LDOの基本:ノイズ – 第1部

 LDOの基本に関する別のブログ記事では、低ドロップアウト・レギュレータ(LDO)を使用し、スイッチング電源から発生するリップル電圧をフィルタ処理する方法について説明しました。しかし、クリーンなDC電源を実現するための条件は、これだけではありません。LDOは電子機器なので、それ自体から一定量のノイズが発生します。システムの性能を犠牲にすることのないクリーンな電源レールを作り出すには、低ノイズのLDOを選択し、内部ノイズの低減措置を講じることが不可欠です。

ノイズの特定

理想的なLDOとは、AC成分を持たない電圧レールを生成するLDOです。しかし、残念ながらLDOからは、他の電子機器と同様に独自のノイズが発生します。図1は、このノイズがどのように時間ドメイン上に現れるかを示したものです。

図1:ノイズの多い電源のオシロスコープ画像

時間ドメインでの分析は困難です。そのため、ノイズの主な分析方法としては、周波数ごとに調べる方法と、積分値として調べる方法の2つが挙げられます。

スペクトル・アナライザを利用すれば、LDOの出力における各種AC成分を特定できます(アプリケーション・レポート『How to measure LDO noise』には、ノイズの測定方法が詳しく記載されています)。図2は、1Aの低ノイズLDO、TPS7A91の出力ノイズをプロットしたものです。

図2:TPS7A91のノイズ・スペクトル密度 対 周波数およびVOUT

各種曲線からわかるように、出力ノイズ(√Hzあたりのマイクロボルト[μV/√Hz]で表される)は周波数スペクトルの低周波数側の端に集中しています。このノイズは、大部分が内部基準電圧から発生したものですが、エラー・アンプ、FET、分圧回路から発生したノイズも含まれています。

周波数ごとの出力ノイズに目を向けると、関心のある周波数範囲のノイズ・プロファイルを特定しやすくなります。たとえば、オーディオ・アプリケーションの設計者なら、電源ノイズによって音質が低下する可能性のある可聴周波数(20Hz~20kHz)に着目します。

データ・シートには、一般に同一条件で比較するための、単一の積分ノイズ値が記載されています。出力ノイズは10Hz~100kHzで積分されることが多く、マイクロボルト二乗平均平方根(μVRMS)で表されます(各ベンダーでは、100Hz~100kHz、またはカスタムの周波数範囲での積分も行われます。選択した周波数範囲で積分を行うことにより、好ましくないノイズ特性がマスク処理されるので、積分値だけでなくノイズ曲線も調べることが重要です)。図2には、各種曲線に対応する積分ノイズ値が示されています。テキサス・インスツルメンツでは、測定される積分ノイズ値が3.8μVRMSと低いLDOのポートフォリオを用意しています。

ノイズの低減

ノイズ特性の低いLDOを選択することに加え、いくつかの手法を用いることで、そのLDOのノイズ特性を最低限に抑えることができます。そうした手法の1つが、ノイズ低減コンデンサやフィードフォワード・コンデンサを使用するというものです。フィードフォワード・コンデンサの使用方法については、次回のブログ記事で説明します。

ノイズ低減コンデンサ

TIのポートフォリオに含まれる多くの低ノイズLDOには、図3のように"NR/SS"として指定されている特別なピンがあります。

図3:NR/SSピンを備えたNMOS LDO

このピンの機能は2つあり、内部基準電圧から発生するノイズをフィルタ処理するためと、スタートアップ時またはLDOのイネーブル時のスルー・レートを遅くするために使用します。

このピンにコンデンサを追加(CNR/SS)することで内部抵抗とともにRCフィルタが形成され、基準電圧から発生する望ましくないノイズを小さくすることができます。基準電圧がノイズの主な要因であることから、容量を増やすことにより、ローパス・フィルタのカットオフ周波数を左側に移動させることができます。図4は、出力ノイズに対するこのコンデンサの効果を示しています。

図4:TPS7A91のノイズ・スペクトル密度 対 周波数およびCNR/SS

図4に示すように、CNR/SSの値が大きくなるにつれ、ノイズの数値が改善します。ただし、ある時点からは、容量が増えてもノイズが低減しなくなります。残りのノイズは、エラー・アンプやFETなどから発生したものです。

コンデンサの追加は、スタートアップ時のRC遅延にもつながり、出力電圧がより遅いレートで上昇することになります。これは、出力または負荷にバルク容量が存在し、突入電流を軽減する必要がある場合に好都合です。

突入電流は次の式1のように表されます。

                        (1)

突入電流を低減するためには、出力容量を小さくするか、スルー・レートを下げる必要があります。幸い、TPS7A85に関して図5に示すように、後者はCNR/SSを利用して実現できます。

図5:TPS7A85のスタートアップ 対 CNR/SS

ご覧のように、CNR/SSの値を大きくするとスタートアップ時間が長くなるため、突入電流のスパイクを防止し、電流制限動作を引き起こす可能性を排除することにつながります。

まとめ

低ノイズLDOは、クリーンなDC電源を実現するために欠かすことのできないデバイスです。低ノイズ特性を持つLDOを選択し、かつ出力をできる限りクリーンに保つ手法を実行することが重要となります。NR/SSコンデンサを使用する利点は2つあり、1つはスルー・レートを制御できること、もう1つは基準電圧のノイズをフィルタ処理できることです。LDOについて詳しくは、LDOの基本シリーズの他のブログ記事をご覧ください。

その他のリソース

  • こちらから、産業用、個人用電子機器、通信機器、車載用を含む各種アプリケーション向けの一般的なLDOおよびリニア電圧レギュレータのクイック・リファレンス・ガイドをダウンロードできます。

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2017/06/14/ldo-basics-noise-part-1

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