スイッチング電源でのリンギングは、放射ノイズや伝導ノイズを発生させて回路ジッタや過度の電力消費を引き起こす場合があり、部品へのオーバーストレスの原因になることもよくあります。オーディオ、プロセッサ電源などのアプリケーションや、電磁干渉(EMI)認定を必要とする設計において、リンギングは主な懸案事項となっています。

たいていの場合は、単純な抵抗-コンデンサ(R-C)スナバを追加して“リンギングを抑制”することで、回路の状態を改善することができます。この記事では、選択すべきスナバ値を正確に導き出すための7つのステップについて簡単に説明します。

インダクタンスと容量によってインダクタ-コンデンサ(L-C)タンクが形成されているスイッチング・コンバータでは、リンギングが発生することがあります。インダクタンスは部品のリード、プリント基板のパターン、トランスのリークに由来する場合があり、一方で容量は整流器などの非線形部品やトランスの巻線間容量に起因する場合があります。大部分の回路の寄生成分は不明であることが多いため、通常はリンギングの周波数と振幅も不明です。過度のリンギングが発生する場所として一般的なのは(少なくともフライバックなどのコンバータ内では)、整流ダイオードとスイッチングFETの2箇所です。このようなリンギングを低減できる簡単な解決法の1つが、直列R-C回路を使用し、通常は整流器またはFETの隣に直接配置して、リンギングを抑制または“吸収”する方法です。

表1に示した7つのステップでは、リンギングの共振周波数をシフトさせる一般的な方法を使用し、回路の寄生容量(Co)とインダクタンス(L)を計算します。これらの値がわかれば、スナバ・コンデンサ(Csnub)とスナバ抵抗(Rsnub)を計算できます。図1と図2に示す波形の例(9Vdc~57Vdc入力、56V/20W絶縁型フライバック・リファレンス・デザイン)では、R-Cスナバを整流器に対して並列に配置していますが、FETに使用する場合でも手順は同じです。 

図1: スナバを使用していない整流器のリンギング(上)と周波数をシフトさせたリンギング(下)

図2に、算出した値によるスパイクの低減と抑制効果を示します。リンギングの大きさは、Csnub値を変化させることで調整できます。Csnub値を大きくすると電圧スパイクの振幅は小さくなりますが、Rsnubでの電力損失が大きくなります。

また、Csnubを小さくすることで、Rsnubでの消費電力を低減できますが、リンギングは大きくなります。許容できる電圧リンギングの振幅とRsnubの電力損失の間で最適なトレードオフを見極める必要があります。

図2:スナバによるスパイクの低減

スイッチング・コンバータでのリンギングを抑制しないと、過度のEMIが発生して部品にオーバーストレスが加えられる可能性があります。このような問題は、適切な計算に基づくR-Cスナバを使用することで抑制できます。ここで紹介した7つのステップが、リンギングの抑制を実施するうえでの、わかりやすいスタート・ガイドとなれば幸いです。この記事で取り上げたトピックの詳細については、EETimes Power Tipsの投稿記事、『Calculating an R-C snubber』を参照してください。  

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2016/05/05/calculate-an-r-c-snubber-in-seven-steps

*ご質問は E2E 日本語コミュニティにお願い致します。

Anonymous