件で指定されていたりします。そのような場合は、式1を使うと、降圧レギュレータの無負荷時の入力電流を見積もることができます。

コンバータでの損失を考慮していないため、この式で得られるのは最適条件での見積もりです。IQで示されている最初の項は、前回説明した非スイッチング時静止電流です。次の項、IENは、レギュレータのイネーブル入力に流れ込む電流です。多くのコンバータでは、イネーブル入力に有限量のバイアス電流を流す必要があります。レギュレータをオンにするために入力電源にイネーブル・ピンが接続されている場合は、その電流も考慮する必要があります。接続されていない場合はゼロになります。IDIVの項は、帰還分圧回路の電流であり、式2を使って簡単に計算できます。

IBの項は、前述したバイアス入力に流れる電流を表しています。例として、SIMPLE SWITCHER® LM 43603 3.5V~36V、3A同期降圧型電圧コンバータを使用しましょう。データシートには、以下のような標準値が記載されています(表1)。

表1:LM 43603のデータシート

12V入力を3.3V出力に変換する場合、帰還分圧抵抗の合計を1MΩとして、式1と式2により、無負荷時の入力電流として次の値が得られます。

表1に示すように、LM 43603のデータシートには、1つの標準条件での無負荷時の入力電流が記載されています

計算結果の30µAという値はデータシートと少し異なりますが、大まかな見積もりとしては十分に近い値です。

ここで紹介している式は、無負荷時の入力電流が入力電圧、出力電圧、および他の“静止”電流によってどのように変化するかを説明するためのものです。これらの式から、出力電圧が高く、入力電圧が低いと、入力電流は増加することがわかります。そのため、式を使って無負荷時の入力電流の見積もりを計算したうえで、実際のアプリケーション条件で実際の値を測定する方法が最適です。

効率グラフを使ってDC/DCコンバータの入力電流を計算することもできますが、無負荷時の値は計算できません。定義上、無負荷時の効率はゼロなので、この記事で概説した方法に従って無負荷時の消費電流を見積もる必要があります。他の任意の負荷では、データシートの効率グラフと式3を使用できます。

ここで、ηは目的の条件での効率です。

SIMPLE SWITCHER LM 22670 3A降圧型電圧レギュレータのデータシートを例に取ると、入力電圧5.5V、出力電圧3.3V、負荷1.5Aに対して効率は約91%です。これによって得られる入力電流は次のようになります。

データシートに記載されている入力電流を使用して見積もりを計算する場合は、それが目的のアプリケーション条件に適用できる値であることさえ確認すれば、他に難しい部分はありません。

その他のリソース

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2016/04/11/dc-dc-converter-datasheets-no-load-operating-current-demystified

*ご質問は E2E 日本語コミュニティにお願い致します。