Other Parts Discussed in Post: LMQ61460-Q1, LMQ66430-Q1

高効率でコンパクトな設計を具体化すると同時に、CISPR (国際無線障害特別委員会) のような機関が課している EMI (電磁干渉) の厳格な要件に付き従うのは困難な課題です。そのため、設計プロセスの一部として、部品を選定することは重要な意味を持ちます。設計に関する他のほとんどの意思決定と同様、多様な部品から選定を行う際には、設計上最も重要な目標に基づいてトレードオフを評価するのが一般的です。降圧レギュレータは高効率と良好な放熱特性で知られていますが、一般に低 EMI のオプションとは見なされていません。幸い、この種のレギュレータが生成する EMI を低減するために、いくつかの方法を利用できます。以降の説明が容易になるように、簡素化した降圧レギュレータの回路図を図 1 に示します。

 図 1:簡素化した降圧レギュレータの回路図

基板レイアウトの検討事項

設計が正しく機能するように適切な値の受動部品を選定することに加えて、設計の EMI を制限以内に収めることが必須の場合、最初に検討すべき事項は基板レイアウトです。降圧レギュレータを使用するさまざまな基板レイアウトで、EMI の発生を最小化するのに役立つ、次のような 2 つの一般的なルールがあります。

  • 大きい過渡電流 (di/dt) が流れるループの面積を最小化するために、入力コンデンサとブート・コンデンサを IC の VIN ピンと GND ピンのできるだけ近くに配置
  • 大きい過渡電圧 (dv/dt) が発生するノードの表面積を最小化するために、スイッチ・ノードの面積を最小化

基板レイアウトの最適化が不可能な場合、他のいくつかのオプションもあります。それらの詳細については、技術記事「デバイス・レベルの機能とパッケージ・オプションで車載設計のEMIを削減する方法」 をご覧ください。

入力コンデンサの内蔵

すでに説明したように、スイッチング・レギュレータを採用する設計で EMI を制限以下にとどめるには、di/dt の大きい電流が流れるループを縮小することが非常に重要です。降圧レギュレータでは、入力電圧からグランドまでのループを EMI の観点から検討することが大切です。降圧レギュレータは電源との接続をオンまたはオフに切り替える (スイッチング) ことで、高い DC 電圧を低い電圧に降圧します。その結果、ハイサイド MOSFET (金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ) (Q1) に、図 2 に示す電流が流れます。

 図 2:降圧レギュレータに流れる入力電流の波形

MOSFET はオンとオフの切り替え (スイッチング) を高速に実行するので、入力コンデンサからは、非常に急峻で、ほぼ不連続な電流が供給されます。TI の 3A 対応 『LMQ66430-Q1』 や 6A 対応 『LMQ61460-Q1』 のような 36V 降圧レギュレータは、パッケージ内に複数の高周波入力コンデンサを内蔵しているので、入力電流ループの面積をできる限り最小化できます。この入力電流ループの面積を縮小すると、入力側の寄生インダクタンスが小さくなり、その結果、発生する電磁エネルギーの量が減ります。

ブート・コンデンサの内蔵

di/dt の大きい電流ループとしてもう 1 つ考慮する必要があるのが、ブート・コンデンサのループです。ブート・コンデンサは、オン時間中にハイサイド MOSFET のゲート・ドライバに電荷を供給します。オフ時間中に、このコンデンサは内部回路によってリフレッシュ (再充電) されます。このハイサイド MOSFET のソース端子は、GND ではなくスイッチ・ノードに接続されています。ブート・コンデンサが MOSFET のソース・ピンを基準にしていることで、ゲート - ソース間電圧 (VGS) はこの MOSFET をオンにするのに十分な高い値になります。大半の降圧レギュレータの場合、ブートストラップ・コンデンサを接続するために、ある程度のスイッチ・ノード面積を確保する必要がありますが、これは EMI の観点でスイッチ・ノードの面積を最小化する際には妨げになります。一方、『LMQ66430-Q1』 はパッケージ内にブート・コンデンサを内蔵しているので、面積確保の必要がありません。したがって、すでに説明した 2 つのルールに従うと同時に、必要な外部部品を減らすことができます。

まとめ

EMI に関する厳格な制限を維持できるコンパクトな電源を設計するのは、難易度が高い場合があります。コンデンサを内蔵した降圧レギュレータを採用すると、EMI 準拠の設計プロセスの難易度を低くすると同時に、全体の外部部品点数も減らすことができます。

参考情報(英語):
+技術記事:
How a DC/DC converter package and pinout design can enhance automotive EMI performance
Lowering audible noise in automotive applications with TI's DRSS technology
+e-book:
An Engineer's Guide to Low EMI in DC/DC Regulators

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※上記の記事はこちらの技術記事(2022年3月16日)より翻訳転載されました。
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