Other Parts Discussed in Post: DRV8243-Q1, DRV8245-Q1, DRV8244-Q1

ブラシ付き DC モーターには、シンプルな制御、低コスト、幅広い対応能力という特長があるので、ウィンドウの開閉、サンルーフの制御、ドアやトランクのロックとラッチ、エンジンのバルブなど、統合型、大出力、高信頼性のモーター・ドライブを必要とする車載負荷に適しています。

自動車システムを設計する場合、サイズの制約や故障状態への対処など、デバイス・レベルとシステム・レベル両方の課題に直面する可能性が高くなります。また、設計期間を短縮するために、既存の設計を再利用する必要も生じます。この記事では、それらの課題を個別に取り上げ、解決方法を紹介します。

フル統合型で電力密度の高いモーター・ドライバの採用によるシステム・サイズの小型化

コストを最適化した車載システムを設計する際には、システム・サイズの小型化やボード面積の節減が重要な考慮事項となります。パッケージ・サイズを小さくし、ブラシ付き DC ドライバに各種機能を内蔵することで、外部部品点数を減らし、ボード面積とコストを削減できます。

より小型のシステムを設計する際には、以下の改善について考慮してください。

  • 小型パッケージ・サイズ:電力密度の高いソリューションの場合、小型のパッケージを使用すると、同時に高い電流能力を実現することになります。『DRV8243-Q1』ファミリは、3mm x 4.5mm という小型サイズの車載 HotRodTm クワッド・フラット、リードなしパッケージを採用し、この分野では最小クラスの小型パッケージに封止したブラシ付き DC ドライバを実現しています。
  • 統合型電流センシング:内部の電流レギュレーション機能と、電流フィードバック・ピンを採用した結果、外部の電流センス抵抗が不要になり、ボード面積とコストを削減できます。
  • FET (電界効果トランジスタ) 内蔵ソリューション:『DRV8243-Q1』ファミリは、H ブリッジ向けに最大 32A のピーク電流、ハーフ・ブリッジ向けに最大 46A のピーク電流を供給できます。中電流から大電流の範囲をサポートする統合型ソリューションを採用すると、ゲート・ドライバや外部 FET を使用する必要がなくなるので、ボード面積とコストを削減できます。電流能力は、プリント基板の設計と周囲の放熱条件によっても異なるので、TI の Transient Thermal Calculator (過渡熱カリキュレータ) を使用し、システムでどれぐらいの電流を供給できるのか理解を深めてみてください。

図 1 に示す、より小型のパッケージを採用し、外部部品点数を最小限に抑えることで、ボード面積と部品表 (BOM) コストを削減できます。

 図 1:『DRV8245-Q1』デバイス・ファミリのサイズ比較

信頼性の高いソリューションの実現に貢献する保護機能と診断機能

パワー・リフト・ゲート (電動リア・ハッチ) からガソリン・エンジンのバルブまでの各種アプリケーションでモーター・ドライバは不可欠な役割を果たしているため、さまざまな故障条件の発生を検出して適切な保護を実現できる信頼性の高いソリューションを設計することが重要です。

『DRV8243-Q1』デバイス・ファミリは、モーター・ドライバがオン状態とオフ状態のどちらであっても開路の検出と短絡の保護を行える、この分野で最初の製品です。図 2 に、このデバイスのオフライン保護機能が、H ブリッジに接続された受動抵抗ネットワークをどのように使用して、FET をオンにする前にシステムの問題を検出できるかを示します。この機能は、H ブリッジがオフ状態であっても、モーター・ドライバが破損や予期しない動作を回避するのに役立ちます。

 図 2:『DRV8243-Q1』のオフ状態診断機能

オフライン診断機能は、全体の摩耗や破損が原因でシステム内のどこかに故障が発生した場合でも、モーター・ドライバを保護するのに役立ちます。TI の各種オフライン保護機能を活用して車載システムを保護する方法の詳細については、アプリケーション・ノート『Open Load Detection in Motor Drivers』 (英語) をご覧ください。

SPI (シリアル・ペリフェラル・インターフェイス) オプションによる詳細な診断機能で故障の種類と場所を識別できるため、設計者は問題の発生源を特定して、モーター・ドライバの故障を修正するための時間を短縮できます。

スケーラブルなドライバで設計期間を最適化

モーター・ドライバは、リレー、ソレノイド、モーターなど、自動車内のさまざまな負荷を駆動できます。ときには、これらすべての負荷が、ドア・モジュール車体制御モジュールのような同一のアプリケーション内に存在していることがあります。

『DRV8243-Q1』ファミリの H ブリッジ・ドライバとハーフ・ブリッジ・ドライバを採用すると、車載システム内の異なる負荷に合わせてスケールを変更しながら、既存の設計を再利用することができます。このデバイス・ファミリは、互いに類似したファームウェア、機能、パッケージのピン配置を採用しているので、さまざまな負荷や電流定格に対して設計を再利用することで設計期間を短縮できます。独立モードで使用する場合、H ブリッジ・ドライバは 2 個の単方向ブラシ付き DC モーター、ソレノイド、またはリレーを駆動できるため、2 個の個別のハーフ・ブリッジ・ドライバを使用する必要がなくなります。図 3 をご覧ください。

 図 3:『DRV8243-Q1』ファミリの複数製品を採用して各種負荷へのスケーラビリティを確保

『DRV8243-Q1』と 『DRV8244-Q1』は類似のファームウェアを採用していることに加え、互いにピン互換のリード端子付きパッケージを使用しているので、電力レベルに合わせてスケール・アップまたはダウンを行うときに、デバイスの直接の置き換えがいっそう容易になります。

ソリューション・サイズ、保護機能、設計の再利用のしやすさは、車載ソリューションを設計するときに考慮する必要のある重要な要因です。この記事で説明したトピックについてご不明な点がありましたら、TI E2E Motor Drivers forum (英語) でお気軽に質問を投稿してください。

参考情報(英語):
+技術記事:"Benefits of flip chip on leadframe packaging for motor-drive applications"
+アプリケーション・ブリーフ:”Advantages of Integrated Current Sensing
+アプリケーション・ノート:
 ”Open Load Detection in Motor Drivers
 ”Using Motor Drivers to Drive Solenoids

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※上記の記事はこちらの技術記事(2022年4月20日)より翻訳転載されました。
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